10~20代の頃を思い出すと恥ずかしくて穴があったら入りたい気持ちになることがあります。周りの人のアドバイスを聴く耳を持たず、まったく根拠のない自信を持っており、非常に傲慢不遜な態度の若者だったと思います。素晴らしい才能を持った優秀な人たちが身近にいたのに、謙虚に彼らから学ぶ努力を怠っていました。
大衆とはほかでもなく、自分よりすぐれた審判をいっさい認めない閉鎖的な人間だからである。
「大衆の反逆」オルテガ著 フランス人のための序文(オランダ、1937年5月)
いま、オルテガの「大衆の反逆」を読んでいるのですが、この引用した部分も含めて、まるで自分のダメな点を指摘されているようで、読みながら息が止まる瞬間があります。でも、それが面白くもあるんですけどね。
1929年にマドリードの新聞に連載されたオルテガの論説は、1930年に単行本「大衆の反逆」としてスペインで出版され、その後、フランス語などにも翻訳されるのですが、ここに引用したものは、フランス語版のための序文です。
読みながら、まさにダニング・クルーガー効果、認知の歪みだよなぁ、と悲しくなりました。能力が低い人ほど、自信過剰になる、そして能力が低いからこそ、その認知の歪みを自ら修正することが難しいのだ、と。
Why we all fall foul of the Dunning-Kruger effect
オルテガは、スペイン内戦のため、亡命し世界各国を渡り歩きつつ、スペイン国民の知的レベル向上を目的とした啓蒙活動として執筆しています。
「大衆の反逆」のなかでも、いかにして「大衆」に認知の歪みを自覚させるか、実際にそれは可能なのか、という問いかけがあります。
時間はかかっても、可能だと思いたいです。私自身は、昔も現在も、大衆のひとりだから。いつかどこかの未来で、認知の歪みから、少しでも抜け出せたら、いいなぁと思いつつ、この本を読んでいます。