読書感想8. Trial&Error

「反知性主義」日本に知識人は存在する?

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読書感想
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今回は、著者の森本さんがあとがきで、ちょこっと書いていた日本に反知性主義が存在するかどうか、という話を共有します。(9月の読書会までに、この本を読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」(新潮選書)森本 あんり (著)

日本に「知識人」は存在するか、を考えるときは、日本に「反知性主義」は存在するかを考えてみると良いと著者は書いています。

検討はずれの権威志向が蔓延する日本

反知性主義の人として、近いイメージは、ホリエモンや孫社長かもしれない、と具体例が挙げられていますが、でも、あくまで候補で、ドンピシャの人はいないみたいです。

日本でこのような反知性主義を担うのは、どんな人だろうか。知性の傲りや権力との癒着を「ぶっとばす」ようなパワーをもち、大衆に受け入れられる人。反骨の精神で、伝統や大家の形式といった権威の構造を打ち破り、そこに新たな知の可能性を提示できる人。(中略)実在の人物でいうと、さてどんな人だろう。古いところでは、空海や親鸞や日蓮などの革命的な仏教者が、このジャンルにいちばん近いように思われる。現代なら、ホリエモンや孫正義のような型破りの起業家が候補になるのかもしれない。そういえば、はじめは反権力を掲げて大衆の支持を得ながら、結局は地方自治体の首長として自分自身が権力の虜になってしまった人もいる

(あとがき 「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」森本 あんり  (著)   )

結論としては、森本さんは、日本はアメリカに比べると中途半端だと思っているようです。理由としては、「見当外れの権威志向が一般の人びとばかりでなく政府にも大学にもメディアにも蔓延している」から、だと。

思考停止する市民

なぜ、日本がそんな事態になってしまったのか。私は、市民が思考停止していることが原因なのだと、言った森達也さんの言葉を思い出しました。

今の日本社会において、メディアも国家権力も本質的な強者ではない。強者ではないから自発性はない。つまり「A」で描かれたメディアの軽薄も警察の横暴も、いわば他律的な属性なのだ。今の日本における本当の強者は、市民社会が紡ぐ「民意(世論)」だ。圧倒的なチャンピオン。(中略)戦後半世紀余りを経過して、日本に移植された民主主義は、ひとつの究極の形で成熟し定着した。もう一度言う。全てを決定しているのは僕らなのだ。

「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」森達也(著)

日本の民意は変化や争いを好みません。前例を踏襲して、現状を維持することを重要視するからです。そうしていれば、新しいことや複雑なことを考えなくてすむからです。見たくないこと、知りたくないこと、自分にとって都合の悪いことは、なかったことにする、考えないようにして、仕方がないと諦める人びとって、知性的と言えるでしょうか。

「知性」とは、単に何かを理解したり分析したりする能力ではなくて、それを自分に適用する「ふりかえり」の作業を含むんです。これがきちんとできる市民が大半を占める国家が、成熟した大人の社会を築けるのではないでしょうか。

そういう意味では、日本はまだまだ成長の余地が残されている社会なのでしょう。

ヒーローを待たない

移民国家アメリカは、民衆の総意を代表する反知性主義のヒーローが現れて、時代を動かしていったわけですが、今後、日本で、民衆の総意を代表するヒーローみたいな人が現れて、日本を良い方向に変化させてくれることって、あるのでしょうか。でも、私たちは、それを期待して、ただ待っていれば良いのでしょうか。

なんか、それって違う気がしませんか。では、どうすれば良いのか。
以下の2点は、森本さんがあとがきで示したポイントです。

  • 1.優れた知性を持つことをめざす(知能が高くても、知性が低い人はNG)
  • 2.自分に対する根本的な確信の根拠をもつ(異次元の立脚点/別の座標軸)

この2の部分ですが、先日読んだ樋口耕太郎さんの「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」と繋がったので「お!」と思いました。結局のところ、私たち一人一人が、どのように自己肯定感を高めていくか、そこを目指していくことが、社会全体を変えることにつながるんですよね。

参考

くうかい【空海】平安初期の僧。真言宗の開祖。俗姓佐伯氏。幼名真魚(まお)。諡号(しごう)弘法大師。讚岐の人。延暦二三年(八〇四)入唐して長安青龍寺の恵果(けいか)に真言密教を学ぶ。大同元年(八〇六)帰国、高野山に金剛峯寺を建立。弘仁一四年(八二三)には東寺を与えられ、これを国家鎮護の祈祷道場とした。

“くうかい【空海】”, 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-17)

しんらん【親鸞】[1173~1263]鎌倉初期の僧。浄土真宗の開祖。日野有範(ひのありのり)の子。比叡山で天台宗などを学び、29歳のとき法然に師事し、他力教に帰した。師の法難に連座して越後に流され、ここで恵信尼と結婚し、善鸞と覚信尼をもうけた。のち、許されて常陸(ひたち)・信濃(しなの)・下野(しもつけ)などを教化(きょうけ)し、浄土真宗を開き、阿弥陀による万人救済を説いた。

“しんらん【親鸞】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-17)

にちれん【日蓮】[1222~1282]鎌倉時代の僧。日蓮宗の開祖。安房(あわ)の人。12歳で清澄寺に入り天台宗などを学び、出家して蓮長と称した。比叡山などで修学ののち、建長5年(1253)「南無妙法蓮華経」の題目を唱え、法華経の信仰を説いた。辻説法で他宗を攻撃したため圧迫を受け、「立正安国論」の筆禍で伊豆の伊東に配流。許されたのちも他宗への攻撃は激しく、佐渡に流され、赦免後、身延山に隠栖。武蔵の池上で入寂。著「開目鈔」「観心本尊鈔」など。勅諡号(ちょくしごう)は立正大師。

“にちれん【日蓮】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-17)

堀江貴文:株式会社ライブドア元代表取締役社長。10月29日、福岡県生まれ。東京大学文学部中退。1996年(平成8)、ウェブサイト制作会社であるオン・ザ・エッヂを大学在学中に設立。 2002年、経営破綻(はたん)した旧ライブドア社より無料プロバイダー事業の営業譲渡を受け、04年、社名を株式会社ライブドアに変更した。(中略)インターネット関連事業だけでなく、日本グローバル証券を買収しライブドア証券(現かざか証券)とし、金融事業に参入するなど、経営者として積極的なM&A戦略を掲げ、多数の企業買収や提携を行うことで企業価値を増大させた。マスコミに登場するときには黒いTシャツがトレードマークで、従来の経営者像とは大きく異なる独特のキャラクターをもっている。常識にとらわれない新時代の若手経営者として注目された。しかし2006年1月、ライブドアの関連会社が虚偽の企業買収情報を開示したなどとされる事件で、財務担当取締役・関連会社社長ら3人とともに証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)の容疑で逮捕された。

“堀江貴文”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-17)

孫正義そん-まさよし(1957−)昭和後期-平成時代の経営者。
昭和32年8月11日生まれ。昭和55年カリフォルニア大バークリー校卒業。在学中に音声もでる翻訳機を開発し,シャープと契約。56年日本ソフトバンク(現ソフトバンク)を設立し社長。ソフトバンクテレコム社長,ソフトバンクモバイル社長,福岡ソフトバンクホークスのオーナーなどをつとめる。積極的な提携・買収戦略でマルチメディア事業を展開する。佐賀県出身。

“そん-まさよし【孫正義】”, 日本人名大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-17)
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