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「身銭を切れ」第17章 行動で定義すると同じになる

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読書感想
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今回は、タレブの「身銭を切れ」の第7部の第17章「ローマ教皇は無神論者か?」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。(10月のABD読書会で、担当する章を読み終えて感想を共有する予定で準備をしています。ちなみに、私の担当パートは、プロローグ3と第7部(宗教、信仰、そして身銭を切る)です。

「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

無神論者と宗教信者

過去の作品と同じように、本作もタレブの冷笑的で皮肉たっぷりな文章は読みどころのひとつです。特に権威や知識を持っているのに、謙虚さが足りなかったり、知性が欠けているような人々に対する描写は、手加減がありません。

そしてユーモアたっぷりに、状況を例示して読者に思考を迫ります。

救急搬送の最中、救急車の運転手はヨハネ・パウロ2世を礼拝堂のような神への祈りを捧げる場所へと連れていき、神に治療するか否かの判断を仰いだりはしなかった。また、ヨハネ・パウロ2世の後継者たちのなかにも、現代医学の手を借りるのではなく、奇跡的な介入を期待してまず神と対話しようと思った者はひとりとしていなかったようだ。

第17章「ローマ教皇は無神論者か?」「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

ここでタレブが私たちに考えさせたかったことは、何でしょうか。現代では、どのような宗教を信じているか、あるいは信じていないかに関わらず、ほとんどの人々が重要な判断については、同じような決断をする、という事実です。(病気になったら教会で祈るよりも病院で治療する)

ほとんどのキリスト教徒は(キリスト教正教徒の私自身も含めて)、医療、倫理、意思決定の重要な場面に直面すると、無神論者とまったく変わらない行動を取る。(中略)大半のキリスト教徒は、神権政治を求める代わりに、現代の民主主義、寡頭政治、軍事独裁政権のような異教の政治体制を受け入れている。重要な物事に関していえば、キリスト教徒の決断は無神論者の決断と区別がつかないのだ。

第17章「ローマ教皇は無神論者か?」「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

ちなみに、神権政治は16世紀のスイス・ジュネーヴでカルヴァン(フランス)が推奨したものが有名で、神の絶対主権を強調する厳格な禁欲主義が特徴です。キリスト教徒だからといって、神権政治を求める人はほとんどおらず、それぞれの所属する国家体制を受け入れて暮らしているじゃないか、と著者は説明します。

神の意を体し、神の代理者として僧侶または支配者によって行われる政治。神政。

“しんけん‐せいじ【神権政治】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-10-07)

共和政治の一つ。少数者が国家の最高機関を組織して行なう独裁的な政治。

“かとう‐せいじ[クヮトウセイヂ]【寡頭政治】”, 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-10-07)

行動で定義

この本で著者が読者と共有したいのは、『合理性とは生存の問題であり、行動(身銭を切っているか)によって決まる』という結論です。

そのため、ここでは、無神論者と有神論者について、言葉と行動に着目して比較されています。結局のところ、両者ともに、彼らの信念によって行動しているというよりも、生存のための合理性で判断して行動しているんじゃないのか、ということが言いたいのかな。

言葉行動
正教徒、カトリック教徒信心深い無神論者的異教の政治体制も受け入れる
イスラム教サラフィー派、自爆テロ犯信心深い信心深い神権政治を支持
無神論者信心なし?儀式、死者への敬意、迷信何らかの信仰が見られる

ここ、第17章で第7部はおしまい。次は最終の第8部になります。信念という概念については、次章 第18章「合理性について合理的に考える」で詳しく説明されています。

関連情報

  1. まぐれ (Fooled by Randomness) 2001 邦訳kindleなし
  2. ブラックスワン (The Black Swan) 2007-2010 邦訳kindleなし
  3. The Bed of Procrustes 2010 邦訳kindleなし
  4. 反脆弱性 (Antifragile) 2012 邦訳kindleあり
  5. 身銭を切れ(Skin In the Game)2018 邦訳kindleあり

タレブのホームページ
https://www.fooledbyrandomness.com/

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