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幸福な監視国家・中国/人間の尊厳を奪ってしまうことへの監視・チェックの役割はどうするのか、という問題

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読書感想
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7月31日は第120回ZOOMで読書会です。私は、「幸福な監視国家・中国」 (NHK出版新書) 梶谷 懐 (著) 、 高口 康太 (著) を紹介する予定で読み進めています。今回は第7章(道具的合理性が暴走するとき)から気になったところを共有します。

ここでは、新彊ウイグル自治区の再教育キャンプで行われていることを事例として取り上げながら、私達が考えるべきことを示してくれています。

そういった社会が、政府や企業がビッグデータにもとづいて行う「このように振る舞えばより幸福になりますよ」という提案(ナッジ)やアーキテクチャについて、またそのことが人間の尊厳を奪ってしまうことへの監視・チェックの役割を担う「市民社会」の基盤を欠いたまま、道具としての統治の技術ばかりが急速に進化していくことの危うさについて、本書は指摘を行ってきました。

「幸福な監視国家・中国」 (NHK出版新書) 梶谷 懐 (著) 、 高口 康太 (著)  第7章 道具的合理性が暴走するとき

そして著者は、「道具的合理性の暴走」は中国だから起こっているわけではない、と3つの理由を挙げて説明します。

  1. 資本主義社会ならどこでも起こりうる(功利主義を主要な価値観としているから)
  2. 市民が民間企業や政府の監視や管理を管理することの難しさ(テクノロジーの急激な進歩)
  3. 監視技術と公共性をどのようにバランスするかの難しさ(単純に技術を否定するには、もう後戻りできないところまで来ている)

結論としては、テクノロジーをどのように使いこなすかを常に議論しつづける姿勢が重要なのです。便利になるから、いいんじゃないの?と安易に考えていると、いつの間にか恐ろしい事態に発展している、という可能性もあるわけです。

今日も読んでくださってありがとうございます。
明日もどうぞよろしくお願いいたします。

主として19世紀のイギリスで有力となった倫理学説,政治論であり,狭義にはJ.ベンサムの影響下にある一派の思想をさす。ベンサムは《政府論断片》(1776)のなかで,〈正邪の判断の基準は最大多数の最大幸福である〉という考えを示した。彼はこれを立法の原理とすることによって,従来の政治が曖昧な基礎にもとづく立法に依拠していたのをただそうとしたのである。〈功利utility〉という語はすでにヒュームの《人間本性論》(1739-40)で用いられており,幸福(快楽)をもたらす行為が善で不幸(苦痛)をもたらす行為が悪だとする考えは,常識のなかには存在していたといえるが,ベンサムはそれを学問的な原理に高めようとしたのである。そして〈最大多数の最大幸福〉という原理は,個人の利害と一般の利害とを合致させることをめざしている。彼の《道徳および立法の原理序説》(1789)は,この功利の原理を展開したものである。すべての人間の行為の動機がつねに快楽の追求と苦痛の回避であるとすればすべての行為が正しいことになってしまうこと,自分の幸福と他人の幸福とが衝突することがあること,ベンサムの説く快楽の計算は実際にはきわめて困難なことなど,ベンサムの功利主義には種々の欠点があった。しかし,立法の原理として〈最大多数の最大幸福〉を提示することは,当時の立法者の少数有力者のための立法とそれにもとづく政治を批判する理論的根拠として有効であった。中産階級の人々にとっては〈幸福〉の具体的内容についての大体共通する理解があったからである。

“功利主義”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-07-29)

もくじと概略

この本の目次はこんな感じ。()は、「はじめに」で解説されていた各章の概略を私がまとめたもの。

  • はじめに
  • 第1章 中国はユートピアか、ディストピアか(私たちの社会と未来を考えるヒント)
  • 第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか(個人情報や評価のやり取りの持つ意味)
  • 第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」(「管理社会」「監視社会」を具体的に考える)
  • 第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか(ICTによって洗練された言論統制)
  • 第5章 現代中国における「公」と「私」(テクノロジーを通じた統治と市民社会)
  • 第6章 幸福な監視国家のゆくえ(社会秩序=公共性の実現が権威主義国家で進む意味)
  • 第7章 道具的合理性が暴走するとき(新疆ウイグル自治区で起きていること) ←いまココ
  • おわりに

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