読書感想ふりかえりTrial&Error

ニューロマンサー(1984)

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読書感想
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「ニューロマンサー」を読み終えたので備忘記録を残しておきます。この作品は、Sprawl Trilogy(スプロール三部作)の第一作目です。映画マトリックスは、この作品から生まれたと言われるだけあって、読んでいると映画の場面を思い起こす人もいるでしょうね。

ジョージ・オーウェル「1984」ハクスリー「素晴らしい新世界」とともに、私たちにディストピアな近未来を覗き見させてくれる作品ですが、読後感が意外なほど爽やかでびっくりしました。最初から絶望感が漂っているし、痛々しい場面も盛りだくさんだから、もっと救いがないような結末を予測していたのですが、後半から青春小説っぽくなって、少しご都合主義な感じがしなくもない。

とはいえ、どこへ連れていかれるのか全く分からないジェットコースターに乗って、上だか下だかも分からないところを主人公ケイスと一緒に飛び回る体験は、これまで味わったことがない感覚でした。ケイスは超人的な能力を持っているけど、人間味があって、なぜか男からも女からも、困ったときに助けてもらえる設定になっていたから、私達読者はギリギリのところで、ジェットコースターから振り落とされないっていうのも良かったかも。

このSF小説の世界では、AIが人間を凌駕して、人間を操る世界において、人間の欲望は限りなく暴走しています。それは、私からみれば、かなり気持ちが悪い世界で、狂気に冒されながらも生き続ける選択をし続けた老人だったり、身体のパーツを交換して麻薬の快楽に溺れる若者だったり、殺人能力を高めるための人体改造をしている女性がいたり、など、本当になんでもありな感じなんですよね。

でも、そういう世界で、人間として生きることの意味ってどんなものだろう。身体のパーツを極限まで交換しても、それは人間と呼べるのだろうか。私達の子孫は、リアルな肉体と電脳空間をケイスのように自在に動き回るようになっているのかもしれないな。

1.Neuromancer(1984)
2.CountZero(1986)
3.Mona Lisa Overdrive(1988)

「ニューロマンサー」 (ハヤカワ文庫SF) ウィリアム ギブスン (著), 黒丸 尚 (翻訳)  

作品について

Case was the sharpest data-thief in the matrix—until he crossed the wrong people and they crippled his nervous system, banishing him from cyberspace. Now a mysterious new employer has recruited him for a last-chance run at an unthinkably powerful artificial intelligence. With a dead man riding shotgun and Molly, a mirror-eyed street-samurai, to watch his back, Case is ready for the adventure that upped the ante on an entire genre of fiction.

Neuromancer was the first fully-realized glimpse of humankind’s digital future—a shocking vision that has challenged our assumptions about technology and ourselves, reinvented the way we speak and think, and forever altered the landscape of our imaginations. 

William Gibson公式サイト Neuromancer

著者について

William Gibson’s first novel, Neuromancer, won the Hugo Award, the Philip K. Dick Memorial Award, and the Nebula Award in 1984. He is also the New York Times bestselling author of Count Zero, Mona Lisa Overdrive, Burning Chrome, Virtual Light, Idoru, All Tomorrow’s Parties, Pattern Recognition, Spook Country, Zero History, Distrust That Particular Flavor, and The Peripheral. He lives in Vancouver, British Columbia, with his wife. ウィリアムギブソンの最初の小説であるニューロマンサーは、1984年にヒューゴー賞、フィリップKディック記念賞、ネビュラ賞を受賞。また以下の作品においてニューヨークタイムズのベストセラー作家。カウントゼロ、モナリザ・オーヴァドライヴ、クローム襲撃、Virtual Light, Idoru, All Tomorrow’s Parties, Pattern Recognition, Spook Country, Zero History, Distrust That Particular Flavor, and The Peripheral。 妻とともにブリティッシュコロンビア州バンクーバー在住。

William Gibson公式サイト ABOUT THE AUTHOR

参考

コンピュータ・ソフトやコンピュータ・ネットワークのように多数の人が利用できる仮想的データ空間のこと。サイバースペースともいう。1984年にアメリカのSF作家ギブソンWilliam Gibson(1948― )が著作『ニューロマンサー』で初めて使用したことばである。「cybernetics(サイバネティックス、人工頭脳学)」と「space(空間)」の合成語で、翻訳家の黒丸尚 (くろまひさし) (1951―1993)によって「電脳空間」と訳された。同作品中では、肉体を伴った現実世界とは異なる位相をもった、生死を超越した世界として描かれ、技術的進化を遂げた未来の世界のあり方を暗示する概念であった。

“サイバー空間”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-08-06)

松岡正剛の千夜千冊0062夜ニューロマンサー

William Gibson公式サイト

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