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30分で読めるけど、セネカ「人生の短さについて」はワーカホリックの中高年には特に言葉が突き刺さる

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セネカの「人生の短さについて」を光文社版で読みました。読み始めたら止まらなくて30分くらいで一気読みしたのは、印象に残る力強い言葉が多かったからです。二千年以上前のローマのことなのに、まるで現代の日本社会について言及しているような記述にどきりとさせられる人もいると思います。

悟りを開くための修行

読んでいて、これは悟りを開くための修行を勧めてるみたいだな、と感じました。あとは生きることの本質は何かを考えて優先順位を決めることの重要性とかね。彼が最も重要だと考えていることは、このこのあたりに現れています。

あの、もっと平穏で、もっと安全で、もっと大切な仕事に戻りなさい。(中略)ところが、あの仕事に携われば、あなたは神聖で崇高な事柄に近づくことができるのだ。すなわち、あなたは知ることになるであろうー神の本質と意志と性質と姿がいかなるものなのかを。あなたの魂が[死後]どうなるかのかを。(中略)あなたは、徳を愛して実践し、欲望から解放され、生きることと死ぬことを知り、深い静寂の中で生きるのだ。

人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫) セネカ (著), 中澤 務 (翻訳)

賢人と付き合う方法

セネカは俗人との付き合いを止め、古代の賢人と付き合うことを勧めています。そうすることで、あなたは英知を手に入れ、「死すべき生を引き延ばす」ことができるのだと。つまり、古典を学べということですね。

人々に尊敬される諸学派を作りあげた高名な創設者たちは、われわれのために生まれてくれた。(中略)われわれは大きな心で、人間の弱点である視野の狭さを克服しようとするだけでよい。(中略)これらの哲人たちは、いつでも時間を空けてくれる。彼らのもとを訪れれば、帰るときにはいっそう幸福になり、自分をいっそう愛するようになっている。(中略)彼らは、決して、あなたの人生の年月を無駄には使わせない。

人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫) セネカ (著), 中澤 務 (翻訳)

ワーカホリックな公務員パウリヌスへのアドバイス

国の穀物帳簿を管理する責任者のパウリヌスに、その優秀な頭脳を浪費してはいけないと教え諭すセネカの言葉は、実際のところ、どのくらいパウリヌスさんに届いたんでしょうね。

だからこそ、俗人たちのもとを離れなさい、親愛なるパウリヌスさん。(中略)あなたの人生のうちのかなりの、そして間違いなく良質な部分は、国家に捧げられた。これからは、少しでも自分のために使いなさい。(中略)あなたの仕事は、たしかに尊敬に値するものではあるが、幸福な人生をもたらしてはくれない。(中略)多忙な人は、みな惨めな状態にある。その中でもとりわけ惨めなのは、他人のためにあくせくと苦労している連中だ。(中略)働くことに疲れるより先に、生きることに疲れ、仕事をしている最中に倒れるなんて、情けないことではないか。

人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫) セネカ (著), 中澤 務 (翻訳)

光文社版は読みやすい

私は光文社版しか読んでいませんが、古典であることを感じさせないほど自然で読みやすかったです。ただ、若い頃に岩波版を読んでいた方は、そちらの翻訳が馴染みがあり愛読されているとのことでした。

人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫) セネカ (著), 中澤 務 (翻訳)

生の短さについて 他二篇 (岩波文庫) セネカ (著), 大西 英文 (翻訳)

人生の短さについて セネカ (著), 浦谷 計子 (翻訳) PHP研究所

参考

Lucius Annaeus Seneca(前4ころ-後65)ローマ帝政初期のストア派哲学者,劇作家,政治家。スペインのコルドバに生まれ,すでに幼年時に弁論家の父,いわゆる老セネカと母ヘルウィアとともにローマに移り,修辞学,哲学を学んだ。とくにアッタロス,パピリウス,ソティオンらストア派哲学者の影響を受けた。その後財務官として政界入りを果たしたが,卓抜した弁論はカリグラ帝の嫉妬を買うところとなり,41年陰謀によってコルシカ島に追放された。48年小アグリッピナから召喚されて息子ネロの教育をゆだねられ,54年クラウディウス帝の死後は帝政の実権を握り,行政に腕をふるった。その間巨額の富を築き,哲学的信条と実生活の矛盾が非難を浴びた。〈彼は清貧以外はすべてを手に入れた〉と歴史家タキトゥスも自家撞着(どうちやく)に陥ったセネカの姿を皮肉な筆致で描いている。しかし62年,同僚ブルスの死を契機に公職を離れローマ近郊の別荘で著述活動に専念するが,65年ピソの陰謀に加わったかどでネロに自殺を命じられた。

“セネカ(Lucius Annaeus Seneca)”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-06-27)

することが何もないこと。ひま。「―を得る」

“かん‐か【閑暇/間暇】”, デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-06-27)

生の短さについて 他二篇 (岩波文庫)
生は浪費すれば短いが,活用すれば十分に長いと説く『生の短さについて』.心の平静を得るためにはどうすればよいかを説く『心の平静について』.快楽ではなく徳こそが善であり,幸福のための必要十分条件だと説く『幸福な生について』.実践を重んじるセネカ...
人生の短さについて
セネカは、二千年前の古代ローマ帝国を生きた思想家です。ストア派の哲学者にして詩人・劇作家でありながら、政治の世界にもかかわって皇帝ネロの教育係を務め、最期はその教え子に自死を命じられるという、波瀾万丈の生涯でした。多くの哲学書簡やエッセイを...
人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫)
人生は浪費すれば短いが、過ごし方しだいで長くなると説く表題作。逆境にある息子の不運を嘆き悲しむ母親を、みずからなぐさめ励ます「母ヘルウィアへのなぐさめ」。仕事や友人、財産との付き合い方をアドヴァイスする「心の安定について」。2000年読み継...
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