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幸福な監視国家・中国/第5章 市民社会という概念に含まれる3つの意味

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読書感想
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7月31日は第120回ZOOMで読書会です。私は、「幸福な監視国家・中国」 (NHK出版新書) 梶谷 懐 (著) 、 高口 康太 (著) を紹介する予定で読み進めています。今回は第5章から気になったところを共有しますね。

概念を示す用語の定義がズレてる

ここで著者は面白い視点を読者にもたらします。「市民社会」という概念を示す用語の定義が、西洋社会と日本や中国ではズレているのに、みんな気づいてないからおかしなことになる、っていうんですよね。「市民」という言葉も二重性を持っていて、それを反映しているんですって。
驚きました。市民と市民社会って、そんなに深い意味があったのかって。西洋社会では以下の3つの異なる概念があるわけですが、日本ではすべて「市民社会」という用語になり誤解が生じているんです。

  1. 経済社会:自由な経済社会(ブルジョワ(私的利益を追求する資本主義的な市場経済の担い手)によって動く)
  2. 公民社会:法律の前での平等の下で人々が政治に参加する社会(シトワイヤン(より抽象的な人倫的理念を追求する存在)によって動く)
  3. 市民社会:NGOやNPOなどの民間団体またはその活動領域(国家や営利企業と異なる)

そして中国を理解するには、二つの民主化要求を理解する必要があります。

  1. 政治的権利の平等を要求(民主1)=権力の抑制、法の支配への志向:近代的な市民社会の担い手
  2. 経済的平等を要求(民主2)=強い権力によるパターナリズムを志向:生民(生存を天に依拠する民)によって動く(中国独自の「民主」理解によって支えられる)

中国では、経済的平等を求める力が強くて自由権の保証が弱くなっています。というのも「公」と「民」の一体化が困難だから。そもそも国家権力に民意が反映されていない中国では近年の監視社会論のテーゼが成り立たないぞ、と著者はいいます。だからこそ、中国の抱える問題(民主1と民主2の分裂)は、中国だけの問題じゃなくって、世界的な問題なんだよ、というのが著者の主張なんですね。
この章も難しかったけど、勉強になりました。

今日も読んでくださってありがとうございます。明日もどうぞよろしくお願いいたします。

もくじと概略

この本の目次はこんな感じ。()は、「はじめに」で解説されていた各章の概略を私がまとめたもの。

  • はじめに
  • 第1章 中国はユートピアか、ディストピアか(私たちの社会と未来を考えるヒント)
  • 第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか(個人情報や評価のやり取りの持つ意味)
  • 第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」(「管理社会」「監視社会」を具体的に考える) 
  • 第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか(ICTによって洗練された言論統制)
  • 第5章 現代中国における「公」と「私」(テクノロジーを通じた統治と市民社会)←いまココ
  • 第6章 幸福な監視国家のゆくえ(社会秩序=公共性の実現が権威主義国家で進む意味)
  • 第7章 道具的合理性が暴走するとき(新疆ウイグル自治区で起きていること)
  • おわりに

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