アカデミーヒルズのオンラインセミナーに参加したので、備忘記録を残しておきます。実は全く著者に対する予備知識がなく、アカデミーヒルズのセミナーだし、ちょうど参加できる日時だったし、無料だったから申し込んでみたんですが、良い意味で期待を裏切られた内容だったので、もっと詳しく著者の活動を知りたいと思い、セミナー終了後に著者の書籍を購入しました。
「沖縄から貧困がなくならない本当の理由 ~これは日本の問題だ~」
概要
「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」の著者の樋口耕太郎さんと、編集者の柿内芳文さんがZOOMで90分間、ZOOMで対談する形式で、視聴者は200人以上いたようです。私はTV番組を見るような感覚でお二人の話を聴いていました。90分があっという間でした。面白かったです。
質問も随時できるようになっていて、チャットボックスも使えました。質問には、最終的に30くらい質問が書き込まれていましたが、質問というよりも、見ている人の感想や、意見も書き込まれていて、チャットボックスと質問の使い分けって、どうなんだろうと思ったり。
ニコ生やYouTubeライブを見るタイプの人だと、かなりチャットボックスに雑多に何でも書き込むイメージがあるのですが、今回は、もっと堅い感じでした。視聴者層が違うのでしょうね。
ほんとうに関心を寄せる
沖縄の問題を話すんだろうな、と当然のように思っていたら、最初に柿内さんが、樋口さんの視点は、沖縄に留まらず、日本全体、さらに人類全体にまで広がっているんですよね、とおっしゃったので、あら?これは?と急に真剣に聴く気持ちになりました。
樋口さんは、投資家、経営者としてご自身が経験されたことを消化して、そのうえに、教育者の視点から、現在なんらかの問題を抱えている人が、そこから抜け出す糸口をつかめる手助けをしようとされています。
彼が実践していることは、個々人の関心に関心を寄せることで、その本質を端的に表すものとして、加藤周一の一文を引用されました。一人一人異なる人間は、最も特殊であり、その一人にしっかりと向き合うことは、結局のところ、全体の大きな世界に通じているのだ、といいます。
最も特殊な世界は最も普遍的な世界に通じる
「日本の庭」加藤周一(著)
個々人の関心に、リアルに関心を寄せることについては、柿内さんの例え話も印象に残りました。持っている土地に家を建てようと考え、建築家に相談したら、その建築家ができることを色々提案されて、「ああ、この人は私の思いには関心がなくて、土地に関心があるだけなんだ」と失望をされたそうです。
でも、私たちは多かれ少なかれ、こんなふうに、他人の関心に対して、本当に関心を寄せることが難しくて少しずつ他人を傷つけているんだけど、それに自覚的になれないという問題があります。
逆に、本当に関心を持ってくれる人に、非常に力づけられる例も説得力がありました。柿内さんは中学生の頃、イヤな奴がいて、学校に行きたくないと兄に伝えたら、お前をいじめる奴がいるなら、俺が殴って話をつけてやる、と真剣に言ってくれて、エンパワーされた、兄は忘れていると思うが自分は絶対に忘れない、と。
個人の幸福をいかに上げるか
樋口さんは、とにかく何が問題なのか本人が分かっていなかったら、解決のしようがない、だから話を聴いて、無意識に潜んでいるものを可視化していく、とサラリとおっしゃっていました。
私自身のことを考えてみても、何だか訳が分からない無気力にとらわれている状態から抜け出すことができたのは、逃げずに自己分析してみようとしたところがスタート地点だったように思います。
「幸福」についてのお話も、示唆に富むものでした。
「幸福感」を味わえるものは、たくさんある。でも、それを消費したら、一瞬気分が良くなるけれど「幸福」にはなれない。「幸福感」は麻薬のようなもの。美味しいものを食べたり、スポーツ観戦したり、ゲームをしたり、映画をみたり、社会は、さまざまな「幸福感」を与えてくれる。でも、それだけでは、本当の幸福には届かない。
本当の幸福は、一人一人が自分自身を好きになれるような自己肯定感を育むことで得られ、個々人が幸福になることで、社会全体が幸福になり、さまざまな問題が解決できる、というのが樋口さんのご意見でした。
お話を伺って、樋口さんは実践する哲学者だなと感じました。あと、預言者っぽい感じもする。私は仏教徒ですが、以前、聖書について少し勉強したことがあります。人びとを救う役割を神から与えられる人を預言者と呼び、それは自らなろうと思ってなれるものではなく、(神から)選ばれてやらざるを得なくなるものだ、と聞いたのですが、まさに、そんな感じ。ある意味で、苦行なのですよね。。。
これから、樋口さんの本を読むのが楽しみです。読み終わったら、改めて感想を書きます。
関連・参考書籍
「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」樋口 耕太郎 (著) (光文社新書)
ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
フレデリック・ラルー (著), 嘉村賢州 (著), 鈴木立哉 (翻訳)