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幸福な監視国家・中国/第3章 幸福と自由がトレードオフだとしたら?

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読書感想
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7月31日は第120回ZOOMで読書会です。私は、「幸福な監視国家・中国」 (NHK出版新書) 梶谷 懐 (著) 、 高口 康太 (著) を紹介する予定で読み進めています。今回は第3章から気になったところを共有しますね。

こんな社会になっちゃう可能性がある

ここはちょっと、中国に限定した話じゃないんだけど、現代社会に生きる私たちが考えるべきこと、として2人の学者さん(大屋氏、ライアン氏)の意見を取り上げて解説してくださっているため、読み応えとお得感がありました。(1冊で3冊読んだような気分)

1人目は、法哲学を専門とする大屋雄裕(おおやたけひろ)氏の意見です。現代ではテクノロジーの進歩により「幸福と自由のトレードオフ」が顕在化しているのだから、次世代のあり方を模索すべきだ、というものです。大屋氏は、可能性として3つの社会像を提示しています。(「自由か、さもなくば幸福か?二一世紀のあり得べき社会を問う」大屋雄裕著

  1. 新しい中世の新自由主義=弱肉強食、自己救済(初期の資本主義に戻る)
  2. 総督府功利主義のリベラリズム=個人が自由にふるまっても社会全体の幸福が自動的に実現する社会が構造的に作られている
  3. 万人の万人による監視(ハイパー・パノプティコン)=エリートも政府も全て監視されるものとして平等になり社会の同一性と安定性が保たれる

3つともイヤな感じだけど、そうならざるを得ないとなれば、3番目がまだマシなんじゃないか、というのが大屋氏の意見らしいです。こうやってみると、すでに1~3の混合になっているのが現代社会って感じがする。。。1は、女・子ども・老人やマイノリティにとっては、かなり息苦しい社会ですよね。

2人目はディヴィッド・ライアン氏。初めて知ったのですが監視社会論という学問があるらしく、ライアン氏は第一人者とのこと。彼も、監視社会は避けられないという意味で「リキッド・サーベイランス」という言葉を使っているのだとか。これは現代は監視の主体が多様化・流動化していてオーウェルが1984年で描いたような市民VSビッグブラザーの二項対立みたいにシンプルじゃなくなってるよ、という議論です。(「監視社会の誕生」デイヴィッド・ライアン著

たしかに、現実を直視して分析しなければ次の手は打てないです。そう考えると中国の事例は分析しがいがあるでしょうね。幸福と自由のトレードオフかぁ。どこまで許容できるかは、人によって様々でしょうね。

今日も読んでくださってありがとうございます。明日もどうぞよろしくお願いいたします。

({英}panopticon )中央の高い監視塔から監獄のすべての部分が見えるように造られた円形の刑務所施設。イギリスの思想家ベンサムの考案。ミシェル=フーコーが近代管理システムの起源として紹介したことで知られる。

“パノプティコン”, 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-07-22)

もくじと概略

この本の目次はこんな感じ。()は、「はじめに」で解説されていた各章の概略を私がまとめたもの。

  • はじめに
  • 第1章 中国はユートピアか、ディストピアか(私たちの社会と未来を考えるヒント)
  • 第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか(個人情報や評価のやり取りの持つ意味)
  • 第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」(「管理社会」「監視社会」を具体的に考える) ←いまココ
  • 第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか(ICTによって洗練された言論統制)
  • 第5章 現代中国における「公」と「私」(テクノロジーを通じた統治と市民社会)
  • 第6章 幸福な監視国家のゆくえ(社会秩序=公共性の実現が権威主義国家で進む意味)
  • 第7章 道具的合理性が暴走するとき(新疆ウイグル自治区で起きていること)
  • おわりに

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