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ブックレビュー「失われし自己を求めて」 ロロ・メイ著 誠信書房 2014/9/23 ★★★★★

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読書感想
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肉親への恨みやねたみをあからさまに見せつけられて気持ちがいい人なんているだろうか。知人が書いているブログをタイトルに惹かれて、うっかり読んでしまい、胸の中に墨を流し込まれた気分。知人はその気持ちを外に出すことによって、事態を客観視したかったのかもしれない。でも知人の家族や、事情を知る人は、ショックを受けたり、傷ついたりするでしょう。

自己非難の意味

私も、色々なことを考えて思考を整理するために文章を書くことがあるけれど、それを誰もが自由に見られる場所で公開できるか、と考えた場合、やはり躊躇する。自分が楽になりたいからといって、他の人を傷つけてもよい、というふうにはならないと思うから。

知人の行動にある種の不快感を感じたけれど、その不快感の種類は特定できていませんでした。でも、ちょうどロロ・メイの「失われし自己を求めて」を読んでいて、はっとする記述を見つけたのです。

過度な自己断罪は、かえって内に隠れた尊大さをとりつくろうための衣となっている。
…たとえば、親に愛されていないと思っている子どもは、おおむねひとりごとではあるが、常に次のように言う。「もし自分がこんなでなかったら、もし自分が悪くなかったら、父母は私を愛してくれることだろうに」これはどういうことかというと、全力を出しきることを避け、自分が愛されていないことを知るおそろしさを回避しているのである。

自己尊重の代わりに自己非難をもってすることは、孤独と無価値感という問題に正面からありのままに直面することを避けることになる。しかも自分のおかれている状況に素直にぶち当たり、建設的にできるだけのことをすべてやろうとする人の誠実な謙虚さよりも、むしろ偽りの謙虚さへ向かう。それだけでなく、代用品である自己非難は、人の自己憎悪を合理化してしまい、自己憎悪の傾向を強化することになる。そして、他者の自己に対する態度は一般に自らの自己に向かう態度に類似しているため、他人を憎むという目に見えない傾向もまた合理化され、強化される。これらの段階は、自己の無価値感から他者への憎悪まであるが、そう距離の離れたものではない。

「失われし自己をもとめて」 ロロ・メイ (著), 小野 泰博 (翻訳), 小野 和哉 (翻訳) 誠信書房 P.107-108

なぜ不快になったのか

私が感じた不快感は、自分の置かれた状況に素直にぶち当たって、建設的に自分ができることを全てやろうという姿勢がその文章から感じられず、全ての責任を周囲に押しつけ、読み手の同情をひきたいという下心が透けて見えていたからだ、と気づきました。

またひとつ自分の価値観を深めることができました。私自身、過度な自己断罪をして、その場しのぎをすることが多かったのです。「どうせ私が悪いんでしょ、はい、分かった。これでおしまい。私が我慢すれば丸く収まるのよね。」こんな態度が健全なわけはないです。私が、この態度をどこで身につけたかにも思い当たってしまいました。明らかに母ですね。

自分の心と身体を分離させて、その結果、身体を壊してしまう。おかしな具合に歪めてしまう。

私は、そんな風にはなりたくないです。自分が何を求めているのか、いつも把握できている状態にします。自分の気持ちを偽らず、誠実であること。でも他人は傷つけない。そこを目指そうと思います。

参考

Rollo May’s Existentialist Theories(Study.com) 英語字幕だけですが、ロロ・メイの実存心理学について紹介したビデオ(5分)や、理解度テストがあります。(有料会員にならないと全て観ることはできませんが、無料のお試し入会期間があります)

“Many people suffer from the fear of finding oneself alone, and so they don’t find themselves at all.” ”多くの人は、自分が一人でいることを恐れるあまり、自分を見つけることができないでいる。” (日本語は無料翻訳DeepLによる)
― Rollo May, Man’s Search for Himself

Man’s Search for Himself (English Edition) Kindle版 英語版 Rollo May (著) 形式: Kindle版

“Finding the center of strength within ourselves is in the long run the best contribution we can make to our fellow men. … One person with indigenous inner strength exercises a great calming effect on panic among people around him. This is what our society needs — not new ideas and inventions; important as these are, and not geniuses and supermen, but persons who can “be”, that is, persons who have a center of strength within themselves.” 自分の中に強さの中心を見つけることは、長い目で見れば、同胞に対してできる最高の貢献である。内に秘めた強さを持つ一人の人間が、周囲の人々のパニックを和らげる効果は絶大である。これこそが、私たちの社会が必要としているものなのです。新しいアイデアや発明が重要なのではなく、また、天才やスーパーマンでもなく、「なる」ことができる人、つまり、自分の中に強さの中心を持っている人なのです。(日本語は無料翻訳DeepLによる)
― Rollo May, Man’s Search for Himself

Man’s Search for Himself (English Edition) Kindle版 英語版 Rollo May (著) 形式: Kindle版

“One of the few blessings of living in an age of anxiety is that we are forced to become aware of ourselves.” ”不安の時代に生きることの数少ない幸せの一つは、自分自身を意識せざるを得ないことである。” (日本語は無料翻訳DeepLによる)
― Rollo May, Man’s Search for Himself

Man’s Search for Himself (English Edition) Kindle版 英語版 Rollo May (著) 形式: Kindle版

“The human being cannot live in a condition of emptiness for very long: if he is not growing toward something, he does not merely stagnate; the pent-up potentialities turn into morbidity and despair, and eventually into destructive activities.” 何かに向かって成長していなければ、単に停滞するだけではなく、蓄積された潜在能力は病的で絶望的なものとなり、最終的には破壊的な活動へと発展するのである (日本語は無料翻訳DeepLによる)
― Rollo May, Man’s Search for Himself

Man’s Search for Himself (English Edition) Kindle版 英語版 Rollo May (著) 形式: Kindle版

Rollo May (April 21, 1909 – October 22, 1994) was an American existential psychologist. He authored the influential book Love and Will during 1969. Although he is often associated with humanistic psychology, his philosophy was influenced strongly by existentialist philosophy. May was a close friend of the theologian Paul Tillich. His works include Love and Will and The Courage to Create, the latter title honoring Tillich’s The Courage to Be. ロロ・メイ(1909年4月21日~1994年10月22日)は、アメリカの実存的心理学者。1969年に『愛と意志』を著し、影響を与えた。人間性心理学のイメージが強いが、彼の哲学は実存主義哲学の影響を強く受けている。神学者のパウル・ティリッヒとも親交があった。著書には『愛と意志』『創造する勇気』があり、後者はティリッヒの『存在する勇気』に敬意を表したものである。(日本語は無料翻訳DeepLによる)

Goodreads Man’s Search for Himself by Rollo May

「失われし自己をもとめて」ロロ・メイ (著), 小野 泰博 (翻訳), 小野 和哉 (翻訳) 誠信書房
Man’s Search for Himself (English Edition) Kindle版 英語版 Rollo May (著) 形式: Kindle版
Goodreads Man’s Search for Himself by Rollo May

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