読書感想哀sad

フランツ・カフカ「断食芸人」 食欲を超える欲望

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読書感想
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食欲がない。お腹は空くんだけど、食べたいものがないって感じ。先週から風邪をひいているせいかもしれないけれど、たぶん年齢的なものもあるんじゃないかと思う。十代や二十代の頃は、食べても食べても満たされなかったのに、いつのまに私の身体はこんな風になっていたのだろう。

私がちょっと変だなと思ったのは四十代の半ばを過ぎた頃かもしれない。
いろいろな欲望が薄れていったような感じ。

ここ数年は特に、確かに特別に美味しいものを食べられたら、それは嬉しいけれど、そこにあまり執着しなくなり、健康を保つために、日々の必要な栄養素を満たせたら十分というのが本音になっている。

人間の三大欲求が薄れるって生命力が衰えていく兆候なんだろうな、こうやって人は老化していくんだろうな、とか無意識に考えていたときに、カフカの「断食芸人」を読んだ。

この短編は、強烈な自我と自己顕示欲を持った断食芸人の滑稽で悲しい物語で、他人から認められ評価されたいという欲望が、生命を維持するための本能を上回ってしまう状況を描いている。

それは、ほとんど突然起った。いろいろと深いわけがあるのだろうが、そんなものを探し出す気にだれがなったろうか。いずれにしろ、ある日のこと、ちやほやされていた断食芸人は自分が楽しみを求める群衆から見捨てられたのを知った。

「断食芸人」 Kindle版 フランツ カフカ (著), 原田 義人 (翻訳)

時代の流れを読めず、いつまでも過去の栄光に執着し、生き方を変えることができなかった、断食芸人の生き方を憐れんでいるような作者の視線を結末から感じた。

私も、そんな断食芸人を哀れだと思う。
でも正直なことをいうと、心のどこかで、ちょっと羨ましくもある。
真似することのできない彼の強さにあこがれる。
だって死ぬまで自分の意思で食べないなんて、修業僧でも難しいだろう。

他人から愚かと思われても自分の信念を貫く姿勢をもった彼が、断食ではなく、別のことに希望を見出していたとしたら、また異なる物語が生まれていたと思う。しかし、本当にこういう芸人がいた時代があったのだろうか。。。

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