読書感想8. Trial&Error

「貨幣発行自由化論」第18章 不況の原因は?

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読書感想
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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第18章「金融政策はもはや不要且つ成立しない」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

この章では、中央銀行は劣化してるし、ハイエクの理論に従って貨幣発行が自由化されたら、不要になりますよ、という内容が語られています。

金融政策が不況の原因

ケインズの理論に従うと、国家が金融政策を行うことは当然のことなのですが、実際のところ、それがあんまりうまく行ってない状況なんですよね。でも、私たちは、社会のしくみとして、中央銀行が金融政策を行うことが当然だと思い込んじゃっているわけです。

イギリスの経済学者ケインズは、第一次世界大戦後の不況と失業をみて、従来の経済学が失業のない状態を前提としていることを批判するとともに、伝統的な自由放任政策から転換することを主張し、政府が積極的に経済に介入し、景気の回復や完全雇用を実現するよう説いた。

「理解しやすい政治・経済 新課程版」松本 保美 (監修) 文英堂

金融政策は不況を解決するどころか引き起こしている可能性が高いのであり、このことをよく理解しなければならない。なぜ不況を引き起こすのかと言えば、金融緩和を求める声に屈してしまうほうが容易だからである。

第18章「金融政策はもはや不要且つ成立しない」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

ハイエクは、ケインズのように政府(中央銀行)の力を過信しません。非常に冷静に、権力者の行動を指摘します。

とくに、以下の部分を読んだときには、ハイエクさんはホントに良く分かってるなぁと思いました。現代社会の情勢をみても、権力者たちは、自分たちにとって都合の悪い記録を処分したり、自分たちにとって都合の良いように、法やしくみを変えようとしていて、油断がなりません。

政府というものは、特定の団体や集団に便宜を図る権限を手にすると、それを使わざるを得ない。というのも多数決の原理に囚われ、多数の指示を確保することを優先させるからだ。

第18章「金融政策はもはや不要且つ成立しない」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

もしも仮に、何が全体の利益になるかを分かっていたとしても、多数に反対されたら政府は行動できません。世界経済に多大な影響を及ぼす貨幣発行については、政府を信頼するのではなく、競争通貨制度にしたほうが、うまくいくとハイエクは考えているのです。

供給過剰を称賛する無知な人々

ダニエル・カーネマンが著書「ファスト&スロー」で示したように、複雑なしくみについて考えることを、人は本能的に拒否します。人間の脳は基本的にナマケモノで、ラクをしたがるのため、放っておくと、目先の利益だけしか考えず、簡単に現状を容認します。そのほうがラクだから。

権力を持っている人たちは、もちろん大多数の民衆のそのような傾向を熟知していて、難しいことは自分たちに任せておいてくれたら、すべてうまくやってのけますよ、心配ご無用です、お任せください、と甘い言葉をささやくわけです。

彼らがなぜそう言うのか?そこに莫大な利益があるからです。

この犯罪行為(注:貨幣の供給過剰のこと)は、独占的な貨幣発行機関とくに政府がやってのける場合には、ひどく儲けが大きい。その結果がどうなるかがよく理解されていないため、この行為は広く容認され、罰されずに終わっている。(中略)独占発行機関による貨幣の供給過剰という犯罪は、人々の知識不足のために、いまだに放置されるどころか称賛されている。(中略)この方面で功績を上げようとする政治家は、一段と望ましくない結果を招くことになりがちだ。まして大組織の意向に従わざるを得ない人は、必ずそうなる。

第18章「金融政策はもはや不要且つ成立しない」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

このような、組織に属する人間の心理的な要因も含めて、中央銀行や政府が信用ならないというのは、さまざまな要因が複雑に絡み合った市場において、ひとつの組織が変化を予測することなど不可能だからです。

自然の生態系のしくみを人間が人為的にいじくりまわすと歪みがでるように、経済という生態系は、自由市場における競争によって、よりよく機能するはずだから、みんな目を覚ましてくれ、と著者は言いたいのでしょう。

次の第19章「固定相場制より望ましい規律」では、再び、政府が信用ならない理由について、熱く語られています。


貨幣発行自由化論  改訂版ーー競争通貨の理論と実行に関する分析 [ フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) ]

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