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意味がある②/④ 無知は財産

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やってみよう
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六本木アートカレッジのアーカイブ動画を見たので、感想と覚書を4回に分けてブログに書いておく。①では、全体の感想を書いた。②では(いまココ)一番印象に残った講義について書く。

2020年は「”役に立つ”から、”意味がある”へ」をテーマに全部で8本の講義があったのだけれど、最も私の心をつかんだのは「伝統産業の新たな価値」と題して行われた、堀木エリ子さんと山口周さんの対談だった。

対談テーマ「伝統産業の新たな価値」
堀木エリ子(堀木エリ子&アソシエイツ代表/和紙作家)
山口周(独立研究者/著作家/パブリックスピーカー)

山口周さんの本は読んだことがあったけれど、堀木さんについては、まったく予備知識がない状態だったから、よけいに、お話が素直に私の心に入ってきたのかもしれない。信念で不可能を可能にする力を持った人のように感じられた。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という哲学をかかげて、マザーハウスというブランドを立ち上げたデザイナーの山口絵理子さんという方を、私はとても尊敬しているのだけれど、堀木エリ子さんのお話を伺っている途中で、あれ、この感じ、誰かと似てるぞ?気になりだして、ハッと、この二人が同じタイプなのだと気づいた。(名前も同じだと後で気づいて、この偶然に驚いたのだけれど!)

いつか、このふたりの「えりこさん」で対談してほしいなぁ。活躍される舞台は違うけれど、おふたりとも、職人に惚れて、その人たちの技を未来につなぐために、デザイナーになっている。まったくのゼロからスタートして、信頼を得るまで、何年もかけて努力を積み重ね、やがてその努力が評価され、周囲を巻き込んでいく。

伝統技能や工芸は、日本だけでなく、世界でも存続が難しくなっていることが多い。すばらしい職人がいても、現在の経済システムのなかで取り残されてしまうからだ。この二人のえりこさんたちは、日本で、そして世界で、伝統産業の新たな価値を私たちに示してくれている。

モデレーターの山口周さんが、対談の途中で「イノベーションはよそ者とバカ者、若者が起こす」と 出口治明さん(ライフネット生命保険の創業者) がよく言っているが、と紹介すると、堀木さんが「私は三つ揃っていましたね」とにっこりされた場面も印象的だった。

堀木さんが、24歳で起業を考えたとき、周囲から、美大も出ていない、ビジネスの勉強もしていない、知識も経験もないのにできるわけがない、と全否定されたという。そのとき、彼女は、自分には本当に「ものづくり」ができないのだろうか。「ものづくり」には知識や経験や資格が必要なのかと自分自身に問いかけたらしい。

堀木さんは、考えた。縄文時代や弥生時代に作られた土器や埴輪、あの素晴らしい作品を作り出した人々は、なんの資格があったというのか。自然に対する畏敬の念、ほかの人の役立ちたいという気持ちを持っていただけじゃないだろうか。それが、ものづくりの原点ではないか。だとしたら、その気持ちがあれば、誰でも「ものづくり」はできる。必要な資格は、強い気持ち。だから、誰にでもできるはずだ。ただ、やろうとしないだけじゃないか。

そして、経営者にもデザイナーにもなるつもりはなかったという堀木さんは、1500年続く伝統的な和紙産業と最先端テクノロジーを結び付けて、新たな建築資材を生み出すというイノベーションを起こした。

頭の良い人は、頭の中で考えて、できないと思ったらやらない。でも、当時の私の財産は無知だったこと。どうしたらできるのかも分からなかったが、なぜ、できないのかも分からなかった。だから、とりあえずやってみたら、できた、ということがたくさんあった。そして、それが非常に大切なことだと気づいた。

年を取るにつれて、どんどん頭でっかちになって、やらないこと、できないことの言い訳を考えることが多くなった私は、堀木さんのこの言葉がチクっと刺さり、それでも、だってできないもん、と一方で言い訳をしている自分が情けない。それでも、情熱的に語る堀木さんの姿を見ているだけで、ずいぶん元気をもらえた。堀木さんの著書も読みたいし、彼女の美しく光がうつろう作品にもリアルに触れてみたいと思う。
ステキなお話を聴けて嬉しかったです。ありがとうございました。

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