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「貨幣発行自由化論」第7章 並行通貨制の問題点

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読書感想
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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第7章「並行通貨と貿易決済」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

(10月の読書会までに、読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

この章では、金貨や銀貨が基本的な貨幣だったころ、どのような基準が適用されていたのか、そこにどんな問題があったのかを知ることができます。ここは次の章への繋ぎになる部分です。この章で歴史的な事実を確認するものの、結局のところ、それだけでは、より良い貨幣とは何かを考えるための材料に乏しいので、次章で思考実験するよ、というのが結論です。

並行通貨とは

ここで、ハイエクが並行通貨制と呼んでいるのは、金貨や銀貨の交換比率(金銀比価)が固定されていないようなしくみのことです。

金貨や銀貨に含まれる金属の含有量が多いほど価値が高いわけですが、問題になるのが、金貨と銀貨を交換する場合の比率(金銀比価)でした。

例えば円で考えた場合、一万円札を五千円に両替すると二枚なりますよね。価値はどちらも同じ。
でも、当時の金貨と銀貨は、そういうわけにはいかなかったのですよ。金貨1枚に銀貨が15枚必要なときもあれば、10枚あるいは20枚の場合もあったりするわけです。

なぜかといえば、貨幣の金属含有比率が各国でバラバラだったから。また、この時期は、金は銀の約15倍の価値があったらしいのですが、金銀比価が変動するから、交換率も一定じゃないわけ。そうすると、両替がめちゃくちゃ面倒になりますよね。

このような金銀比価の固定がない金銀複本位制を、並行通貨制と呼ぶのですが、実施されていた期間や場所は多くありません。この本で例示されていたのは、イギリスと、ドイツのハノーファー。

1663~1695 イギリス 金銀複本位制(金銀比価の固定なし)→金本位制へ移行
?~1857 ハノーファー(ドイツ) 金銀複本位制(金銀比価の固定なし)

なぜうまくいかなかったのか?そりゃ、不便だったからです。

貴重な歴史的事例

イギリスとドイツの並行通貨制とか、貿易決済通貨の事例を引っ張ってきているのは、競争通貨がどのような問題を引き起こすか、歴史的な事実から学べることがないかを検討するためでした。

歴史的には貴重な事例だけど、やはり限定的で特殊なので、今後の競争通貨を考える場合には、この事例だけでは検証が不十分だそう。

異なる種類の通貨の相対価値がわからない限り、流通している通貨の総量は計算できないので、一国(一地域)だけの通貨供給量という概念は、厳密にいうと並行通貨制では意味がない、とハイエクは言っています。(ここは、良く理解できなかったんだけど、つまり、並行通貨制が悪いというよりも、もっと広域なら良いということ??)

関連する状況における人間のふるまいについてすでにわかっていることに基づいて、人々が新しい選択肢に直面したときに起こる可能性が高いことを知るために一種のメンタルモデルを考えるか、でなければ思考実験をすることが望ましい

第7章「並行通貨と貿易決済」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

ということで、次章は、ハイエクの思考実験(例えばハイエクがスイスの大手民間銀行の経営者だったら?)が展開されます。

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