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Min Jin Lee ”Pachinko”/B読書会用の質問③~⑦(勇気、父、家、結婚、性)

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読書感想
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ミン・ジン・リー「パチンコ」を読みました。巻末についていた読書グループガイドの質問リストを基に、自分の考えを記述します(備忘記録と思考整理のため)。質問は全部で19個。今回は③~⑦までを取り上げます(勇気、父、家、結婚、性)(ネタバレもありますので、ご了承ください)。

読書ガイドのもくじ

A質問①~②(歴史、愛)
B質問③~⑦(勇気、父、家、結婚、性)←いまここ
C質問⑧~⑫(生、血縁、女、美、伝統)
D質問⑬~⑯(恥、民族、繁栄、環境)
E質問⑰~⑲(親子、死、題名)

読書ガイド 質問③~⑦

③【勇気】”Their oldest brother, Samoel, had been the brave one, the one who would’ve confronted the officers with audacity and grace, but Yoseb knew he was no hero….Yoseb didn’t see the point of anyone dying for his country or for some grater ideal. He understood survival and family.” What kinds of bravery are shown by different characters, and what motivates this bravery?
「(三男イサクと次男ヨセブの)長兄サモエルは勇敢な男で、大胆さと優雅さで将校と対峙したのだろうが、ヨセブは兄が英雄ではないことを知っていた……ヨセブは国家や理想のために誰かが死ぬことに意義を見出せなかった。ヨセブは生き残ること、そして家族に価値を見出していた。」さまざまなキャラクターによってどのような勇気が示されていたか。この勇気の動機は何か?

主人公サンジャは、経済的安定と愛を得られるにも関わらず愛妾として生きることを断固として拒む勇気を持っていた。サンジャの夫となったイサクは自分の宗教的信念に基づいて、サンジャを救う勇気を示した。サンジャを心から愛していたコ・ハンスは、どれだけサンジャから疎まれても、変わらず彼女を密かに支え続ける勇気を持っていた。

④【父】Compare Noa’s biological and adoptive fathers, Hansu and Isak; What qualities does each try to foster in Noa, and why? Whom does Noa most resemble?
(サンジャの長男)ノアの血縁の父ハンスと、養父イサクを比較した場合、それぞれがノアのなかに育もうとした資質は何か。またその理由は何か。ノアは誰に最も似ているか?

ハンスは、息子ノアに自分が得られなかった学歴と教養を身につけて欲しいと考えた。それは日本人に負けないため、日本で生きる韓国人として勝ち残るために必要なことだった。またイサクは、韓国人として、またひとりの人間として、キリスト教の教えから、より良く正しく生きることをノアに伝えた。
ノアは、自分の信念を貫く姿勢を曲げなかったので、ハンスにもイサクにも似ていると思うが、融通が利かない頑固さは母親のサンジャにもっとも似ている。

⑤【家】What does “home” mean to each of the main characters? Does it ever change? In what ways does a yearning for home color the tone of the novel?
それぞれの主人公にとって「家」とはどういう意味か?それが変わることはあるか?また家への憧れはどのように小説を彩っているか?

サンジャにとっては、韓国の母が暮らす家が故郷であり、苦境にあるときほど、過去を美しく彩り懐かしく思い出させてくれる。
ハンスにとっては、正妻のいる家は形だけの存在であり、そこにあるのは義務感のみ。サンジャ一家と過ごしたひとときだけ、ふつうの家庭の温かみを感じることができた。
サンジャの長男ノアにとって、家は自分を育み保護してくれるものから、逃れられない檻のような存在に変わってしまった。それは彼が韓国人であることを隠し、日本人として生きることを選んだ瞬間から始まった。
サンジャの次男モザズの妻ユミにとって、実家は悪夢であり消し去りたい思い出だったけれど、モザズと一緒に築いた家では安定を得ることができた。

⑥【結婚】How do courting and marriage alter from one generation to the next?
求愛と結婚は世代から世代へどのように変わるか?

この物語は主人公サンジャの父フニの誕生から始まる。顔と足に障害を持った漁師フニは結婚などできないものと諦めて父母と堅実に暮らしていた。28歳になった頃、隣村に住む貧しい家の四女で15歳になるヤンジンを嫁にもらわないか、という話が仲人役からフニの母に持ちかけられる。1911年の韓国では、男性から女性の家族に結納として物品を送る習わしがあった。

やがて母ヤンジンと父フニのもとに、主人公サンジャが生まれる。1932年ヤンジン37歳、サンジャ15歳の頃に母と同年代のハンスと出会い、恋仲になって妊娠するが、彼が既婚者であることを知って拒絶する。ハンスから結婚はできないが、家も用意するし、全て面倒をみるから心配せず子どもを産んでくれ、言われたが、サンジャは愛人になることはできないと考えた。彼女にとって求愛されることは結婚と同一だったからだ。

1960年代サンジャの長男ノアは、1年浪人したのちに、東京で大学生活を始め、裕福な家庭の日本人女性アキコと恋に落ちるものの、それは彼が自分の血筋に対するコンプレックスを強く自覚させる結果となって終わってしまう。

1989年、次男モザズの一人息子ソロモンは、コロンビア大学を卒業し日本で働き始めたが、交際していた韓国系アメリカ人の恋人フィービーも一緒に横浜で暮らしていた。彼らはお互いに愛し合っていた。しかし、ソロモンは韓国と日本の両方のアイデンティティを強く意識し、家族の絆を重視。フィービーは、血筋は韓国系だが、アメリカ人としての文化で生きており、日本の閉鎖社会とそこに醸成されている韓国文化には馴染めない。お互い文化を尊重し別離を選ぶ。

80年にわたる時の流れのなかで、結婚のあり方は変わった。個人と家族が生き残るための手段としての存在から、一人一人が自分の意志で生き方を選ぶための自由な選択肢のひとつに姿を変えている。

⑦【性】Compare the ways in which the women of this novel– from Sunjya to Hana–experience sex.
この小説の女性たち(サンジャからハナまで)がセックスを体験する方法を比較しなさい

セックスシーンは各世代の登場人物において、それぞれ描かれているため、比較しやすい。サンジャの父母を第一世代として考えたとき、私たちがこの物語で読むことができる制交渉の場面は、第二世代サンジャとハンス、サンジャとイサク、第三世代ノアとアキコ、第三世代ソロモンとハナだ。

サンジャのセックスは、ハンスであれ、イサクであれ、お互いを思いやり愛情にあふれたものとして描かれている。それに比べて、第三世代、第四世代のセックスは刹那的で衝動的なものであり、どちらも痛々しい結末を迎えている。

サンジャはセックスに対して慎み深く、男性主導で受け身だが、アキコやハナは、性の欲望に対して貪欲な姿勢を示しており、女性主導で積極的だ。第三世代としては、番外編のようにして、同性愛者のハルキとその妻アヤメの性交渉についての記述もある。アヤメは、アキコやハナとは違う。ただ、そのようにあるべきだ、という義務感が彼女を支配している。


次回は質問⑧~⑫まで。つづく。

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