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文明の進歩と繁栄は個人の幸福に直結しない

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10月の純文学読書会では「サピエンス全史」を取り上げました。
参加者から「純文学じゃないでしょ!」という突っ込みが入るかと思いきや、意外と皆様すんなりと受け止めてくださり、無事に6名で開催することができました。ありがとうございます。

これまで何度も読書会を開催してきましたが、今回は特に私の記憶に残る、記念すべき回になりましたよ。
理由は、3つあります。

1.小さな変更にチャレンジしてみた(いつもとは違う会場を使ってみた)
2.別の読書会からアイデアをもらった(付せんを配り、各自の意見をまとめる時間を確保)
3.参加者ひとり一人の意見を引き出すことを強く意識した(ホワイトボードに書いて可視化)

本当に面白い本なので、他の人がどの部分を面白いと感じたのかも、とても知りたかったんですよね。
参加者の皆さんには、上巻と下巻でそれぞれ3ヶ所づつ印象に残った所を説明していただきました。

上巻では5章「農耕がもたらした繁栄と悲劇」を取り上げた方が、私も含めて5名おり、これまでの知識や思い込みが覆されたという意見が出ました。

下巻は、14章「無知の発見と近代科学の成立」を取り上げた方が2名いました。これまで知識はあったが納得できなかったこと(なぜルネサンス時代の人たちがギリシア時代を理想としていたのか、など)が理由が分かってすっきりしたというご意見でした。現在の私たちが常識だと考えていることも、場所や時代が違えば全く異なるのだ、という当たり前のことを、著者が非常に分かりやすく読みやすく例を見せてくれるので、「なるほどねー」となるんだと思います。

19章「文明は人類を幸福にしたのか」この章は、全体のまとめに入ってくる部分ですが、2名の方がピックアップされていました。幸福度の認知に個人差がある話、著者が仏教を高く評価している様子がうかがえることなども、話が膨らみましたね。

いつも驚くのですが、読書会に参加してくださる皆さんって、しっかりとご自身の意見を持っている方が多いので、とても勉強になります。私はもう少し場を回す力をつける必要がありそうです。

最後に、私自身が印象に残ったところを上巻、下巻で3点づつ引用します。

■上巻
・5章「農耕がもたらした繁栄と悲劇」P.127引用「進化上の成功と個々の苦しみとのこの乖離は、私たちが農業革命から引き出しうる教訓のうちで最も重要かもしれない」
・8章「想像上のヒエラルキーと差別」P.200引用「今日明確に実証されているように、家父長制が生物学的事実ではなく根拠のない神話に基づいているのなら、この制度の普遍性と永続性を、いったいどうやって説明したらいいのだろうか?」
・11章「グローバル化を進める帝国のビジョン」P.242「全世界をその居住者全員の利益のために支配するという思い込みには驚かされる」

■下巻
・17章「産業の推進力」P.178「いったい誰がこれほど多くのものを買うのか?」P.181「富める者の至高の戒律は、「投資せよ!」であり、それ以外の人々の至高の戒律は「買え!」だ」
・19章「文明は人類を幸福にしたのか」P.218「地球全体の幸福度を評価するに際しては、上流階級やヨーロッパ人、あるいは男性の幸福のみを計測材料とするのは間違いだ。おそらく、人間の幸せだけを考慮することもまた誤りだろう」
・あとがきP.265「私たちはかつてなかったほど強力だが、それほどの力を何に使えばいいのかは、ほとんど見当もつかない」

「この世界はどうなっているんだろう?何か変だよね?私たちは、どうすればいいんだろう?」たぶん多くの人が、同様の質問を心に抱えている気がするんですよね。この本が2011年に出版されてから6年の間に45言語に翻訳され、多くの読者を獲得できていることから推察しました。

ちょっと時間を作って、ここのレビューも読みたいです。
Sapiens: A Brief History of Humankind by Yuval Noah HarariRating details:4.43/5.00 ·82,954 Ratings ·7,803 Reviews

この質問にハラリ教授が、回答してくれるわけじゃなく、考えるヒントをくれるだけ、なんですけどね。
個人的には「文明の進歩と繁栄は個人の幸福に直結しない」という歴史上の事実から、私は何を学び、どうやって折り合いを付けていくのか、これはずっと考え続けるべき課題を与えられちゃったな、という感じです。

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