ジャーナリストってすごいなと思ったもんざです。
もと朝日新聞記者の柴田直治氏が書いた岩波新書「ルポ フィリピンの民主主義」を読んでいるのですが、驚くことがたくさん書かれていて、政治の裏側や国民の状況は住んでいるだけじゃ分からない、ということを思い知らされました。
もちろん、書かれていることすべてが正しいとは限りません。
しかしネットで流れてくる誰が書いたかも分からないような怪しい情報よりは、知識や経験があり、ジャーナリズムを理解し、倫理観も持っているプロが書いたものは信頼感があります。
この本を英語やタガログ語に翻訳してフィリピン人にも広く読んでもらえたらいいのに、と思う反面、そうなったら柴田さんに命の危険があるかもなぁと思ったり。
他国のジャーナリストだからこそ、客観的に状況を分析して、政権などの利害に関係ないところで、事実関係を明らかにできる強みがあるんですね。
そしてフィリピンで命を張って、政府批判をしたがゆえに、消されているジャーナリストたちの存在に胸が痛みました。
進捗報告
今月みなさんと共有するのは、こちらです。
「向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?」 (シリーズ ケアをひらく) 白石正明・向谷地生良 (著) 医学書院 https://amzn.to/41yhnhB
今回も、第4章「知はいかにして真実の地位に就くのか?」から印象に残ったところを共有します。思いもかけず、ドストエフスキーが登場して、カラマーゾフの兄弟を思い出して驚きました。
引用「中核的な特徴とは、当事者研究が、当事者を含む複数の仲間たちとの共同の作業だということだ。「研究」の本態は、単一の意見に収束しない、複数人の会話の形態をとる。向谷地さんは、ミハイル・バフチンの「ポリフォニー」の概念を用いてこの共同研究の様相を表現している」
(7.言語行為以前の言語の基層の反復として/第4章「知はいかにして真実の地位に就くのか?」)
引用「「ポリフォニー」は、もちろん音楽からのアナロジーだが、バフチンは主にドストエフスキーの小説を分析するさいにこの概念を活用した。「それぞれに独立して互いに融け合うことのないあまたの声と意識、それぞれがれっきとした価値を持つ声たちによる真のポリフォニーこそが、ドストエフスキーの小説の本質的な特徴なのである」。当事者研究も同様だ。」
(7.言語行為以前の言語の基層の反復として/第4章「知はいかにして真実の地位に就くのか?」)
引用「それが<真実>として働くかどうかを分けるポイントは、「言われたこと」、つまり<知>の内容にあるわけではない。重要なのは、その<知>がどのようにしてもたらされたのか、である」
(7.言語行為以前の言語の基層の反復として/第4章「知はいかにして真実の地位に就くのか?」)
引用「ポリフォニックな声たちのあいだに、全体としてハーモニーが生まれたとしたらどうだろうか。すると、構成要素としてたくさんの音楽が含まれていたとしても、全体として<統一的な音>、<単一の声>のように聞こえるだろう」
(7.言語行為以前の言語の基層の反復として/第4章「知はいかにして真実の地位に就くのか?」)
例えばドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」は、多数のクセのある登場人物が登場しますが、全体としてのハーモニーは人間存在への肯定感だと私は思っています。(カラマーゾフは未完の小説ですが。。。)
一人でもなく、二人でもなく、複数の声によって、ハーモニーを生み出すという構造から、救いも見えてくるというのが、不思議で面白く感じました。
理解して記憶しておくべき、問題解決のフォーマットのひとつかもしれません。
今日も読んでくださってありがとうございます。また明日もよろしくお願いします。
参加者(2名)
- もんざ「向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?」 (シリーズ ケアをひらく) 白石正明・向谷地生良 (著) 医学書院 https://amzn.to/41yhnhB
- にしやまさん「サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠」(文藝春秋) ジリアン・テット (著), 土方 奈美 (翻訳) https://amzn.to/4kEz8TY
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共有予定の本
へぇー」がひらくアナザーワールド!!精神医療の常識を溶かし、対人支援の枠組みを更新しつづける「べてるの家」の向谷地生良氏。当事者がどんな話をしても彼は「へぇー」と興味津々だ。その「へぇー」こそがアナザーワールドの扉をひらく鍵だったのだ!大澤真幸氏の特別寄稿「〈知〉はいかにして〈真実〉の地位に就くのか?」は“良心的兵役拒否者”である向谷地氏に言語論から迫る必読論文。
「向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?」 (シリーズ ケアをひらく) 白石正明・向谷地生良 (著) 医学書院 https://amzn.to/41yhnhB
世界の金融システムがメルトダウンし、デジタル版ウォークマンの覇権をめぐる戦いでソニーがアップルに完敗し、ニューヨーク市役所が効率的に市民サービスを提供できない背景には、共通の原因がある。それは何か――。謎かけのようなこの問いに、文化人類学者という特異な経歴を持つ、FT紙きってのジャーナリストが挑む。
「サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠」 (文春文庫)ジリアン・テット (著), 土方 奈美 (翻訳) https://amzn.to/4kEz8TY
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