第115回読書会では、こちらの本を共有する予定です。第三部「近代世界システム」第三章「ネーション」から共有します。
この章は、難しかったです。ネーション(nation)とは何かという説明なんです。ネーションって、日本語だと国家と訳されてしまうから、よけいに頭がこんがらがっちゃうけど、この本の中では異なるものになっているので、そこを押さえておかないと、迷子になってしまいます。
簡単にいえば、ネーションとは、社会構造体の中で、資本=国家の支配の下で解体されつつあった共同体あるいは交換様式Aを、想像的に回復するかたちであらわれたものである。
(第三部「近代世界システム」第三章「ネーション」1.ネーションの形成 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著))
交換様式Aというのは、古代人のような氏族社会で行われていた「贈与と返礼」という様式を指します。
ネーションは、資本=国家が成立してからあらわれるものであり、主権国家(交換様式B)と産業資本主義(交換様式C)を統合することで成立するらしいんですね。
ネーションとは、商品交換の経済によって解体されていった共同体の「想像的」な回復にほかならない。ネーションは、いわば、資本=国家に欠けていた「感情」をそこに吹き込んだのである
(第三部「近代世界システム」第三章「ネーション」2.共同体の代補 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著))
この感情っていうのも、キーワードです。感情は、18世紀に学術的に本格的に分析されるようになり、理性を超える能力があるという主張する議論が活発化しました。
私たちは、自分で考えていることと、現実が異なっていることを知っています。例えば資本主義社会では誰でも平等だと考えられているけれども、現実には不平等であることなどです。
作者は分かりやすく、このような分裂を想像力によって越えようとするときに、文学作品がうまれるのだと説明し、それと同様に、ネーションも「想像的」な共同体である、と続けます。
ネーションは、資本=国家がもたらす矛盾を想像的に解決することによって、それが破綻することを防いでいる
(第三部「近代世界システム」第三章「ネーション」5.国家の美学化 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著))
思考を次に進めるためには、ネーションが想像的なものである、それが現代資本主義社会のセーフティロックになってることを理解しておく必要があるようです。
今日も読んでくださってありがとうございます。
明日もどうぞよろしくお願いします。
世界史の構造のもくじ
序説 交換様式論
第一部 ミニ経済システム
1-序論 氏族社会への移行
1-第一章 定住革命
1-第二章 贈与と呪術
第二部 世界=帝国
2-序論 国家の起源
2-第一章 国家
2-第二章 世界貨幣
2-第三章 世界帝国
2-第四章 普遍宗教
第三部 近代世界システム
3-序論 世界=帝国と世界=経済
3-第一章 近代国家
3-第二章 産業資本
3-第三章 ネーション ←いまここ
3-第四章 アソシエーショニズム
第四部 現在と未来
4-第一章 世界資本主義の段階と反復
4-第二章 世界共和国へ
参加者(2名)
- もんざ (主催者) 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著)
- にしやまさん 「定年前、しなくていい5つのこと」大江英樹(著)光文社