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「貨幣発行自由化論」第13章 原料価格の安定をめざすのだ

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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第13章「貨幣のどの価値が重要か」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

この章では、前章(12章)から引き続き貨幣の価値についての考察です。価値とは何かを定義するところから始まり、では、安定した貨幣価値とは何か、それがどのようなメリットをもたらすから重要なのか、という話のあと、結論としては、価値を安定させる通貨は原料価格を基準にしたものであり、最終的に選ばれるのはソレだ、ということです。

価値ってなんだ

価値っていうのは、関係性だから、単体では表せなくて、なにか他のものと比べる必要があります。例えば、りんご5個の価値は、ミカン10個に等しいとかね。

でも多くの人は、モノの価値を考えるとき、お金に換算して考えるでしょう。秋の収穫時期なら、りんご5個だと普通は500円だな。1個80円だと安いけど、1個200円だと高級なんだな、とかね。

これ、貨幣で考えるときは、どうでしょうか。ハイエクはこんなふうに言っています。

「価値」という言葉を貨幣それ自体に使う場合には、多くの商品の価格が短期間で顕著に一方向に変化しないことや、ほとんど変化しないことを意味する

こんなふうに言っておきながら、その直後で、そうは言っても自由市場では価格は常に変動するから、貨幣価値が明らかに上がった(または下がった)と感じることもあるでしょ?と前置きをしたあとに、ようやく、安定した貨幣価値の説明になります。

予測できればいい

安定してないってことは、変動するってことです。それはつまり、不確実性があるってことなんだけど、不確実性のリスクは、絶対に避けられないんですよね。でも、不確実性のリスクって言っても、どのくらい変動するのか、ある程度まで計算で予測できれば、リスク度は下がるじゃないですか。

予測できるわけだからね。まぁ、こっからここまでは動くこともあるかもしれんな、と予測ができれば備えもできるわけです。で、この備えができるってことを、たぶん安定した貨幣価値って、ハイエクは言ってるんじゃないかな、と思うんです。

最終的に選ばれる通貨

変動を正確に予測する手がかりを失わせるのは、貨幣量の変化なんですけど、発行量をどのように調整するかは、何の価格を目安にするかで、早めに予防対策ができるかどうかが決まるのだとか。

原料価格の安定を直接の目的として発行量を調節するほうが、消費財価格の安定を目的とする場合より物価安定には効果的であり、結果的に消費財価格の安定にもつながるはずだ。通貨供給量の変化と消費財価格の変化に間には経験的に長いタイムラグがあることがわかっている。

第13章「貨幣のどの価値が重要か」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

発券銀行は、原料価格の安定を目指して、貨幣発行を調節すればうまくいくんじゃないの、というアドバイスでした。それが、経済活動全般の安定化につながるそうです。

ちなみに、立場や環境によって重視する価格や通貨は以下のように異なるんですが、これらを考えてもやっぱり原料価格を基準に価値を安定させる通貨が結論としては選ばれるのだとか。

企業:生産物の価格(物価変動の徴候が早く出るから)
給与所得者:原料の平均価格(団体交渉に有利になるから)
国際レベル:卸売商品価格の標準セット

次の第15章では、貨幣数量説への反論です。ケインズ、ミルトン・フリードマンらの意見に対して、それは違うんじゃないの?という自説を展開しながら、複数通貨の優れた点を説明しています。

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貨幣発行自由化論  改訂版ーー競争通貨の理論と実行に関する分析 [ フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) ]

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