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「貨幣発行自由化論」第16章 4人の敵とは?

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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第16章「フリーバンキング」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

この章は、フリーバンキングについての議論がいつ頃盛んだったのか、なぜそれが下火になったのかを解説しつつ、やっぱり、政府独占は止めさせて銀行に通貨競争をしてもらうしくみを作らなきゃいけないんだけど、改革を進めるには4人の敵を攻略しなきゃダメ、という内容になっています。(具体的な攻略方法の記載はなし)

前提

当座預金口座が未発達だった、18世紀半ばにフランスとドイツで、フリーバンキング論争が活発化したのは、民間銀行が銀行券を発行して供給量を調節する責任を負っていたからです。

ところが、その銀行券は金銀と交換できなくなり、貨幣発行特権を持つ中央銀行が供給する法貨と交換することになったという歴史があります。

フリーバンキング論争の結果として、ヨーロッパでは貨幣発行特権を持つ銀行が各国に一行だけ政府によって設立されることになった(ただしアメリカでの設立は1914年と遅かった)。

第16章「フリーバンキング」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

このしくみができてしまったせいで、以前のような自由な議論ができなくなってしまい、歴史的に十分な議論がされていない状態になった、とハイエクは嘆きます。

ここでの重大な問題は「(貨幣発行を中央銀行に一本化することによって)不幸な混合制度が生まれることになる。貨幣の総量に対する責任が最悪の形で分割され、効果的に制御できる人間が一人もいないという状態になってしまった」という点です。

ハイエクの提案

貨幣を効果的にコントロールできるしくみを作るためのハイエクの提案はふたつ。

・貨幣発行の政府独占禁止
・すべての銀行が経営方針を完全に変えること(通貨発行の有無にかかわらず)→中央銀行の救済がなくなるから

本書で提案する貨幣発行の政府独占は意志には、この不幸な制度が引き起こした行き詰まりを打開するきっかけになるという大きなメリットがある。

第16章「フリーバンキング」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

でも、この改革には、4人の敵が立ちはだかっています。

通貨競争の脅威

敵って、いったい誰なんだ?とチェックしてみると。。。

  1. 古い世代の銀行家
  2. フリーバンキング支持派
  3. 財務省
  4. 一般市民

おいおい、じゃ、味方って誰なのよ、って言いたくなっちゃいますよね。

人々は政府による貨幣発行特権の濫用はほとんどの場合おとなしく我慢しているくせに、通貨を発行しているのが「大もうけをしている銀行」だとなった瞬間に、特権の濫用だという不平不満をしきりに言い立てる可能性がある

第16章「フリーバンキング」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

なかなか辛辣に市民を皮肉ってます、ハイエクさん。そうですよ。一般市民は、長いものには巻かれるものです。では、貨幣発行自由化論に味方はいないのか?新しい世代の銀行家が、政治家を巻き込んで世界を変えるという構図が必要になってくるのでしょうか。

次の第17章では、またまたケインズと政府への批判。マイルド・インフレなら大丈夫っていうのは間違ってるよ、という話です。


貨幣発行自由化論  改訂版ーー競争通貨の理論と実行に関する分析 [ フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) ]

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