どなたかのTwitterから瀧本哲史さんの講義録がnoteで無料公開されていることを知り、さっそく読んでみました。得るところが多かったので備忘記録を残しておきます。
結論としては、中高年である自分の役割は、いかに優秀な若者をひっそりとサポートするかだな、という学びを得ました。
星海社新書『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』全文公開
私が見たとき、全文を読めたのは全六檄中の第三檄まで。続きが気になって、思わず、Amazonでkindle版を購入し、読みやすかったので一時間程度で読み終えました。
ちなみに章ではなく、檄と書いているのは、私の変換ミスではありません。
特に書籍内では説明されていなかったけど、たぶん「檄(げき)を飛(と)ばす」の意味から、意図して使用されているのでしょう。まさに、若者に変化への決意を促す内容ですから。
自分の主張や考えを広く人々に知らせ同意を求める。また、それによって人々に決起を促す。飛檄。[補説]誤用が定着して「がんばれと励ます」「激励する文書を送る」という意味でも用いられる。
“檄(げき)を飛(と)ば・す”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-07-24)
これは2012年6月30日に29歳以下限定で全国から募集した受講者約300名に対して行われた瀧本さんの講義録の全文で、質疑応答も含まれています。
講義部分も面白いのですが、質疑応答の開始部分で、どんな質問でも自分は素晴らしい回答をするから、質問するリスクはゼロだ、と語って、笑いを取りつつ、参加者の心理的なプレッシャーを取り除き、積極的な質問を促す技術が素晴らしかったです。見習いたいですね。
個人的に心に残ったのは、この7点。
- 「本を読んで終わり、じゃなくて、行動」
- 「自ら明かりを燈せ(自燈明(じとうみょう))」
- 「分かりやすい答えを示す人を疑え」
- 「バイブルとカリスマの否定」
- 「自分で考えるための武器はリベラルアーツ」
- 「交渉とは、相手のニーズを探ることから」
- 「自分と違う属性の仲間を集める」
禅語の「自燈明」(自灯明)の由来については、曹洞宗のお坊さんが書かれた、こちらのブログが分かりやすく理解が進みました。
第4檄で行われていた2組になって行うワークショップも面白そうでした。
あと、最後の質疑応答で出た、起業に関する質問の回答も良かったです。読みながら、これは、Mother Houseの山口絵理子さんも参考事例になりそう、と思っていました。
2019年にネゴシエーションの基本講座をCouseraで受講してみたのですが、あれよりも、瀧本さんの語る交渉法は、より実践的な感じです。というのも、交渉する相手は、常に合理的であるとは限らない、という、現実社会では当たり前のことが書かれていたから。
非合理的な人との交渉については、切実に学びたいので、「武器としての交渉思考」を読書リストに加えました。
最初から最後まで、バイブルのような本やカリスマ人に頼ろうとせず、まず自分の頭でしっかり考えよう、そこから逃げるな、という強力なメッセージが込められた本で、読みながら、「うんうん、そうだよね」と頷きっぱなし。
常にそれを意識して生きているつもりの自分は、引き続き、この方向で頑張ろう、と少し自己肯定感が上がりました。
最後に瀧本さんは、フランス語のbon voyage(よき航海をゆけ)を引用して、自らリスクを取って意思決定をする船長がするから、この挨拶が好きだと語って締めくくっています。
私の場合はフランス語よりもポルトガル語の方がしっくりくるため、読み終えたあとに、頭の中で、ボア・ビアージェンの歌が響いておりました。
自らリスクを取れず、意思決定もできない人生を考えただけで、私には辛すぎるのですが、全ての人が船長になりたいと思うわけでもなく、また船長になりたいと思っていても、なれない境遇の人がいることも分かります。
でも、みんなが自分は、自分の人生の船長だ、と考えて生きることは、まさに、仏陀が死ぬ前に弟子に残した言葉(自灯明 法灯明)と同じかな、と思いました。
Boa Viagem! (ボア・ビアージェン)
この本で引用・言及されている書籍・映画
武器としての交渉思考 (星海社 e-SHINSHO) 瀧本哲史 (著)
「科学革命の構造」トーマス・クーン (著), 中山 茂 (翻訳)
アメリカン・マインドの終焉――文化と教育の危機
アラン・ブルーム (著), 菅野 盾樹 (翻訳)
「社会と経済:枠組みと原則」マーク・グラノヴェター (著), 渡辺 深 (翻訳)
「ヒトデはクモよりなぜ強い」オリ・ブラフマン/ロッド・A・ベックストローム (著), 糸井 恵 (翻訳)
映画「ファイト・クラブ」ブラッド・ピット主演 ディビッド・フィンチャー監督