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「貨幣発行自由化論」第6章 悪貨が良貨を駆逐しないこともある

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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第6章「グレシャムの法則をめぐる混乱」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

(10月の読書会までに、読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

この章でハイエクは、一般に知られている「グレシャムの法則」(悪貨は良貨を駆逐する)は常に正しいとは限らない、と主張しています。だから、グレシャムの法則があるから、政府に貨幣発行を独占させなきゃダメ、という理由にはならないよ、というのが、この章の結論です。

悪貨が良貨を駆逐する理由

なぜ、悪貨は良貨を駆逐する、というグレシャムの法則が信じられたのでしょうか。これを理解するためには、金貨を使っていた頃の状況を想像する必要があるのです。

同じ金貨1枚でも、鋳造で金の含有量をちょろまかしていたら、額面は同じでも、高品質の金貨と、低品質の金貨が同時に流通することになるわけです。

例えば、金貨1枚で宝石が1個買えるとしたら、人は金の含有量が低いものを買い物で使用し、金の含有量の高いものを手元に残そうとします。そうして、市場に流通するのは、金の含有量の低い金貨ばかりになってしまう、という状況が「グレシャムの法則」と呼ばれるようになりました。

グレシャムの法則 Gresham’s law〈悪貨は良貨を駆逐するBad money drives out good.〉という法則。同じ額面価格で通用し,しかも一枚あたりの金の含有量の異なる2種類の金貨があるとしよう。公衆は,日々の支払にはもっぱら金の含有量の少ないほうの鋳貨(悪貨)を用い,多いほうの鋳貨(良貨)を退蔵するであろう。つまり良貨は流通過程から駆逐されることになる。1560年イギリス人グレシャムThomas Gresham(1519-79。貿易・為替・金融業者で,23年間にわたりイギリス国王の財政顧問)がエリザベス女王に対し,イギリスの良貨が海外に流出する原因は貨幣改悪にありと進言したが,3世紀を経てイギリスの経済学者マクラウドHenry Dunning Macleod(1821-1902)がこれをその著《政治経済学の諸要素》(1858)で〈グレシャムの法則〉と命名した。

“グレシャムの法則”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-10-11)

見落としている点

ところが、ハイエクは、何か大事なことを見落としていないか?という話をします。
例えば、こんな話です。

現にインフレが急速に進行する状況では、より安定した価値をもつものは何でも、じゃがいもからタバコやブランデー、卵からドル紙幣などの外国通貨にいたるまでが、貨幣代わりに使われるようになる

第6章「グレシャムの法則をめぐる混乱」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

つまり、悪貨が良貨を駆逐するのは「異なる種類の貨幣の間に固定交換比率が(政府などによって)強制されている場合」に限定されるのであって、価値が一段と下がると見込まれた低品位の貨幣は、自由経済のなかでは、すみやかに排除されていくのです。

なお近年F.ハイエクは,純粋な変動相場制下では,良貨(素材価値でなく他の通貨との相対的な価値=交換比率の安定した貨幣)が悪貨より高い市場価格を得るという〈反グレシャムの法則〉を唱えている。

“グレシャムの法則”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-10-11)

だから「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則は、政府が貨幣の発行権を独占するべきだという主張を補完する理由にはならないんですね。

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