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各国の土地の所有権に対する考え方のちがい

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今月は、土地の所有者不明についての本を読んで勉強中です。各国の土地の所有権に対する考え方のちがいが面白かったので整理してみました。

「人口減少時代の土地問題」 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書) 吉原祥子  (著)  

フランス

原則的に絶対的所有権を認める(土地の使用、収益、処分は所有者個人の自由)→1950年以降は一定の制限が課され制度改正が進む

ドイツ

土地の所有権には義務が伴い、その行使には公共の福祉を念頭に置かなければならない(1919年制定ワイマール憲法から現行法に継承)

Weimar Verfassung 1919年に公布されたドイツ共和国憲法。第一次世界大戦後のドイツ革命によってドイツ帝政が崩壊したのち、普通・平等・比例選挙によって選ばれた国民議会が1919年7月31日に議決し、翌8月1日に公布された。このときの国民議会がワイマールで開かれたのでこの名がある。ワイマール憲法はビスマルク憲法と異なり、民主主義の原理のうえにたったドイツ国民の強い統一を指導理念とし、さらに社会国家的色彩をもつ憲法で、その後の世界の民主主義諸国に強い影響を与えた。

特色:国民主権主義に立脚し、普通・平等・直接・秘密・比例代表の原理に基づいた選挙による議院内閣制を採用しながら、同時に若干の直接民主制を認め、他方、19世紀的な自由主義に基づきながら、20世紀的社会国家の立場をとっている。所有権の義務性を認め、人間に値する生存(生存権)を保障しており、それらの点で20世紀民主主義憲法の典型とされる。この優れたワイマール憲法も1933年のヒトラー政権による「授権法」をはじめとする一連の立法によって形骸 (けいがい) 化され、事実上廃止された。

“ワイマール憲法”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-09-14)

イギリス

原則として全国土は国王に属する(所有権は利用権に近い)

アメリカ

英国の思想を継承しつつ絶対的所有権に近い権利も認められる。ただし公的権限が私的権利に優先することは憲法で規定

日本

土地の利用よりも所有が優先(高度成長期に土地神話が強化され、制度改正も進まず)

こうして,所有権の社会性は内外ともに承認されて今日に至っている。しかし,日本においては,所有権のなかでも土地所有権の絶対性の観念は根強く残っている。そのため,現代においては土地問題の解決の大きなネックとなっている。

“所有権”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-09-14)

考え方だけじゃない

日本の場合は、所有権の考え方だけが問題じゃないんですよね。その部分を腫れものに触るようにして、避けていたから改革が進まなかった、という経緯もあるようです。

こうした比較だけでも、日本では土地についての制度設計に課題の多いことがわかる。
土地の「所有者不明化」問題は、こうした制度上のさまざまな課題が絡まりあって生まれているともいえる。問題の根は深い。

(第4章 解決の糸口はあるのか――人口減少時代の土地のあり方 3.先進諸外国から遅れた現実――仏、独、韓国、台湾との比較) 「人口減少時代の土地問題」 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書) 吉原祥子  (著)  

不動産登記の効力要件についての部分も肝だと思うので、それはまた次回に整理して書こうと思います。

この本のもくじ

第1章 「誰の土地かわからない」――なぜいま土地問題なのか
1 空き家問題の根源――森林・農村から都市へ
2 なぜ管理を、権利を放置するのか
3 法の死角――あいまいな管轄、面倒な手続き
4 下落する土地の価値――少子・高齢化、相続の増加
第2章 日本全土への拡大――全国888自治体への調査は何を語るか
1 死亡者課税による“回避”――災害とは無関係の現実
2 相続未登記、相続放棄の増加――土地に対する意識の変化
3 行政の解決断念――費用対効果が見込めない
第3章 なぜ「所有者不明化」が起きるのか
1 地籍調査、不動産登記制度の限界
2 強い所有権と「土地神話」の呪縛――人口増時代の“遺物”
3 先進諸外国から遅れた現実――仏、独、韓国、台湾との比較 ←今ここ
第4章 解決の糸口はあるのか――人口減少時代の土地のあり方
1 相続時の拡大を防げるか――難しい法改正と義務化
2 土地希望者を探せるか――管理・権利の放置対策 
3 「過少利用」の見直しを――新しい土地継承のあり方

読書会の参加者と紹介予定の本

  1. もんざ (主催者) 「人口減少時代の土地問題」 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書) 吉原祥子  (著)  
  2. にしやまさん「1シート・マーケティング」三浦崇典  (著)  ポプラ社
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