2020年8月は、「大衆の反逆」オルテガ (著) (白水社)を読みました。
読書会で、この本の内容を3分半でプレゼンしたので、その要約を備忘記録として残しておきます。
誰が書いたの?
20世紀スペインの哲学者(1883生-1955没)
オルテガの発見した命題〈私は私と私の環境である〉
〈私は私と私の環境である〉:ユクスキュルが生物学(動物生理学)の領域で行った〈環境〉概念の新たな構築を,哲学の領域で企てたものと言える。実在論が〈私〉をもう一つの〈もの〉にし,観念論がすべてを〈私〉のうちに取りこんだとするなら,オルテガの主張は〈私〉と〈もの(環境)〉の真の共存である。つまり真の意味で実在するのは,先の命題の第1の〈私〉すなわち〈私の生〉なのだ。そしてあらゆる実在はただ遠近法的にのみ存在する,つまりパースペクティブが実在の構成要素であるという(パースペクティビズム)。
“オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset)”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, (参照 2020-08-23)
時代背景
革命とファシズムの時代に執筆・出版された本です。
1898年 米西戦争の敗北
1917年 ロシア革命
1922年 イタリアでファシスト党が政権を獲得
1930年 大衆の反逆 出版
1933年 ドイツでナチスが政権を獲得
世界的な評価は?
- 大衆社会論の先駆けとして高く評価されている
- スペイン語から、英語、日本語など数か国語に翻訳
- 百年読まれる歴史に残る古くならない古典
3つのキーワード
「大衆」「貴族」「リベラル」の3つ。21世紀の日本人が通常イメージする単語の意味とは異なる意味でオルテガは使用していますので、注意が必要です。
大衆
傲慢な精神の象徴(そのときを生きている人間のことしか考えない)
貴族
(ブルジョアのことではない)自分と異なる他者に、イデオロギーを振りかざして闘うのではなく、対話し、共存しようとする我慢強さや寛容さを身につけている人
血筋とか身分で「貴族」と呼ぶのではない、高貴な生まれで権力を持っている「大衆」もいる、とハッキリと本文中に書いてあるのに、ちゃんと読んでいない人は、この点を誤解しがちのようです。
リベラル
自分とは異なる他者と共存しようとする冷静さ(寛容さ)
オルテガの主張
・民主主義の危機→リベラルの概念を守ろう
★文明の英知=立憲主義の考え方を取り入れ「死者とともに民主主義を行っていく」
重要ポイント
民主と立憲のバランスが崩れちゃダメ!
民主主義=生きている人間の多数決によって決定
立憲主義=現在の人間が決めてもダメなものはダメ
例:多数派が支持しても少数派抑圧&人権侵害NG
【主張】大衆が、多数決で立憲主義によって守られてきたものを破壊し始めているのではないか?
本当の問題
大衆を産み出す社会のしくみ
大衆の反逆では、当時のスペインの現状を分析し、問題点を指摘するところまでが行われています。
オルテガが指摘した問題点(大衆を産み出す社会のしくみを変える?)を解決するには、どのような取り組みが必要か、といった点については、本書の範疇を超えるとして記述されていません。
この本から学べること
自己批判ができる人になろう
- 歴史や科学的な事実をないがしろにしない
- 他者の意見に謙虚に耳を傾け、批判的に考え行動する
- 謙虚に自己を顧みる姿勢の重要さ
- 多数決が正しいとは限らない