Trial&Error読書感想

「反知性主義」第2章 信仰復興運動 原点はイエスの言葉

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今回は、第2章「信仰復興運動 反知性主義の原点」について、気になったところと学習ノートを備忘記録として残しておきます。(9月の読書会までに、この本を読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」(新潮選書)
森本 あんり (著)

第2章では、「信仰復興運動」とは何か、これが、どのようにアメリカ社会を形作っていったのかについて解説されています。マーク・トウェインの「トム・ソーヤの冒険」がまさにこの時代の様子を描いたものだという紹介もあり、再読したくなりました。

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周期的な熱病

信仰復興(リバイバル)は、何度もアメリカの歴史に登場し、以下(表1)のような運動に影響を与えました。信仰を復興することが「平等主義」の理念を実現することに繋がるからです。

もともとは、プロテスタント信仰のなかで精神的な領域に限られていたものが、実社会への平等を求める運動に拡張していくのですが、著者は、この「平等主義」が「反知性主義」を理解する重要なキーワードだと言います。

時代影響を与えた運動時代背景
18世紀独立革命【商業化と消費革命の時代】
1734年 マサチューセッツで集団ヒステリー(信仰復興の出来事)
1741年 エドワーズの有名な説教「怒れる神の手の内にある罪人」
①1700~1740年で植民地の人口260%増(25万→90万)
②大衆メディアの発達(40年間で12の定期刊行物が発刊、流通)
19世紀奴隷制廃止、女性の権利拡張
20世紀公民権運動、消費者運動1950年代「反知性主義」という言葉が誕生
表1. リバイバルは「平等」理念を呼び覚ますので、こうした運動の原動力になる

無資格の伝道師たち

信仰復興(リバイバル)運動を担っていたのは、さまざまな伝道師たち。教会の牧師たちが、教会で説教を行うのに対して、資格を持たない伝道師、説教者(リバイバリスト)たちは、戸外のオープンスペースで、圧倒的な演技力で聴衆を魅了していきます。

この部分も、著者は非常に分かりやすく解説してくれていて、思わず笑ってしまいました。

われわれがゆっくりとその歴史を追いかけている反知性主義の原点とは、要するにひとことで言うと、このぴちぴちとしたコーラスダンサーが振りまく魅力であり、その若い娘たちに見とれている亭主の心持ちなのである。

(第2章「信仰復興運動 反知性主義の原点」「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」森本 あんり (著) )

ちゃんとした知的節度を持った説教師もいれば、詐欺師(con man)も多かったのは、巡回伝道者になるのに、特別な資格がいらないからです。

a ~ (= a confidence man, a con artist) 信用詐欺師, 詐欺師, 取り込み詐欺師, パクり屋, ペテン師

“con man, conman”, ビジネス技術実用英語大辞典V6, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-08-29)

どんな資格があって、説教をしているのか、と問われたら、聖書の一節を披露すれば、相手は文句が言えなくなってしまうのです。まるで水戸黄門の印籠みたい。。。

そのとき、イエスはこう言われた。「天地の主である父よ、あなたをほめたたえます。これらのことを知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しになりました」

新訳聖書 マタイによる福音書 11章25節 (新共同訳)

イエスは、当時の学問と宗教の権威者の在り方を批判し、神の前では万人が平等であることを示したのですが、ここで重要なのは、知性そのものに反対しているわけではない、という点です。

このあたりは、ちょっと危険な匂いがしてきますよね。学問や権威を軽くみる風潮は、知性軽視にもつながっているのではないかと思います。詐欺師の口車に騙されないためには、どうしたらいいんだろうなぁ。。。

エヴァンジェリカル(福音主義)

以前、英文ニュースを読む会でニューヨークタイムズの記事を読んだとき、初めて福音主義のことを知ったのですが、この記述を読んで、もう少し理解が深まりました。これも、けっこう重要なキーワードだと思います。

アメリカのキリスト教は、教派ごとの教理や聖職者の行う儀式を中心としたものではなく、信徒各人が直接に経験できる回心と新生を中心とした実践的な性格をもっている。このようなアメリカ型キリスト教の形態を「エヴァンジェリカル」(福音主義)という言葉で表すが、それは教派を超えたキリスト教の最大公約数的な生活実感を代弁する概念である。

(第2章「信仰復興運動 反知性主義の原点」「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」森本 あんり (著) )

英文ニュースを読む会で、参加者の人が共有してくれた話が思い出されます。アメリカ留学中に友人に、誘われてキリスト教の集会にいったら、コンサートみたいな熱狂で驚いた、興奮して失神する人もいて、信者でない自分は、ちょっと異常な雰囲気に感じた、という話でした。

まさに18世紀からの伝統が21世紀の現在にも受け継がれているんですね。

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アメリカの反知性主義
知識人とは何か、知識人は民主主義の実現に貢献する力になれるのかと問いつづけ、アメリカの知的伝統とは何かを問う、感動のノンフィクションであり、アメリカ史の古典。 1952年、マッカーシー旋風の吹き荒れるなかで行なわれた大統領選挙は、「知性」と...
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