歴史と哲学が現代テクノロジーの最先端と繋がっていることが実感できた瞬間に、ぞわぞわっと鳥肌が立った。メガベンチャー企業パランティア・テクノロジーを最近知った。
同社は「ゴッサム」というソフトウェアで非構造化データ(メール、文書、画像、音声、動画など)を、これまでに比べて簡単に膨大なデータを統合・分析できることが最大の強味。CIA、FBIも同企業の技術を重用していることから、民間企業からの引き合いも増えたのだとか。
これだけの情報だと私の場合は通常「へぇ、そうなんだ」で終わるところ、 CEOであるアレックス・カープの経歴を読んで、がぜん興味が沸いた。「フランクフルト大学でユルゲン・ハーバーマス教授に師事し哲学の博士号を取得」 とある。
まず最初に目ん玉が飛び出そうになったのは、ちょっとズレるけれども、「ええっ?ユルゲン・ハーバーマスって生きてるの?」というところ。 (ウィキペディアで年齢を確認したら1929年生まれで現在90歳) それで、なんで彼から哲学を学んでシリコンバレーで情報解析のソフト開発?気になって仕方なくて、いろいろ検索してしまった。
私がユルゲン・ハーバーマスの名前に驚いた理由は、佐藤優さんが彼の著書でその著作や思想に触れており、気になっていたからだ。 同じ本のなかで、佐藤さんがヘーゲルの「精神現象学」が超面白いと書かれていたので、なぜかハーバーマスもすっかり19世紀の哲学者だと勘違いしていたのだ。思い込みは怖い。
ハーバーマスはフランクフルト学派の第二世代にあたる哲学者とのことで、マルクス主義、ヘーゲル弁証法、フロイト精神分析学の影響を受けている。以前の私だったら「???」だったはずだが、佐藤優やユヴァル・ノア・ハラリの著作を読み、少しだけ知識が増えたので、現代の出来事やニュースについて、少しだけ深く考えられるようになったのだと思う。
今年1月に「世界十五大哲学」を読んだが、そのときは「哲学は机上の学問ではなくて、リアルな実践が伴ってこそだよな?日本の哲学って途中からそこがおかしくなっちゃってるんだよ」という著者の主張に対して、「ふーん?そうなんだ?」くらいの受け止め方で全然リアリティがなかった。
それが、なんか、いま、ウィキペディアでハーバーマスの思想とかを読んだらちょっと分かる気がするので驚いた。 絶対にまちがいなく単なる勘違いだと思う。それでも分かった気になれるだけでも、すごくうれしくてドキドキする。夜空で星座が見えた瞬間みたいな感じ。
ビッグデータは近未来において、どのような取り扱いをするかで毒にも薬にもなるはず。私たちの未来において、企業が科学的な技術の進歩と営利ばかりを追求した場合、恐ろしい結果につながることを危惧する。哲学的な視点と知識を持ったCEOが、どのような理念を持ってパランティアを運営し、アメリカと世界にどのような未来をもたらすのかなと思う。