読書感想8. Trial&Error

「貨幣発行自由化論」序文も面白くて読みやすい

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読書感想
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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の序文などから、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

(10月の読書会までに、読み終えて感想を共有する予定で準備をしています)

序文がいっぱい

本文に入るまえに、私たちは4つの序文と1つの注記を読むことになります。初版、第二版、第三版、著者本人による序文、第二版への注記です。う~ん、なんでこんなにたくさん序文があるの?読み飛ばそうか、とちょっと思ったのですが、意外と読みやすいし、この本が執筆された理由と、出版された当時の状況などが理解できるので、しっかり読んでおくのが正解みたい。

個人的に面白いなと思ったのは、第三版の序文に書かれていたこちら。

ではどのようにして貨幣価値の安定を実現するのか。ミルトン・フリードマンは、そして近年では他の多くの研究者も、貨幣供給にルールを設けること、可能であれば「貨幣の憲法」といったものにそのルールを組み込み、貨幣供給の増加ペースを一定かつ予測可能にすることを提唱している。そうしたルールがあれば、貨幣管理の重大な失敗がなくなることは疑いの余地がない。

第三版の序文「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

これは、まさにビットコインのこと?ってビックリしました。この本が出版された1976年当時は、あり得ないことだと思われていたものが、たった33年後(ビットコインは2009年にリリース開始)で現実化しているんですから。

ハイエクが提唱したことが現実化しています。

なにしろハイエク教授は、貨幣と他の商品との間に何もちがいはない、政府の独占に委ねるよりも民間発行者の間で競争して供給するほうがよい、と述べているのである

初版の序文 「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

ビットコイン:ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨およびそのプロトコル。ビットコインではブロックチェーンの情報を公開し、分散管理するため、特定の管理者は存在しない。仮想通貨の正しい取引を確認し、取引履歴をまとめたブロックの生成者には報酬が与えられる仕組みとなっている。2008年にビットコインのアーキテクチャーがSatoshi Nakamotoの名前で論文として発表され、09年にビットコインの最初のバージョンがリリースされた。

“ビットコイン[情報通信産業]”, 情報・知識 imidas 2018, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-27)

ハイエクを知る

さて、まずは、著者がどんな人かを調べてみました。1974年にノーベル経済学賞を受賞しています。ケインズ主義政策を一貫して批判している、という点に、おや?となりました。(実は、いまブルシットジョブも読んでいて、そちらでもケインズさんが批判されているんで。。。)

ハイエクHayek, Friedrich August von 1899.5.8~1992.3.23 
イギリス(オーストリア系)の経済学者

ウィーンに生まれる.一時公務につき [1921-26] ,のちオーストリア経済研究所所長となり [27-31] ,同時にウィーン大学でも講じた [29-31] .イギリスに渡り [31] ,のち帰化 [38] ,ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授 [32-49] ,シカゴ大学教授となる [50-] .ヨーロッパに戻り,フライブルク大学教授 [62-70] ,ザルツブルク大学客員教授 [70-77] .ノーベル経済学賞受賞 [74] .独自の貨幣的景気変動論をとなえ,20-30年代にかけて論争を巻き起こした.一貫してケインズ理論およびケインズ主義政策に辛辣な批判を加えるとともに,第二次大戦後は特に〈秩序のもとにおける自由〉を唱道する新自由主義の旗手として,その理念の包括的な理論的基礎づけに努め,精力的な著作・講演活動を続けた.サッチャーにも影響を与えたといわれる.

“ハイエク(Hayek, Friedrich August von)”, 岩波 世界人名大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-27)

「自由放任」と「新自由主義」は違うそうなのですが、何がどう違うのか、私はイマイチ良く分かっていないので、ここを頭の隅っこに置きつつ、読み進めていこうと思います。

貨幣的側面と実物的(生産構造上の)側面との両面から、相対価格体系の変動が景気の変動を発生させるとするハイエク理論は、この問題を捨象し主として集合量の変化に基づき、いわゆるマクロ的分析を行うケインズ派経済学とは、基本的・対照的に違っており、ハイエク‐ケインズ論争は有名である。ケインズ派の凋落(ちょうらく)とともに、改めてハイエク・ブームが始まったのも不思議ではない。かつて一度は「中立貨幣」を説いたハイエクが、1977年に「貨幣の非国有化論(国立中央銀行撤廃論)」を主張するに至ったのも当然かもしれない。だが、ハイエクは「自由放任論者」ではなく、自由社会や自由経済をよりよく発展させるために、政府は何をしなければならないかを、つねに新しい問題として解答していかなければならないという「新自由主義」を説く。

“ハイエク”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-27)

ケインズを知る

そして現代ではすっかり旗色が悪くなっている20世紀を代表するイギリスの経済学者ケインズは、いったいどんな理論を主張していたのでしょうか。

ケインズけいんずJohn Maynard Keynes[1883―1946] 
ケインズの経済学史上の寄与は、なによりもまず、『一般理論』において、不況と失業の原因を究明し、それを克服するための理論を提示した点にある。彼は、従来の経済学が想定していなかった不完全雇用下の均衡、すなわち、有効需要が不足している場合には、失業が存在したままでの経済均衡がありうることを論証し、自由放任にかわって、政府が積極的に経済に介入すべきことを主張した。

“ケインズ”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-27)

現在、私たちが良く知る社会の基礎的なしくみ(福祉国家)を考えた経済学者ってことですね。

以上の分析から、彼は、産出量を増加させて失業をなくすためには、公開市場政策などによって利子率を引き下げて民間投資を増加させること、政府が直接投資を推進すること、消費需要を増加させるために、遺産相続税と累進課税による所得平等化政策を実施することなどを主張した。このように、ケインズの経済学は、自由放任の経済にかわって、政府の経済への積極的介入を支持し、修正資本主義の理論的根拠を与えるとともに、租税による所得平等化政策と完全雇用政策は、福祉国家を指向するものでもあった。

“ケインズ”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-09-27)

ケインズがダメで、ハイエクが良いとか、そういうんじゃなくて、たぶん、時代の変化に伴って貨幣携帯や社会のしくみも変化が必要なだけなんだという気がします。

実際、ケインズのやり方で、ある程度まではうまく回ってたんですよね。それが、だんだんと回らなくなって、新しい方法を考えなきゃいけないんだけど、官僚主義とか、すでに構築されたしくみは簡単にぶっ壊せないし、強大な既得権益を持っている人は、そりゃ手放したくないだろうから、そこをどんなインセンティブを作って変えていくのか、それを考えなきゃいけない時代が来ちゃってる、ということかなぁ。

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