第115回読書会では、こちらの本を共有する予定です。今回は、第三部「近代世界システム」第一章「近代国家」から面白いと思ったところを共有します。
この章は、主権国家がなぜ近代国家の原理になっていったのか、というお話なんです。
「主権国家」という概念は、もともとヨーロッパの中でだけ通用する特殊なものでした。
でもそれが、ヨーロッパ列強が経済的にも軍事的にも優位になったから、という理由だけで拡散したわけじゃない、と著者は説明します。
主権国家の観念が一般化したのは、彼らが非西洋諸国を支配したとき、主権国家の原理にもとづいてそうしたからである。第一に、主権国家という観念は、主権国家として認められない国ならば、支配されてもよいということを含意する。ヨーロッパの世界侵略・植民地支配を支えたのはこの考えである。ゆえに、そのような支配から脱するためには、諸国は自ら、主権国家であると主張し、それを西洋列強に承認させなければならない
(第三部「近代世界システム」第一章「近代国家」 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著))
これねぇ。支配されてもよいことを含意する、ってところを読んで、その論理の飛躍に思わず「えええ??」って声が出て、笑っちゃいました。
でも、これは現実に起こったことだし、弱者は常に強者の理論に右往左往させられるものだと気づいて怖くなりました。そして第二の理由を読んで、私はさらに考え込むことになります。
第二に、西洋列強は、オスマン、清朝、ムガールといった巨大な世界帝国には手が出せないので、それらの帝国の統治形態を非難し、あたかも帝国に従属している諸民族を解放し主権(民族自治権)を与えるかのようにふるまった
(第三部「近代世界システム」第一章「近代国家」 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著))
囲碁とか将棋みたいに、何手も先の相手の動きを読んでコマを進めて、自分にとって有利なポジションを作り出していく感じ。世界の歴史で様々な要素が絡み合って、変化が生まれて、それが現在に繋がっているのがとても良く分かります。ますます、続きを読むのが楽しみになってきました。
今日も読んでくださってありがとうございます。
明日もどうぞよろしくお願いします。
世界史の構造のもくじ
序説 交換様式論
第一部 ミニ経済システム
1-序論 氏族社会への移行
1-第一章 定住革命
1-第二章 贈与と呪術
第二部 世界=帝国
2-序論 国家の起源
2-第一章 国家
2-第二章 世界貨幣
2-第三章 世界帝国
2-第四章 普遍宗教
第三部 近代世界システム
3-序論 世界=帝国と世界=経済
3-第一章 近代国家 ←いまここ
3-第二章 産業資本
3-第三章 ネーション
3-第四章 アソシエーショニズム
第四部 現在と未来
4-第一章 世界資本主義の段階と反復
4-第二章 世界共和国へ
参加者(2名)
- もんざ (主催者) 「世界史の構造」 (岩波現代文庫) 柄谷 行人 (著)
- にしやまさん 「定年前、しなくていい5つのこと」大江英樹(著)光文社