12月のABD読書会の課題本（グレーバーの「ブルシット・ジョブ」）を読んでいます。9月末から読み始めたのですが、ようやく1章が読み終わるところ。
関連情報を調べていたときに、BSジョブっていう記述がでてきました。つまんない仕事のことを略して隠語にしてるみたい。日本語でも、最低とか、最悪、あるいは最高を意味する卑語として「クソ」を使いますから、こういう類似って面白いですね。（BSジョブは最低のほうですけど）
■「ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド・グレーバー (著), 酒井 隆史 (翻訳), 芳賀 達彦 (翻訳), 森田 和樹 (翻訳)
クソが最高にも最低にもなるって話
第1章は、ずーっと、どんな仕事を「クソ」と分類するか、という話を延々してます。実際に働いている人たち自身の赤裸々な実体験もたくさん。
けっこう面白かったのは、美容師はBSジョブじゃないよ、ってことを説明するために、1970年代にベストセラーになったSF小説を事例にしていたところ。グレーバーがBSジョブの話を持ち出すと、たいていの人が、「ああ、それって美容師のこと？」っていってきたらしいんですよね。
グレーバーは、その原因が大ヒットしたSF小説にあるんじゃないか、っていうわけ。あの小説は面白いと思うし、作者にケンカを売る気はないけど、当時の風潮（女性差別）が入っているから、その点がいただけない、ってことらしい。
I will be honest here. I have no particular bone to pick with Douglas Adams; in fact, I have a fondness for all manifestations of humorous British seventies sci-fi; but nonetheless, I find this particular fantasy alarmingly condescending.
Bullshit Jobs: A Theory (English Edition) David Graeber (著) 1.What is a bullshit job?
実は以下の部分を読んだとき、最初はピンとこなかったんですよね。最高級の贅沢品と、完全ながらくたの境界線は非常に曖昧だし、だから夢の中では、金が排泄物になったり、また逆に排泄物が金になったりするんだ、っていうところ。でも、日本語の卑語でも「クソ面白い」とか、最上級として使ったりすることに気づいたら、なんとなく感覚はつかめました。
We are speaking of overt displays of wastefulness and extravagance. Now, one could certainly make the argument that there’s a deep structural affinity between wasteful extravagance and bullshit, and theorists of economic psychology from Thorstein Veblen, to Sigmund Freud, to Georges Bataille have pointed out that at the very pinnacle of the wealth pyramid–think here of Donald Trump’s gilded elevators–there is a very thin line between extreme luxury and total crap. (There’s a reason why in dreams, gold is often symbolized by excrement, and vice versa.)
Bullshit Jobs: A Theory (English Edition) David Graeber (著) 1.What is a bullshit job?
これ、アメリカと日本は、そうかもしれないけど、他の国ってどうなんでしょうね。ほかの国も、同じような感じだとしたら、人間全体がそのような傾向を持ってるってことになるんでしょうけど、こういうのって、どうやって調べるのかな？いろんな国のスラングを調べたら分かるのかな？
語彙
structural affinity 構造的な親和性
pinnacle 頂点
gilded 金箔
excrement 排泄物
vice versa 逆もまた同様
参考
Thorstein Veblen（1857-1929） ノルウェー系のアメリカの経済学者で，制度学派の創始者。ウィスコンシン州の片田舎カトーに生まれ，ジョンズ・ホプキンズ大学，イェール大学で哲学，人類学，社会学，経済学を学んだ。その後シカゴ大学，スタンフォード大学などで教える。
“ベブレン（Thorstein Bunde Veblen）”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-11-30)
ベブレンのいう〈制度〉とは慣習の体系のことであって，また〈慣習〉とはいろいろの象徴的な意味が社会的に共有され定型化されたもののことである。この意味での制度が歴史的に生成し，発展し，瓦解していく過程を，おもに進化論的な見地に立って叙述したのがベブレンの仕事であり，その代表的なものとして《有閑階級の理論》と《営利企業の理論》とがある。ベブレンの主張のうちで最も重要なものは本能instinctと制度institutionの二元論である。たとえば，製作者本能workmanshipという正価値をもった本能が，衒示（げんじ）的消費conspicuous consumptionという負価値をもった制度と対比させられるのである。彼にとって文明の制度は，未開状態にみられたはずの人間の善なる性質を堕落させるという意味で，野蛮なものであった。
Sigmund Freud（1856-1939）オーストリアの神経病学者，精神分析の創始者。オーストリア・ハンガリー二重帝国に属していたモラビア地方の小都市フライベルク（現，チェコのプシーボル）にユダヤ商人の息子として生まれる。4歳のとき一家をあげてウィーンに移住。1881年ウィーン大学医学部を卒業。
“フロイト（Sigmund Freud）”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-11-30)
Georges Bataille（1897-1962） フランスの思想家，小説家，詩人。中部フランスのビヨンに生まれる。最初聖職を志したが，思春期を境に徹底した無神論者に転向。古文書学校を卒業後，パリ，ビブリオテーク・ナシヨナル（国立図書館）に勤務，晩年はオルレアン図書館長。一時シュルレアリスムにひかれたが，やがてその指導者A.ブルトンとはげしく衝突，1929年離反派を糾合して，《ドキュマン》誌を拠点に，独自の思想運動を推進した。37年にはM.レリス，P.クロソウスキー，R.カイヨアらと〈コレージュ・ド・ソシオロジー（社会学研究会）〉を組織。46年には，書評中心の総合誌《クリティック（批評）》を創刊，終生その編集長を務めた。私生活面では，国家公務員の職を破綻なく務め上げる反面，《眼球譚》（1928），《マダム・エドワルダ》（1941）をはじめとする数々の非合法ポルノグラフィーを世に送り出し，エロティシズムを中心に据えた大胆・斬新な世界観を築き上げ，20世紀後半，とりわけ第2次大戦後の文学・思想のみならず，風俗にまでも大きな影響を及ぼした。
“バタイユ（Georges Bataille）”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-11-30)
引き続き、頑張って読むぞ。
全部で7章（序文をのぞく）
- Preface 序文
- 1.What is a bullshit job? でたらめな仕事とは何か？ ←いまココ
- 2.What sort of bullshit Jobs are there? どんなでたらめな仕事があるか？
- 3.Why do those in bullshit jobs regularly report themselves unhappy? でたらめな仕事をしている人が定期的に不幸を報告するのはなぜ？
- 4.What is it like to have a bullshit job? でたらめな仕事をするのはどんな感じ？
- 5.Why are bullshit jobs proliferating? でたらめな仕事が急増しているのはなぜ？
- 6.Why do we as a society not object to the growth of pointless employment? なぜ私たちは社会として無意味な雇用の成長に反対しないのか？
- 7.What are the political effects of bullshit jobs, and there anything that can be done about this situation? でたらめな仕事の政治的影響は何か、この状況について何かできることはあるか？
関連情報
デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』の魅力――仕事とケアの深層 – 渡部朝香｜論座 – 朝日新聞社の言論サイト
On “Bullshit Jobs” By Chris Wright
