第112回ZOOMで読書会で共有予定の本を読み進めています。
今回は第一篇第9章「土地の支配権について」から、気になった点と学習記録のメモです。
■社会契約論/ジュネーヴ草稿 (光文社古典新訳文庫) ルソー (著), 中山 元 (翻訳)
この章では、どのように土地の支配権が認められるのか、という点について事例を上げて説明されています。そして土地の支配と住民の支配の違いも。
三つの理由
以下は、ルソーが示した土地の占有権の正当性が認められる三つの理由です。
第一に、その土地にまだ誰も住んでいないこと、第二に、みずからの生存に必要な面積だけしか所有しないこと、第三に、空虚な儀礼によってではなく、労働と耕作によってこの土地を占有することである
第一篇第9章土地の支配権について 「社会契約論/ジュネーヴ草稿」 (光文社古典新訳文庫) ルソー (著), 中山 元 (翻訳)
先に住んでいた人々を追い払って、今日からこの土地は我々のものだ!と勝手に侵略していった君主たちを非難しています。
ルソーが生きた18世紀のフランスは絶対王政の国であり、明確な階層社会でした。聖職者、貴族、平民の三つの身分があり、人口の9割以上が平民にも関わらず、聖職者と貴族が多くの土地を所有して、特権を欲しいがままにしていたんですね。平民のほとんどは農民で、領主への地代や税金の負担に苦しんでいました。
この章でルソーが書いているように、土地を支配することによって、権力者は確実に住民も支配することができるため、土地の支配権について考えることは非常に重要なのです。
平等になる方法
民衆の不満が高まる状況のなかで、ルソーは平等はどのように実現できるのか、ということを考えて社会契約論は書いているんですよね。以下は、社会契約によって、人々が平等になれる、と説いている部分です。
この[社会契約という]基本的な契約は、自然の平等を破壊するものではなく、自然が人間にもたらすことのある自然の不平等の代わりに、道徳的および法律的な平等を確立するものだということである。人間は体力や才能では不平等でありうるが、取決めと権利によってすべて平等になるのである
第一篇第9章土地の支配権について 「社会契約論/ジュネーヴ草稿」 (光文社古典新訳文庫) ルソー (著), 中山 元 (翻訳)
とはいえ、この素晴らしい文章には注釈がついています。それは、悪い統治状態だと、平等は見せかけで、貧富の差は拡大するし、法律っていうものは、持てる者には有利に、持たざるものには不利に働くものだ、ということです。
だから、ルソーは理想的な社会状態っていうのは、すべての人が満たされてはいるけど、持ちすぎていない状態に限られるって言うんですよね。ここは賛否両論があるところかもしれません。
ただ、当時の状況(1割の人が全ての富を権力を握っている)を考えると、ルソーがそう考えるのも仕方ないのかな、っていう気はします。
第9章で第一篇は終了。第二編は12章、第三篇は18章、結論の含まれる第四篇は9章、それにジュネーヴ草稿もある!スピードアップして読まねば!