今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第15章「通貨供給の望ましいあり方」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。
「貨幣発行自由化論 改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)
この章は、政府は中立的な立場で貨幣コントロールはできないから、中立な貨幣などは存在しないこと、いずれ良貨は悪貨を駆逐するだろうけど、過渡期には混乱も生じるだろうね、という話です。
政府の限界
私たちは、政府に期待しすぎているのかもしれません。
経済学者は、労働者が望む賃金水準で雇用を確保することを政府に要求してきたが、これは不幸なことだったと思う。そのような要求を長期的に満足させられる政府は存在しないからだ。
第15章「通貨供給の望ましいあり方」「貨幣発行自由化論 改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)
結局のところ、国家が通貨を発行している限り、その国の政治情勢や金融政策などによって、その通貨価値が上がったり下がったりするのは避けられません。政府が通貨発行の独占権を手放したら、どのくらいうまく行くのか、どこかの国が実験してみてくれないかなぁ。
そういえば、日本で多通貨制度を試してみたら、という意見を見つけたのですが、こういうチャレンジは面白いですよね。私は、Facebookのリブラが世界的に使用可能な状態になったら、世界的に富の再配分が加速するんじゃないかと、実は期待してるんです(世界で27億人が使っているわけだし)。すでに経済に国境はないし、ウィルスによっても世界がボーダレス化していることが分かったんだから、世界通貨がいくつもある時代だって、やってくる気がします。
浜矩子、総務省は「日本の一国多通貨制度への移行を提案したら」
思考実験 物価水準の安定
ハイエクが提案する競争通貨で、安定した物価水準の維持が本当に可能かどうかを検討する場合、「たくさんの人が同時に、自分の資産のなかで、特に流動性が高いものを増やしたいと考えたらどうなるか」という仮説を検討してみることが参考になる、とハイエクは言います。
流動性の高い資産の比率を増やしたいという願望は貨幣量の拡大によって叶えられるし、それによって逆説的ながら、個人が既に保有する流動資産の価値を押し上げ、ひいてはその比率も高めることになる
第15章「通貨供給の望ましいあり方」「貨幣発行自由化論 改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)
商品バスケットの価格を上下させず、貨幣の発行・流通を維持できる一定量は常に限られているため、ルールが守られ、公示価格で売買できれば、多くの人々がもしも同時に、流動性が高い資産を増やしたいと考えたとしても、正当な需要は満たせる。つまり、ルールさえ守られていれば、安定した物価水準の維持は可能だというのがハイエクの結論です。
良貨が悪貨を駆逐
とはいえ、そうなるためには、人々がもっと賢くなる必要があるのです。
良貨と悪貨が並行して流通する限り、自分自身の取引に良貨だけを使ったとしても、悪貨の有害な影響を完全に遮断することはできない
第15章「通貨供給の望ましいあり方」「貨幣発行自由化論 改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)
結局のところ、価値が下がりかねない貨幣が、競争通貨のなかに混じっている場合、影響を受けることは避けられないので、本当の安定通貨のメリットを享受するためには、ほとんどの取引が安定通貨建てで行われる社会じゃないとダメなのです。ハイエクは、いずれは良貨が市場を支配するだろうと予測しています。
次の第16章では、フリーバンキングについての議論がいつ頃盛んだったのか、なぜそれが下火になったのかを解説しつつ、やっぱり、政府独占は止めさせて銀行に通貨競争をしてもらうしくみを作らなきゃいけないんだけど、改革を進めるには4人の敵を攻略しなきゃダメ、という内容になっています。(具体的な攻略方法の記載はなし)
貨幣発行自由化論 改訂版ーー競争通貨の理論と実行に関する分析 [ フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) ]