この記事が面白かったので共有します。(日本語の記事ですが、英語でも読めるようになっているのがすばらしい。英会話の先生と共有してディスカッションする教材に使えそう)
長寿社会のリアル~迫る「老老医療」の危機(Nikkei Asian Review)(日本語)
Impending crisis of aging doctors treating aging patients
How IT can help aging health care workers(Nikkei Asian Review)(英語)
首都圏だけでなく、日本全国の医療者数と診療時間の現状を分析して、2026年の未来を予測しています。そこから、浮かび上がった課題と、それをどのように解決すべきかの方向性も示されており、読みごたえがありました。
オンライン診療の拡充
日本の医療制度は、非常に優れているため、ほぼ全ての国民が等しく医療を受けられ、死亡率が低下し、日本人の平均寿命は長くなり、長寿で健康になりました。
しかし出生率が低下し若年人口減少が続き、高齢化が始まり、経済が停滞し始めた現在では、半世紀以上前に作り上げたしくみを見直して、変化させていかなければ、ギリギリのところでバランスを保っている医療供給体制が崩壊しかねません。
結論としては、オンライン診療の拡充と、医師に限定されていた医療行為を看護師が対応できるようにすることが提言されています。英語圏であれば、他国から医師や看護師に働きにきてもらうことも可能なのでしょうが、日本の場合は、それが簡単にできないのが厳しいところです。(世界中にいるであろう日本で働きたいという優秀な若者を誘致できれば…)
(以前、日本のオンライン診療について少しだけ調べたことがあります)
構造的な問題がある
この記事の慧眼は、政府は将来的に医師が増える見込みとしているところを、年代でみると若年層は増えていないことを示し、政府試算の甘さを指摘している点ですね。
中長期的な視点で考えると、日本の若年人口減少は不可避なので、医療に限らず様々な場面で同様の問題が発生すると予測できます。
少子化、高齢化、過疎化問題の根っこはひとつに繋がっているんですけど、その解決策を実施することが難しいのは、日本的な多数決主義と政治のしくみせいでしょうね。
- ・世襲的な政治家(票が欲しいから地元の有力者に逆らえない)
- ・高齢者(一般的に変化を好まず現状維持バイアスが強い)
- ・有力者/金持ち(自分の既得権益を守りたい)
- ・若者(どんどん数が減る。社会的な発言力、地位が低い)
これは日本だけの問題じゃなくて、ほかの先進国でも同じ問題がある気がします。
やるべきことは見えているんだけど、負のループに陥っているから、どこかで鎖を断ち切らないと、ここから抜け出せないんです。
無自覚に封建的
え?何をやるべきかって?
世襲政治を禁じて、男女の政治家比率を同等にし、いかに男性高齢者の政治家を合法的に減らし、政治に、数が多く既に利権を持っている人たちの意見だけが反映されるのではなく、より多様な国民の意見が反映されるしくみを作ることに注力すべきでしょう。
たぶん政治だけじゃなくて、官僚制度も似たような構造を持っているし、日本の社会全体が、無自覚に封建的なんですよね。
この無自覚に、ってところが問題の根っこを深くしていて、ますます鎖を断ち切りづらくしています。
先日読んだ「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」という本で、大人たちが既得権益にしがみついて変化を嫌うことが、次世代を担う若者の生きる意欲を奪い、結果的に社会全体をじわじわと劣化させていくのかを学びました。(この本を読んだ感想はこちら)
6年後の日本の医療は、日経が予測した未来になっているか、あるいは、今回のパンデミックの経験を活かして、改革が進み、オンライン診療が日常的になり、看護師の医療権限が拡充されているのでしょうか。