ゲーテの「ファウスト」を読みたくなりました。でも、いざ読もうとしたら、翻訳版が複数あります。どれが良いの?そんなわけで、ウェブサイトで読める青空文庫と5種類のkindle本サンプルをダウンロードして比較してみました。
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 ファウスト FAUST. EINE TRAGODIE ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ (青空文庫)
ファウスト 1 (岩波文庫) Kindle版 ゲーテ (著), 相良 守峯 (著)
ファウスト(一)(新潮文庫) ゲーテ (著), 高橋 義孝 (翻訳)
ファウスト 悲劇第一部 (中公文庫) Kindle版 ゲーテ (著), 手塚富雄 (翻訳)
ゲーテファウスト現代語翻訳版: 合冊版 (現代語訳文庫) Kindle版 水上基地 (著), ゲーテ (著)
ファウスト(上) (講談社文芸文庫) Kindle版 ゲーテ (著), 柴田翔 (翻訳)
ちなみに、もし原書(ドイツ語)で読みたいならば、こちらのサイトで全文無料公開されています。
Faust: Der Tragödie erster Teil by Johann Wolfgang von Goethe | Project Gutenberg
英語の翻訳版もこちらのサイトで全文無料公開されています。(英訳者はエジンバラ大学のJOHN STUART BLACKIE先生です)
FAUST: A TRAGEDY
Faust: A Tragedy by Johann Wolfgang von Goethe | Project Gutenberg

比較のポイント4つ
以下の4つのポイントで比較してみました。
1.金額
2.出版年(読みやすさ)
3.解説の充実度(図版など)
4.kindleサンプルで読める部分
金額 | 出版年 | 翻訳者 | 解説 | kindleサンプルで読める部分 | |
青空文庫 | 無料 | 1913年 | 森鷗外 | 解説・注釈なし。節番号あり | ウェブサイトで全文が無料で公開されています。(12210/12210) |
岩波 | 1067円(1巻) | 1968年 | 相良守峯 | 本文中の解説や注釈はなし。節番号あり。目次によると2巻の巻末に解説。(1.ファウストの伝説と文学、2.ゲーテのファウストの成立、3.ファウスト第一部の構想、4.ファウスト第二部の構想) | 舞台の前曲の最後まで「造化の全領域を股にかけ、適度に測った速さでもって、天国からこの世を通り、地獄へまでもぶらついてください」(240/12210) |
新潮 | 624円(1巻) | 2016年 | 高橋義孝 | 本文中の解説や注釈はなし。節番号なし。目次によると2巻の巻末に注と解説。 | 前狂言の最後まで「緩急よろしく、天国から、この世を通って地獄へまでも歴回(へめぐ)ってもらいましょうか」(240/12210) |
中公 | 1500円(1巻) | 2019年 | 手塚富雄 | 本文中の解説や注釈はなし。章末毎に解説あり。節番号あり。1巻の最初に訳者のことば(1974年9月記)がある。目次によると1巻の巻末に解説とエッセイ2本(川盛好蔵、福田宏年)と2巻の巻末にエッセイ1本。(中村光夫) | 前狂言の途中まで「そういうご老体だからといって、あなた方へのわれわれの尊敬は少しも変わりありません。老いてはがんぜない子供に返ると人は言うが、そうじゃなくて、」(211/12210) |
個人? | 800円(Kindle unlimited対象) | 2017年 | 水上基地 | 解説・注釈なし。節番号なし | 私はkindle unlimitedに契約しているため全591頁読めてしまいます。サンプルでどこまで読めるかは不明です(12210/12210) |
講談社 | 1463円(1巻) | 2003年 | 柴田翔 | 目次によると、1巻の巻末に解説、2巻の巻末に注釈。どちらも訳者(柴田翔)によるもの | 目次のみ(0/12210) |
訳文の比較
具体的に、どのくらい翻訳が違うのか、比較してみました。原文(ドイツ語)はこちら。
Was ich besitze, seh ich wie im Weiten,
Und was verschwand, wird mir zu Wirklichkeiten.私が所有するものは、遠くにあるかのように見える。
そして、消えたものが私にとって現実となるのです。(Google翻訳で日本語に翻訳しました)
Faust: Der Tragödie erster Teil by Johann Wolfgang von Goethe | Project Gutenberg
ちなみに英訳版は、こんな感じ。ドイツ語から直訳せず、gray, todayと韻を踏んでリズムを作っているようですね。
The thing I am fades into distance grey;
And the pale Past stands out a clear to-day.
私の姿は遠くの灰色に消えていく。
そして薄暗い過去が今日はっきりと浮かび上がる。
(Google翻訳で日本語に翻訳しました)
森鴎外と相良守峯の訳は文語調で、音読すると響きが美しい。オリジナルが詩であることを考慮して翻訳されているんでしょうね。でも、2025年を生きる現代人が、一読しただけで意味を理解するには、ちょっとハードルが高いかも。比較すると、高橋、手塚、水上訳は口語訳になっており、読みやすいです。あなたはどれがしっくりくるでしょうか?
出版年 | 翻訳者 | Volume | ||
青空文庫 | 1913年 | 森鷗外 | 1巻のみ | |
岩波 | 1968年 | 相良守峯 | 1-2巻(2冊) | |
新潮 | 2016年 | 高橋義孝 | 1-2巻(2冊) | |
中公 | 2019年 | 手塚富雄 | 1-2巻(2冊) | |
個人? | 2017年 | 水上基地 | 1巻のみ | |
講談 | 2004年 | 柴田翔 | 1-2巻(2冊) |
主観的な選び方
講談社は目次しか読めないので、まず候補から外しました。5種類のkindle本を比較すると、中公文庫が最も解説が充実していそうです。青空文庫は無料だけど、この文体で全部読める気がしない。岩波も同じく、ちょっと難しい。
水上訳はkindleアンリミテッド対象なので、アンリミテッドに加入している人は、とりあえずダウンロードしても良いかも。残るは、新潮か、中公のどちらかになるわけですが、充実した解説と付録のエッセイ3本が読みたければ、中公を選択することになります。(新潮のだいたい倍のお値段がしますが)
結論
最終的に、私はkindleアンリミテッド対象の水上訳を読みつつ、新潮のkindle版も購入しました。
古典の良いところは、すでに色々な作品分析があり、おおむね評価も定まっていて、さまざまな解説や執筆当時の作者の置かれた状況や歴史的な背景なども学べることですね。
みなさまも、心躍るステキな書籍との出会いがありますように!
参考
『ファウスト』(独: Faust)は、ドイツの文人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作とされる長編の戯曲。悲劇。全編を通して韻文で書かれている。『ファウスト』は2部構成で、第一部は1808年、第二部はゲーテの死の翌年1833年に発表された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
kindle版のどれを読む?シリーズ
よろしければ、ほかの「どれを読む」シリーズもお楽しみください。
森の生活ウォールデン、岩波、小学館、講談社、どれを読む?(kindle比較)
ゲーテのファウスト、岩波、新潮、中公、講談どれを読む?(kindle比較)
コメント