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人はなぜ踊るのか(神曲 天国篇 第二十五歌)

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ふとした気づき
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現在、ダンテの「神曲 天国篇」を読んでいます。今回は第二十五歌を読んで、気になった一文を深読みしてみます。

踊る聖人たち

第二十五歌でダンテは聖ヤコブの試問を受けることになります。その問いとは「希望とは何か」というもの。上手に答えられたダンテを祝福するように、二人の聖人が踊る、という場面です。

その輝く光が、自分たちの激しい愛にふさわしい
歌声にあわせて輪になって踊る二人(*聖ピエトロと聖ヤコブ)に
加わるのが見えた。
そしてそこで歌にあわせて踊りはじめた。

神曲 天国篇 (河出文庫) ダンテ・アリギエーリ (著), 平川祐弘 (翻訳) 形式: Kindle版  <第二十五歌 106-109節> *脚注から追加

人間は踊る動物です。踊る人はその行為によって肉体と精神に影響を受け、ダンスを見る人も一体感や高揚感を味わいます。動物も音に合わせてリズムをとることが観察されていますが[2]、その目的は明らかになっていません。人間はなぜ踊るのでしょうか。なぜキリスト教の礼拝ではダンスが禁じられたのでしょうか。現代人にとって踊りの意味とは何なのでしょうか。

踊りの起源

ダンスの起源は祈りでした。古来その目的は、安産・多産、狩猟の成功、疾病平癒、シャーマニズムのトランス状態を達成することなどであり、土着の神話や信仰と深く結びつき、世界各地に存在していました。

初期のキリスト教では、そのような異教の踊りをキリスト教の礼拝に取り入れようとした教父も存在し(カエサリアの聖バジル(329-379)) [1] 、ダンテが天国篇で描いたように、踊りを天使の最も高貴な活動とみなす考えもあったのです。

禁止される踊り

ところが、一部のキリスト教宣教師たちにはそのような踊りの民族的な意味は理解することができませんでした。性的な要素を排除しようとする禁欲的な姿勢、キリスト教以外の神話の神々を信仰することは、悪魔的だとみなす考えによるものです。

キリスト教による統一支配を強化する目的から、聖アウグスティヌス(354-430)はダンスを行うことについて厳しく反対し、9世紀初頭の神聖ローマ皇帝カール大帝(747?-814)は、あらゆる種類の踊りを公式に禁止しました。[1]彼らは非常に大きな影響力を持っていたにも関わらず、教会での踊りは何世紀も途絶えることはありませんでした。

カモフラージュされる踊り

なぜならば、民衆は宗教的な儀式の一環として踊ることに慣れており、権力者が抑圧したとしても、その踊りは名前や目的をカモフラージュして継続されたからです。このことにより、神聖なものであった踊りは、社交ダンスや見世物の踊りへと世俗化されていきます。

現代人と踊り

私にとって踊りとは何でしょうか。自分が踊る時には、身体と精神が繋がったと感じる瞬間に達成感を感じ、他者の踊りを見る時には、生命感や言葉にできない感情などの強いエネルギーを感じるものです。

そこには特定の信仰や祈りの要素が含まれていないにも関わらず、どちらの場合も、生を肯定する力を得られます。これは私個人の感覚に過ぎません。しかし、現存するさまざまな踊りを現代人が求める理由のひとつかもしれませんよね。

原文を自動翻訳

ちなみにイタリア語と英語を自動翻訳してみました。Google翻訳とDeepL無料翻訳を使いました。

106 così vid’ io lo schiarato splendore
107 venire a’ due che si volgieno a nota
108 qual conveniesi al loro ardente amore.
109 Misesi lì nel canto e ne la rota;

Poem (Petrocchi Edition) <第二十五歌 106-109節>

だから私は明るくなった素晴らしさを見ました
注意するようになる2人が来る
私は彼らの熱烈な愛に一致しました。
私はそこに自分自身を歌とローターに入れました。(Google翻訳 伊→日)

このようにして、私は明るい輝きを見ました。
二人のところに来て、自分のことをメモしています。
二人の熱烈な愛にふさわしい。
歌の中にも、車輪の中にも、そこに置いた。(DeepL無料翻訳  伊→日 )

so did I see that splendor, brightening,
approach those two flames dancing in a ring
to music suited to their burning love.
And there it joined the singing and the circling,

Allen Mandelbaum Translation <第二十五歌 106-109節>

だから私はその素晴らしさ、輝き、
リングで踊る2つの炎に近づく
彼らの燃える愛にふさわしい音楽に。
そしてそこでそれは歌と旋回に加わりました、 (Google翻訳 英→日)

その輝きを見たのは、明るい時間だった。
二人の炎が輪になって踊っているところに近づいて
二人の燃えるような愛にふさわしい音楽に合わせて
そして、そこでは歌と輪に加わっていました。( DeepL無料翻訳  英→日 )

参考

[1]Christianity and the Middle Ages ブリタニカ国際大百科事典

[2]踊る動物に音楽誕生の謎を探る(2014.02.24 National Geographic)

神曲:… この彼岸の世界への旅は1300年4月8日からほぼ1週間にわたって続くが、読者は主人公のダンテとともに3人の導者たちに連れられて三界を遍歴しながら、しだいに魂の浄化を遂げてゆき、その意味ではカトリシズムによる一大教化の書といってよい。しかしながら、作品の随所に、教皇を含めて聖職者たちへの熾烈 (しれつ) な糾弾が語られ、単なるキリスト教の喧伝 (けんでん) の書ではなく、政治的には教皇庁と鋭く対立する亡命者ダンテの政策が掲げられ、詩人の悲願であるローマ帝国の再建とイタリア半島の政治的統一、アラブ世界を経由した科学思想、また前衛的な詩法、神学、社会批判等々、中世ラテン文化の総決算の書となっている。

“神曲”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-08-29)

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