先月5月に初めてみたオンライン落語での柳家喬太郎師匠の怪談牡丹灯籠。今月第4話も見ちゃいました。今回は、17章おみね殺しの場面。これ、圓朝師匠が23歳から26歳にかけて書き上げた作品ってことを考えると、その人間造形の巧みさとリアルな物語性に改めて驚きます。
原作を読むと、妻おみねも狡猾だけど、夫の伴蔵は、その上をいく強力な悪役キャラクターになっていますし、その夫婦の駆け引きを喬太郎師匠が見事に落語で演じてくださって、今回は、これまでの中で特に印象的な回になりました。あらすじを知っているのにも関わらずハラハラドキドキしました。
文春落語オンライン 柳家喬太郎独演会Vol.17 怪談牡丹灯籠 連続口演第4話
7月3日(土)演題
演題
1.初音の鼓
仲入り(10分)
1.栗橋宿/お峰殺し
1.質問コーナー
「初音の鼓」は、シンプルに楽しく笑える落語です。骨董おたくで、変わったものを収集するのが趣味の変な殿様が主人公。その変な殿様にニセモノの骨董品を高値で売りつけようとする道具屋と、道具屋の口車に乗せられて、嘘の片棒を担がされる殿様の部下、三太夫の掛け合いが間抜けでクスっとなります。サゲのどんでん返しもスッキリして後味よし。
そういう意味でも、めちゃくちゃヘビーで怨念ドロドロした「牡丹灯籠のおみね殺し」の前にはちょうど良い演題なのかもしれません。
初音の鼓の由来は、こちらのサイトの記述が参考になります。
初音の鼓;
落 語 ば な し第166話 落語「初音の鼓」の舞台を行く 春風亭正朝の噺、「初音の鼓」(はつねのつづみ)別題「ぽんこん」より
源義経が静御前にあたえたという。千年生きた狐の皮で作られ、太陽に向かって打てば雨を降らせる。 「初音」は元々は、ウグイスなどの鳥獣や虫類がその年はじめて鳴く声をいう。 この鼓の名は、雨が降った時に人々の歓声が起こったことに由来。
古典落語の演目のひとつ。「ぽんこん」とも。主な登場人物は、殿様、道具屋。「継信(つぎのぶ)」の別題を持つ同名の落語とは別の作品。
“初音の鼓〔落語:ぽんこん〕”, デジタル大辞泉プラス, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-07-06)
栗橋宿/お峰殺し
「栗橋宿/お峰殺し」は三遊亭圓生の原作でいうと、17章にあたる部分です。
圓朝の「怪談牡丹灯籠」の速記本は22個の章に分かれている。各章の概要は以下のとおり。
牡丹灯籠 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
15.飯島平左衞門は深手を負いながらも、宮邊源次郎を殺しに行くが、反対に殺されてしまう。源次郎とお国は飯島家の金品を盗んで逃走する。黒川孝助はお徳と祝言をあげるが、亡き主人・平左衞門の仇を討つため源次郎とお国を追う。
16.萩原新三郎の葬儀を済ませたのち、伴蔵と妻のお峰は悪事がばれるのを恐れて、伴蔵の故郷・栗橋に引っ越す。
17.伴蔵は幽霊にもらった百両を元手に荒物屋「関口屋」を開き、成功し、料理屋の酌婦と懇ろになる。酌婦は、飯島平左衞門の元妾のお国だった。伴蔵は、お国との仲を咎めた妻のお峰を騙して殺す。(「栗橋宿/お峰殺し」)
18.死んだお峰が伴蔵の使用人たちに乗り移り、伴蔵の悪事をうわ言のように喋り出したので、医者を呼んだところ、その医者は山本志丈だった。事の次第を知った山本は伴蔵にお国の身の上を暴露する。お国の情夫宮邊源次郎が金をゆすりに来るが、逆に伴蔵に追い返される。伴蔵は栗橋を引き払い、山本と江戸に帰る。(「関口屋」)
19.仇が見つからず、孝助はいったん江戸へ戻り、主人が眠る新幡随院を参り、良石和尚に会う。婿入り先の相川家に戻ると、お徳との間に息子・孝太郎が生まれていたことを知る。
20.伴蔵は悪事の発覚を恐れて山本志丈を殺すが、捕えられる。孝助は良石和尚の予言に従い、人相見の白翁堂勇齋を訪ね、そこで偶然、4歳のときに別れた母親おりえと再会する。すると、孝助が探していたお国が、母親の再婚相手の連れ子であり、源次郎とともに宇都宮に隠れていることを知る。
21.母おりえがお国と源次郎の隠れ場所に手引きしてくれるというので孝助は宇都宮に出向くが、おりえは、夫に義理立ててお国と源次郎に事の次第を話し、2人を逃す。
22.母おりえは孝助に事の次第を話し、自害する。孝助は二人を追い、本懐を遂げる。
来月8月は、第18章の関口屋だそうです。喬太郎師匠の牡丹灯籠は、いったんそこで最終回。ちょっと寂しいな。
落語にしてみたい話はイヨネスコの教室
いまさらですが、原作である圓朝師匠の牡丹灯籠を青空文庫で読めることに気づきました。これ、喬太郎師匠の落語を見て、Q&Aを聴いた後に、第十七段を文字で読むと、また別のドキドキが味わえます。怖い。。。怖さが倍増しました。
あと、いつか喬太郎師匠がいつか落語にしてみたい、とおっしゃっていた、イヨネスコの授業(戯曲)もアマゾンで見つけましたよ。kindle版で3,564円とけっこうなお値段です。というかkindle版があることに驚きました!
ちなみに英語版のkindleだと1,730円。でもさ、原作はフランス語なんだよね。どっちにしても、不条理劇らしいので、Google翻訳を使ったところで、生半可な語学力だと理解できないのは間違いなさそうだけど、英語版もちょっと気になる。
そして戯曲なので、お芝居もあるわけで、舞台のレビューもあり、ようやくどんな内容の話なのかが分かりました。確かに、これを喬太郎師匠が落語にしたら、不思議な感じになりそう。YouTube動画(日本語のは音声だけ)も発見しました。
参考
(青空文庫)「怪談牡丹灯籠」三遊亭圓朝・著 鈴木行三校訂・編纂
(ワンダーランド wonderland 小劇場レビューマガジン)ウジェーヌ・イヨネスコ劇場「授業」
(YouTube動画)渋谷ジァンジァン10時劇場「授業」1/2(日本語) (29分)
(YouTube動画)La Leçon à St Cyr – 29 octobre 2013(フランス語)(1時間)
「文春落語」(2020年1月から文藝春秋がはじめた月例落語会)
“牡丹灯籠(ぼだんどうろう)” 三遊亭円朝 (えんちょう) 作の人情噺 (ばなし) 。怪談噺の代表作で、正称は『怪談牡丹灯籠』。1861年(文久1)から64年(元治1)、円朝23歳から26歳ごろの作。84年(明治17)速記本刊行。
“牡丹灯籠”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-05-01)