読書感想8. Trial&Error

「身銭を切れ」インケルトーの肋骨

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読書感想
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今回は、タレブの「身銭を切れ」のプロローグ3「インケルトーの肋骨(ろっこつ)」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。(10月のABD読書会で、担当する章を読み終えて感想を共有する予定で準備をしています。ちなみに、私の担当パートは、プロローグ3と第7部(宗教、信仰、そして身銭を切る)です。

「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

インケルトーって何?

著者タレブのウェブサイトを見たり、原書を見ると分かるのですが、彼のこれまでの著作はインケルトー(INCERTO)シリーズとして番号が付けられています。不確実性の議論はタレブのテーマですね。

「身銭を切れ」(Skin In the Game)はインケルトーシリーズの5作目です。

  1. まぐれ (Fooled by Randomness) 2001 邦訳kindleなし
  2. ブラックスワン (The Black Swan) 2007-2010 邦訳kindleなし
  3. The Bed of Procrustes 2010 邦訳kindleなし
  4. 反脆弱性 (Antifragile) 2012 邦訳kindleあり
  5. 身銭を切れ(Skin In the Game)2018 邦訳kindleあり

余談ですが、このシリーズに入っていないStatistical Consequences of Fat Tailsの無料PDFが公式サイトからPDFでダウンロードできるのですが、Amazonジャパンでみたら、けっこう良いお値段で販売されていました。

そしてIncertoですが、イタリア語で不確かなことを意味するみたい。発音を聞くとインチェルトといっているふうに聞こえました。著者サイトや、ブラックスワンなどの著作には、以下の説明があります。

INCERTO, an investigation of opacity, luck, uncertainty, probability, human error, risk, and decision making when we don’t understand the world, expressed in the form of a personal essay with autobiographical sections, stories, parables, and philosophical, historical, and scientific discussions in nonoverlapping volumes that can be accessed in any order. 不透明度、運、不確実性、確率、ヒューマンエラー、リスク、および世界を理解していないときの意思決定の調査。自伝的なセクション、ストーリー、寓話、哲学的、歴史的なエッセイの形での表現 、および任意の順序でアクセスできる重複しないボリュームでの科学的議論。

著者公式サイト Nassim Nicholas Taleb’s Home Page

背骨と肋骨

なぜインケルトーの肋骨(The Ribs of the Incerto)なのか。聖書では、神によって最初の女性(エヴァ)が男性(アダム)の肋骨から作られたという伝説が語られているので、タレブもそれを模して作品を作っているとのこと。前作の一部を取り出して新作を作っている、ってことですね。

つまり、「身銭を切れ」は「反脆弱性」の一部を取り出して増殖させたものになります。

本書は『反脆弱性』の一部、「他者の脆さと引き換えに反脆さを手に入れるべからず」という題目を抜き出したものだ。一言でいえば、リスク負担の非対称性は不均衡へとつながり、システムを崩壊に導く可能性がある、ということだ。

「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

タレブは、第70代アメリカ合衆国財務長官を務めたロバート・ルービンRobert E. Rubin(1938― )の所業にいたくお冠で、彼が行ったような悪行を一般化して「ロバート・ルービン取引」と名付けています。これが、インケルトーシリーズ全体の背骨なんですって。

すでに説明したとおり、ロバート・ルービン取引に勤しむ連中は、儲けたときには利益を懐に収め、損したときにはブラック・スワンだ何だと叫びながら、損失をほかの誰かに押し付ける

「身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳), 千葉 敏生 (翻訳)

身銭を全く切らず、自分さえ良ければOKとばかりの厚顔無恥な人びとに対する怒りがタレブの筆を進めているようです。

And the LOAD God caused a deep sleep to fall upon Adam, and he took one of his ribs, and closed up the flesh instead thereof;
And the rib, which the LORD God had taken from man, made he a woman, and brought her unto the man. 主なる神はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。

Old Testament Genesis2-21,22(King James version)   旧約聖書 創世記2-21,22(新共同訳)

まったく別に話になりますが、こういう人類創生の神話は世界中にあって面白いですよね。日本だと古事記に書かれているように、イザナギ、イザナミの神が地上に降りて結婚して人類の祖先である神々を産み落としたことになっています。でも聖書のように、現代の作品に引用されたりすることは少ない気がします。この影響力の違いって何なのでしょうね。

また機会があれば、このあたりも調べてみたいなぁ。

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