日曜の早朝は、1週間の中でも自分にとって特別な時間です。お散歩やジョギングが、ほんとうに気持ち良いから。
実は、マニラに来てから、室内ジムでトレッドミルに乗るだけで、野外を走ったことはありませんでした。マニラの名物といえば、交通渋滞!蒸し暑い気候で、しかもクラクションの騒音と排気ガスの中を走るなんて、考えられない。
ところが、コロナでコミュニティ検疫が始まると、街を走る車が消えました。それと同時に小鳥の鳴き声が聞こえるようになり、空気もきれいに!最初は、ジムが閉鎖されているから仕方なく野外に出た私でしたが、いまや、野外のお散歩は必須。試行錯誤していたお散歩ルートも、この期間に、ほぼ決まったコースができました。
外と中を歩く生活
車も人もいなくて、静かな通りを歩いていると、3月18日から始まったロックダウン当初の雰囲気が頭の中によみがえってきます。今はもう、以前ほどではないにしろ、すっかり車も増えました。バイクはデリバリーフードのものをよく見かけるが、バイクタクシーは全く見かけなくなってしまいました。彼らは、いまどうやって生活しているんでしょうか?デリバリーのドライバーに転向したのかな。
それはさておき、ロックダウンが始まったころは、1か月もすれば収まるだろうと甘く考えていたので、正直なところ、大量の車による廃棄ガスや騒音が消えて、小鳥のさえずりが聞こえる環境になったことが嬉しくすらありました。不安がる友人の気持ちが全く理解できず、皆がやらないことを、この時期にやらなきゃ、という気持ちが、それまで以上に強かったなぁと思います。
こんなことが、とりとめもなく頭の中に突然うかんできて、おや?と不思議な気持ちになったのですが、おそらく原因は、台風が接近していて、いつもの日曜早朝ウォーキングができずに、仕方なくジムでトレッドミルに乗っていたからでしょう。
ノイズ=感動/閉鎖空間=集中
空調の効いた清潔な環境だと、野外を歩いたときに感じるノイズが少ないのです。外を歩けば、風や植物の匂いを感じるし、野良猫を見かけたり、私と同じように運動する人、犬を散歩している人、清掃作業をする人に挨拶したり、野菜やタホを売っている人や、ものごいする人の姿も。でもジムだと、純粋に運動することと、自分の思考に集中できるから、色々なことを思い出したりするみたい。どちらも一長一短だから、どちらも好きなのですが、室内の場合はリスクが少ない分、予想外の感動も少なくなるような気がしました。
予想外の感動があること、これが自分にとって非常に重要なことなんだ、というのは、今年自分が改めて学んだことです。このことに関連して、流行を追いかけないことが自分の生活方針のひとつになっていることも自覚できました。
子どもの頃から、流行りものには、あんまり興味を持たないタイプだったのですよね。自分が見たり、聴いたりして、響けば心が動くこともあるけど、いま皆に人気があるとか、そういう点で「じゃ、わたしも!」みたいな思考になることはほとんどなかったので、結局そのまま大人になっちゃったんでしょう。
自分で発見する喜び
例えばそれが、自分の信頼する人だったり、尊敬する人が薦めるものである場合は、少しアンテナに引っかかって、その時の自分の心理状態とか、置かれた環境によっては、試してみることもあるのです。
でも、自分から流行を追いかけていくようなことにはならないんです。
なぜなんだろうな、と思っていたんだけれど、それは自分にとって予想外の感動がないからなんだと気づきました。意地悪な言い方をすると、誰かが意図して作りあげた商業的な罠にはめられた気がすることや、自分で何かを発見する喜びも少なくなってしまいます。
物語を多くの他者と共有する喜び、というのは確かにあると思うけれど、そういうのはお金儲けを目的にしている誰かに準備してもらって楽しむものではなくて、少人数でも良いから自分で作れたらいいなと思うのです。いま、日本でひとつの物語がブームになって、そこにたくさんの消費が生まれている状況を見て、その広がり方を面白いなと思う反面、怖さを感じるのは、ひとつの物語に容易に同調してしまう人々がたくさんいる、という事実です。
ハズレはイヤ
日本人は同調志向が強いから、操作しやすそうだよなぁ、と何かがブームになると考えてしまいます。(ハラリによれば、日本人に限らず、ホモサピエンス全般が物語を嗜好する生物みたいですが…。)
良いものだから、人気があるのだ、広まるのだ、という意見も、もちろんあるでしょう。
けれど、本当に良いもの、必要なものは、50年、100年と残っていくはず。だから、いま慌てて追っかけていかなくても良いよなぁ、とのんびりしている私は思ってしまうのです。いま流行っているものが、歴史に残るものか、それとも、現在の消費経済の流れから生まれた泡なのか、もちろん、私には分かりません。私は自分に残された時間で、もうすでに読み切れないほどの読みたい本を抱えてしまっているから、そういう意味では、流行りものに乗っかって、ハズレを引いて時間を無駄にすることが怖いのかも。
『鬼滅の刃』ブームの裏に、アニメ化と計算尽くしのファン獲得策
サピエンス全史(上) 試し読み増量版 文明の構造と人類の幸福ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳) 形式: Kindle版