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「貧民救済私案」スウィフト(1729年)予備知識なしで読んでください(ゾッとしたい人におすすめ)

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いま、決闘について調べているところです。色々と調べているなかで、哲学者のカントは『人倫の形而上学』で「人を殺害したのであれば,死ななくてはならない」と述べているけど、子殺しと決闘に関してだけ例外を認めていると分かりました。それで子殺しについても、追加で調べていたら、スウィフトのエッセイにたどり着きました。ジョナサン・スウィフト著「貧民救済私案」SOGO訳

私の提案にはもう一つ大きな利点がある。それは、堕胎を防止し、母親が私生児を殺すという恐ろしい事態を防ぐことができるのだ。ああ! そんなことが我が国で横行し、無垢な赤ん坊を死に追いやっているのだ。おそらく恥辱を隠すためというよりは出費を避けるためであろうが、これにはいかに極悪非道な者の胸にも同情の涙を催さずにはいられないであろう。

ジョナサン・スウィフト著「貧民救済私案」SOGO訳

ガリバー旅行記で有名なスウィフトが、そんな立派な政策提案をしていたのか、と思って、短いしサクッと読めそうだと、「どれどれ。。。」と気楽に読み始めたら、途中からハンマーで頭を殴られたみたいな衝撃を受けましたよ。

ここから下はネタバレを含むので、びっくりしてゾッとしたい人は、この先は読まないでください。SOGOさんの翻訳はとても読みやすいので10分もあれば読み終わりますよ。

興味がある方は、ぜひ先に「貧民救済私案」をご一読ください。

ネタバレと感想

読み終わって、まず思い出したのは村田沙耶香の「生命式」という作品集でした。12篇の作品は、どれも、いま私が常識だと思っていることを揺さぶってくる内容で、最初に読んだ時は、正直いうと買ったことを後悔したんです。なんだか気持ち悪くて。でも、正常と異常の境目は、意外とあっさりと崩れるし、常識なんて時代によって全然違っているのだ、という当たり前のことに気づかせてくれたのも、この作品集でした。

そのこと、変だって思いますか?世界はこんなにどんどん変わって、何が正しいのかわからなくて、その中で、こんなふうに、世界を信じて私たちは山本を食べている。そんな自分たちを、おかしいって思いますか?

「生命式」河出書房新社 村田沙耶香  (著)

生命式は、ある程度の予備知識を持って読み始めたから、気持ち悪いのも想定内でしたが、スウィフトの作品は、まったく心の準備をしていなかったので、中盤になって、スウィフトの主張が明確になった瞬間に、うへぇ、そうきたか!とギョッとしたんです。

それゆえ私は、謹んで以下に私案を提出する。おそらく諸君にはなんら異議はないものと存ずる。私はかつて、ロンドンで知り合った非常に物知りなアメリカ人から話を聞いたことがある。彼曰く、よく世話された健康な赤ん坊は、丸一歳を迎えると、とてもおいしく、滋養のある食物になるそうだ。シチューにしても、焼いてもあぶっても茹でてもいいとのことだった。

ジョナサン・スウィフト著「貧民救済私案」SOGO訳

たまたま、岡田斗司夫さんのYouTubeを見ていて、スウィフトの議論に繋がるなぁと思ったのは、これでした。

YouTube【三浦瑠麗】彼女が度々炎上する理由はこれです【統一教会 安倍元首相 福島瑞穂 東浩紀】【岡田斗司夫 / 切り抜き / サイコパスおじさん】(10分)

簡単に動画の内容を説明しますね。

ウイルスで死ぬのも、経済が悪化して失業した人が自殺するのも、同じ死だとしたら、死者の全体数を減らすことが大切という三浦氏の意見は、行政官僚が政治家にプレゼンするようなもの。非常にクレバーだが、多くの市民は事態をもっと政治的に考えている。それはつまり、多くの人はそれらを同じひとつの死とは考えられず、どちらかに重みをつけてしまうから。(だから大衆心理を理解できない三浦氏は炎上するのだ、と岡田氏は分析する)私たちは政治と行政は違うという点を理解する必要があり、一般的に人々が悩むのは政治問題であり、それはつまり、トロッコ問題のように、正義とは何かという問題である。

この指摘は、納得度が高かったですね。私が村田作品や、スウィフト作品を読んで、眉をひそめるのも、まさに「正義とは何か」という問題に引っかかったから。もう一回ちゃんとサンデル先生のJusticeを読みたくなりました。

参考

SOGO_etext_library / ジョナサン・スウィフト著「貧民救済私案」

PRESSBOOKS / A Moest Proposal by Jonathan Swift (英語 / オーディオブック25分)

sparknotes / A Moest Proposal by Jonathan Swift(フルテキスト / 英語)

sparknotes / A Moest Proposal by Jonathan Swift(要約、解説、クイズ)

「生命式」河出書房新社 村田沙耶香  (著)

スウィフト【Jonathan Swift】[1667~1745]英国の小説家。アイルランドの生まれ。人間と社会を風刺した作品を発表。作「ガリバー旅行記」「桶物語」など。

“スウィフト【Jonathan Swift】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, (参照 2022-08-06)

むらた‐さやか【村田沙耶香】[1979~ ]小説家。千葉の生まれ。平成15年(2003)「授乳」が群像新人文学賞優秀作となり作家デビュー。平成25年(2013)「しろいろの街の、その骨の体温の」で三島由紀夫賞受賞。平成28年(2016)「コンビニ人間」で芥川賞受賞。他に「ギンイロノウタ」「星が吸う水」など。

“むらた‐さやか【村田沙耶香】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, (参照 2022-08-06)

トロッコ‐もんだい【トロッコ問題】
倫理学的な思考実験の一。暴走するトロッコの軌道上に5人の作業員がいて、そのまま放っておけば5人は轢死(れきし)する。自分が分岐器を作動させれば、トロッコは別の軌道に入るが、その先にも1人の作業員がいる。この場合、「自分」はどのような選択をすればよいかという問い。特定の人を助ける代わりに、別の人を犠牲にしてもよいかという倫理学上のジレンマを扱っている。トロリー問題。

“トロッコ‐もんだい【トロッコ問題】”, デジタル大辞泉,JapanKnowledge, (参照 2022-08-06)
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