読書感想8. Trial&Error

「貨幣発行自由化論」第3章 政府に独占させちゃダメ

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読書感想
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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第3章「貨幣発行における政府独占の起源」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

(10月の読書会までに、読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

本来は政府の仕事じゃなかった

この章では、貨幣発行によって政府が権力を持つようになった2000年の歴史を簡単に知ることができます。政府が貨幣発行において、どのように自分たちの権限を強化していったのか、それがどのような利点と不利益を国民にもたらしたのか。

貨幣鋳造権は、ローマ皇帝の時代に確立され、近代では、統治権を構成する基本的な要素としては最も重要なもののひとつに数えられるようになります。当初、政府の役割は、金銀などの金属の重量と純度を証明するだけだったのに、その特権はどんどん強化されてゆき、 金属貨幣は、国旗と同じく権力の重要な象徴として機能し始めました。

中世には、君主の主要な収入源となるのですが、やがて貨幣に含まれる金、銀の含有量を減らし、別の貨幣を鋳造するようになり、貨幣の発行量を裁量的に決定するようになるのです。

そして、どの国でも政府はのべつ信頼を悪用して国民を欺いてきたと断言できる

第3章「貨幣発行における政府独占の起源」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

まぁ、国民には、権力者に抵抗する方法がほとんどありませんからね。

受領証がお金代わり?

その後、現金が必要になった政府は、資金を調達した際に、受領証を発行することになります。そして、これが紙幣の始まりでした。つまり紙のお金ができたのは、完璧に政府の都合によるものだったのです。

金属貨幣(政府が独占発行した確固たる貨幣である)に対する紙に書かれた請求権を貨幣として使うことのほうが問題だった

第3章「貨幣発行における政府独占の起源」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

まったく価値のないもの(紙)に、架空の価値を持たせて流通させることの良し悪しを、ハイエクは以下のように書いています。政府がちゃんと全体をみて、供給量をマネジメントできる場合に限り、最良なのです。

紙幣というものは、最良の貨幣にも最悪の貨幣にもなりうる。供給量を慎重に調整して利用者を満足させることが発行機関の自己利益になるなら、最良の貨幣になる。だが特定の利益集団の要求を満足させることが自己利益になるなら、およそ考えられる限りで最悪の紙幣になるだろう

第3章「貨幣発行における政府独占の起源」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

そして過去と現在を見る限りにおいて、政府が貨幣発行を独占することは、政府の権力強化には非常に役立っているけれども、利用者である国民にとっては、メリットがなくなってしまっているそうなのです。

貨幣の発行と管理に関する政府の排他的な権利は、良貨を供給することには寄与せず、おそらく悪貨を供給することのほうに寄与してきた。その一方で、政府の政策を推進する重要な手段の一つとなり、政府の権力を総じて強めることには大いに役立ったのである。(中略)まさにこの理由から、この権利を政府から取り上げることがきわめて重要なのである

第3章「貨幣発行における政府独占の起源」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

政府が、財源を拡大する理由は赤字補填であり、それをする場合には、雇用を創出するから良いのだ、という口実が引っ張り出されるけれど、ハイエクは、いやいや、ちょっと待てよ、それは本当に国家の義務か?と経済学の祖であるアダム・スミスの言葉を引用して、疑問を呈しています。

アダム・スミスは「自然な自由の体制では、統治者が遂行しなければならない義務は三つしかない」と言ったとき、そこに貨幣発行の管理をみとめていない。これは意味深長である。

第3章「貨幣発行における政府独占の起源」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

ちなみにアダム・スミスの述べている3つの義務は以下のとおり。めちゃくちゃシンプルだな。

アダム・スミスが国富論(第4篇第9章)で述べている国家の3つの義務

・他国の暴力と侵略から自国を守る義務
・厳正な司法制度を確立する義務
・公共施設や公共機関を設立して維持する義務

(Adam Smith アダム スミス)イギリスの経済学者、倫理学者。古典派経済学の祖。グラスゴー大学教授・総長。重商主義的保護政策を批判し、自由放任主義の立場にたつ自由主義的経済学を主張し、国富の源泉を労働一般に求め、産業革命の理論的基礎づけを行なった。「国富論」は経済学を初めて科学的に体系づけた古典。ほかに「道徳感情論」などがある。(一七二三~九〇)

“スミス”, 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-30)

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