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Min Jin Lee ”Pachinko”/C読書会用の質問⑧~⑫(生、血縁、女、美、伝統)

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ふりかえり
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ミン・ジン・リー「パチンコ」を読みました。巻末についていた読書グループガイドの質問リストを基に、自分の考えを記述します(備忘記録と思考整理のため)。質問は全部で19個。今回は質問⑧~⑫(生、血縁、女、美、伝統)までを取り上げます(ネタバレもありますので、ご了承ください)。

読書ガイドのもくじ

A質問①~②(歴史、愛)
B質問③~⑦(勇気、父、家、結婚、性)
C質問⑧~⑫(生、血縁、女、美、伝統) ←いまここ
D質問⑬~⑯(恥、民族、繁栄、環境)
E質問⑰~⑲(親子、死、題名)

読書ガイド 質問⑧~⑫

⑧【生】How much agency and power do you think Sunjya really has over her life?
サンジャは自身の人生にどれだけの作用と力を持っていると思うか?

この作品で作者はサンジャに強靭な精神力を与えている。親を敬い、高い倫理観を持ち、夫と子どもに尽くし、奢侈は好まず、労働によって自活を求める。読み書きができる教養がなくても、その資質によって彼女の運命が切り開かれるように、物語は組み立てられている。それはキリスト教的な信念として明確には描かれてはいない。サンジャの強さは、古き良き時代に母たちが期待されていた役割であり、彼女はそれを代表する。

⑨【血縁】Sunjya tells Noa that “Blood doesn’t matter.” Do you agree? What parts of the novel support or weaken Sunja’s claim?
サンジャは長男ノアに「血は関係ない」と言ったが、同意するか?この小説のどの部分がサンジャの主張を裏付けているだろうか?あるいは弱めているか?

血縁が関係ないかどうかを判断するのは、個人の思想による。サンジャは母として、自らの倫理観に基づいて、愛してはいても、既婚者ハンスとの愛人関係を継続できないと判断した。その結果として、イサクの理解のもとに結婚して二人でノアを生み育てた。だから、サンジャにとっては労苦を共にしたイサクこそ、夫であり、長男ノアの父なのである。

しかしノアには、それが理解できない。なぜか。彼は、韓国人の血に恥じることがないようにという教育を受け、必死にそれを守ってきたのだ。身だしなみに気を配り、差別にも負けず日本語を学び、母にも負担をかけないように努力を積み重ねた。「ひとりの韓国人の不始末が、韓国人全員の評価につながる」と養父イサクに言い聞かせられていたからだ。

ところが、自分の本当の父親がイサクではなく、ハンスだと分かったとたんに、彼は自分が信じていたものが、足元から崩れ去ったように感じて、怒りに任せて全てを捨てる決断をする。最後通告のように、ノアが自らの血筋に激しく執着して嫌悪を示したとき、サンジャは圧倒的に無力だった。彼女には自分の思想を他人に言語で伝えられる技量はない。

この物語からサンジャへの批難を見つけることは困難だ。ただ、ひとつあげるとすれば、彼女自身がハンスを許さず、ノアに本当のことを語らなかった点において、ノアの完璧主義で自分の理想に執着する傾向を見過ごすことにつながった可能性はあり、それが彼女の言葉の根拠を弱めているかもしれない。

⑩【女】Yangjin and Kyunghee agree that “A woman’s lot is to suffer.” Do you think the women suffer more than the men in this book? If so, in what ways? How does the suffering of Sunja and Kynghee compare to that of Yoseb? Noa and Mozasu’s?
ヤンジン(サンジャの母)とキョンヒ(義姉)は「女の運命は苦しむこと」だという。この物語で、女性は男性よりも苦しんでいるのだろうか?もしそうなら、どのように? サンジャとキャンヒの苦しみはヨセブ、ノア、モザスの苦しみと比べてどうだろうか?

この小説で描かれている約80年間の韓国と日本の歴史において、女性は自分の運命を切り開くための手段が男性よりも少ないという意味で同意できる。ただし精神面での苦しみは、男性の方が圧迫感が強いように思われる。例えばイサクの兄ヨセブは、戦争で障害を負ったために一家の長としてふさわしい役割が果たせないことに苦悩しており、そこから逃避するための飲酒が、妻キャンヒに負担をかけるという悪循環を生み出す。ノアやモザズも、男性として果たすべき役割を意識してはいるが、才能に恵まれた二人は、ヨセブほどの苦しみを味わっているようには描かれない。

登場する女性たちは、第一世代から第三世代までは、男性と共存するために妥協せざるえない環境にある。ただし第四世代の日本女性ハナ、韓国系アメリカ女性フィービーになると、性別に関わらず、本人の生きる意志が自らの人生に影響力を持つことが示される。

⑪【美】Much is made of Sunja’s fading beauty, as well as the physical appearance of all the women who surround her. What does this reveal about society at this time? Do you see this emphasis on female beauty reflected in present day culture?
サンジャの色あせた美しさ、それと同様に彼女を取り巻くすべての女性の外見が重視されていた。これは、現時点で社会について何を明らかにしているか?女性の美しさの強調が現代の文化に反映されているのだろうか?

第一印象が良く、他人から美しいと認められることは、古代から現代まで変わらず、男女ともに重要だ。現代で特にそれが強調されているとすれば、メディアによって、より均一化された美意識が容易に拡散され、暗黙の了解のように共通認識されているためだろう。

この物語では、さまざまな容姿と性格をもった男女が見られる。

主人公サンジャはもともと美女として描かれてはいない。平凡な容姿だが、誠実で控えめで堅実な性格であり、奢侈を好まない。それは老齢になっても変わらない。彼女の父が口唇裂だったことが、美の基準についての判断を形成しているように思う。

サンジャと同じ第一世代に属する女性として義姉キャンヒは美人だが、彼女は敬虔なキリスト教徒で外見からトラブルに陥ることはない。第二世代で登場するノアの恋人アキコは裕福な家庭で育った美人で自分の思考と言動を過信しており、他人の心を傷つけることに無関心だ。一方、悲惨な家庭で育ったユミは美しく働き者で、強く自分を律する力を持っている。エツコは美人だが、自分の事業のために、それを保つことが有用だと考えている。第三世代で登場するハナは美貌ゆえに人生を狂わせ、フィービーは知的な容姿と思考で自分の道を進むことを決断する。

これらの女性の生き方から私が学んだことは、社会は美しい女性の容姿を消費しようとするけれど、そこに飲み込まれてるか、それを逆手にとるかは、本人の考え方や性格と運による、という点だった。

⑫【伝統】Throughout the book, characters often must choose between survival and tradition or morality. Can you think of any examples that embody this tension?
物語を通して、登場人物たちはしばしば生存と伝統または道徳のどちらかを選ばなければならなかった。同様に選択の葛藤を迫られる例は考えられるか?

現代においては、過去に当たり前だった規制も形を変えている。例えば、長男が家を継ぐこと、などである。本人が自分の意志でその決断を下したのであれば、それは幸せなことだが、親から強要されて逆らえず、本当に自分のしたいことができなかった、という話もきく。

この物語のタイトルであるパチンコ業界も、お金をかけるギャンブルであることを考えれば道徳的には娯楽の範疇を逸していると私は思うが、そこでしか働くことができなかった人たちがいることも確かである。


次回は質問質問⑬~⑯(恥、民族、繁栄、環境)を取り上げます。つづく。

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