2020年8月27日に著者のオンラインセミナーに参加し、興味を持ったので、「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」 (光文社新書) 樋口 耕太郎 (著)を読みました。私の中で、今年のマイベスト本になりそうな一冊です。久々に夢中で読みました。
参加したオンラインセミナーについては、こちら(幸福に必要なのは自己肯定感)に書きました。
どんな人におすすめか
- なぜあなたは疑問を持たずに現状を維持してしまうのか。
- なぜ、人は仕方がないと、あきらめ、無気力になってしまうのか。
- どうして、そういう人たちが増えていくのか。
この3点に興味がある人には必読の本です。タイトルと著者の経歴だけを見ると、沖縄の貧困問題に対する提案が書かれた本のようですが、違います。
もちろん、著者の推論の基礎となるデータは沖縄社会ですが、導かれる結論は、個別の地域問題の解決策にとどまりません。日本だけでなく、人間の社会全体に対する大きな提言が含まれています。
著者は、赤字を抱えた沖縄のリゾートホテル事業を再生したキャリアを持ち、現在は沖縄大学で「幸福論」を教えています。特に、学校の先生や経営者など、他人に特に影響を与えられる立場にいる人は、読んでおいて損はないでしょう。
おすすめ理由
人類に対する提言と書くと、規模が大きくなりすぎて、地球温暖化の問題のように、自分には関係がない、と感じてしまう人もいるかもしれません。
でも、違うんです。
どれだけ大きな問題だと見えていても、小さな個人(あなたや私)が、できることが必ずある。
それを信じさせる力が、この本にはありました。
それは、著者の樋口さん自身の経験と実績が持つ力です。赤字のホテル経営をどのように立て直したかについての記述は、ひとつの事例として簡単に述べられているに過ぎませんが、淡々と事実を語る文章の裏に、相当の苦悩と努力があったことは容易に想像できます。
また、それを論理的に分析して、そこから樋口さんが導きだした結論(幸福論)は非常にシンプルだけれども、実践するには、めちゃくちゃハードルが高いものです。でも、実際にそれを何年も実践されているという行動力にも圧倒されました。
自分の行動を変えよう
私は、冒頭に挙げた3点について、長年疑問を持っていながら、ぼんやりと頭の中にそれをくすぶらせていました。でも、この本を読んで、ものすごく納得感を得られたのは、自分自身の体験と、自分の周囲の人びとの考え方、行動に対する理解が深まったからです。
沖縄に住んだことはないし、親しい人がいるわけでもありません。貧困問題も、切実な問題ではありません。それでも、著者の真摯な呼びかけに、私は自分の行動や考えを振り返らざるを得ませんでした。
人が自分を愛するために、すなわち、人が自尊心を回復するために、私たちに何ができるのだろう?人が自分を愛するために、私たちが究極的にできることは、「その人の関心に関心を注ぐこと」だ。それは、人のために立ち止まることでもある。(中略)人に対して関心を示すことと、人の関心に関心を示すことは、まったく異なるものである
第5章キャンドルサービス「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」 (光文社新書) 樋口 耕太郎 (著)
どのような方法で、「関心に関心を示す」のか、著者が示す具体例を読めば、誰でもそれが簡単ではないことに気づかされます。でも、自分の関心を押し付けるのではなく、相手の本当の関心に耳を傾けることが、究極的に世の中を変えるパワーにつながる、というのが著者の結論です。
クリスタキス[1]やフロム[2]の本から得た知識と重なる部分があったのも、私の心に響きました。今後は、誰かと話すとき、必ず樋口さんの言葉を意識することになりそうです。
参考
[1]「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」ニコラス・A・クリスタキス (著), ジェイムズ・H・ファウラー (著), 鬼澤 忍 (翻訳)
[2]「愛するということ」 新訳版 Kindle版 エーリッヒ・フロム (著), 鈴木晶 (翻訳)