読書感想8.1. ふとした気づき8. Trial&Error

「象を撃つ」ジョージ・オーウェル(1936)支配者の苦悩を味わう短編

当記事には広告が含まれている場合があります
当記事には広告が含まれている場合があります
読書感想
この記事は約4分で読めます。

1936年(昭和9年)に発表されたジョージ・オーウェルの短編小説を読みました。インドで生まれた英国人オーウェルが33歳の時に発表したこの作品は、彼自身がビルマ(ミャンマー)の警察官となって、英国植民地の実態を経験したことが基礎になっているエッセイのような物語です。(「象を撃つ」ジョージ・オーウェル著 ←青空文庫で無料で読めます)

原作と翻訳の読み比べ

主人公は自分の本心に逆らって、象を射殺する、という行為を決断します。それは「私の全人生は、東洋に住むあらゆる白人の人生は、誰かに笑われないことを目指す苦闘の連続だった」という言葉に明確に現れています。

だが私はその象を撃ちたくなかった。草の束で膝を打つ姿に、身にまとう祖母めいたひたむきな雰囲気に見とれていた。それを撃つのは殺人行為であるかのように思えた。動物殺しに胸を悪くするような歳では既になかったが、象を射殺したことはなかったし、したいと思ったこともなかった。(なんとなく、大型動物を殺すのはより悪いことに見えるものだ。)その上、象の所有者のことも考慮しなければならなかった。生きている象には少なくとも百ポンドの値がつくが、死んでしまえば象牙分の価値しかなく、五ポンドくらいだろう。だがすぐさま行動に移らなければならなかった。

「象を撃つ」ジョージ・オーウェル著 The Creative CAT 訳

But I did not want to shoot the elephant. I watched him beating his bunch of grass against his knees, with that preoccupied grandmotherly air that elephants have. It seemed to me that it would be murder to shoot him. At that age I was not squeamish about killing animals, but I had never shot an elephant and never wanted to. (Somehow it always seems worse to kill a large animal.) Besides, there was the beast’s owner to be considered. Alive, the elephant was worth at least a hundred pounds; dead, he would only be worth the value of his tusks, five pounds, possibly. But I had got to act quickly.  

Shooting an Elephant By George Orwell

私自身は、人を支配する立場を経験したことがありません。しかし、この短編を読み、オーウェルが感じた良心の呵責や、本当の自分を押し殺して支配者としての役割を演じることの苦しみに共感しました。

squeamish [adj]
1 easily upset, or made to feel sick by unpleasant sights or situations, especially when the sight of blood is involved
2 not wanting to do something that might be considered dishonest or immoral

“squeam・ish (adj.)”, Oxford Advanced Learner’s Dictionary, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-08-26)

4作品が無料公開中

ジョージ・オーウェルの作品は青空文庫で4作品が無料公開されています。アマゾンのアンリミテッドでは「1984」「動物農場」など彼の代表作も読めます。 

参考

ジョージ・オーウェル George Orwell[1903―1950] イギリスの小説家、批評家。本名エリック・ブレア。税関吏の息子としてインドに生まれ、8歳で帰国。授業料減額で寄宿学校に入り、奨学金でイートン校を卒業したが、大学に進まずにただちにビルマ(ミャンマー)の警察官となり、植民地の実態を経験。その贖罪 (しょくざい) 意識もあって自らパリ、ロンドンで窮乏生活に身を投じたのち、教師、書店員などをしながら自伝的ルポルタージュ『パリ、ロンドン零落記』(1933)や、植民地制度がもたらす良心的白人の破滅を描いた『ビルマの日々』(1934)などを発表。

“オーウェル”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-08-26)
タイトルとURLをコピーしました