読書感想

「1%の努力」ひろゆき(2020)玉石混交を見極める

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「1%の努力」ひろゆき  (著)ダイヤモンド社を読んだので備忘記録を残しておきます。

20代の頃、2ちゃんねるを覗いてみたことがあります。あまり良い評判を聞きませんでしたが、情報収集のためには有効だ、という説もあり、とりあえず見てみようと興味本位でした。

でも、映画に関する情報を集めていた私は、理不尽で下品な書き込みに辟易して、すぐにウンザリして読むのを止めてしまいました。

書き込みの内容は玉石混交なのでしょうが、私自身に石と玉を見分ける眼力があるとは思えなかったし、選別する作業にかける時間を確保する気にもなれなかったからです。

ひろゆきはストーリーテラーで、とても魅力的なお話を私たちに聞かせてくれるからこそ、その内容を鵜呑みにしてはいけないのだと感じます。

しかし「このようにあらねばならない」という社会的な同調圧力に息が詰まりそうになっている人にとって、著者自身の経験をもとづいたアドバイスは有効かもしれません。

この本はまさに、玉石混交なものを見極める力が求められる本です。

以下は、本文から気になったところの抜粋と個人的な感想です。

それ、本当ですか?

ネットにまつわる法整備が整っていないときに、僕は2ちゃんねるを創設した。全国各地でたくさんの裁判を起こされて、理不尽な敗訴をした。悪質な書き込みがあったときに、本当は書き込んだ人が悪いだけなのに、僕がそれを「悪意を持って放置した」という判断をされた。今は法律も変わったが、当時、サイトの管理人はそんな扱いをされた。最初の裁判の判決が出るときは、「負けたら大変なことが起きるんだろうな」と思っていた。しかし、何も起きなかった。敗訴判決が10件、20件、30件…100件と溜まっていっても、僕の生活は何も変わらなかった。マンションや土地、車などの資産を持ってしまうと、それが差し押さえられてしまう。けれど、そういうものには昔から興味がなかった。「ミニマリスト」という言葉が生まれたのは最近の話だが、守るべきものを手放していくと、人は自由になれる。そのひとつの例が、ホームレスであり、江戸時代の芸人、歌舞伎役者もそうだった。彼らはみな、権力の支配を受けなくて済む存在だった。僕は、そちら側の人間になったのだ。(445文字)

(価値があるように見せる)「1%の努力」ひろゆき  (著)ダイヤモンド社

権力の支配を受けなくて済む存在として、ホームレスと江戸時代の歌舞伎役者を例示し、自分も同じ位置に並べるという例示に違和感がある。17世紀中頃、歌舞伎の芝居小屋は幕府管轄化にあり、3-4つに限定された芝居小屋のみ興行が許可されていた。[1]この事実から考えると、歌舞伎役者が権力の支配を受けていないとは考えられない。ホームレスへの認識にも疑問。もしもホームレスが自ら自由のために、それを選択していると著者が考えているとしたら、現実を知らなさすぎるのでは。[2]このような反論も踏まえた上で、著者が事例として引用しているならば、その意図は何か。(263文字)

誰について行くかという問題

テキトーは言いすぎかもしれないが、優秀な経営層がきちんとした戦略を立てていれば、末端はマニュアルの指示通りにさえ動いていればいい。たとえば、マックスむらいさんがトップの会社が上場した。そこのCFOという財務の一番偉い人が3000万円ぐらいを横領していた。警察沙汰になったのだが、要するにCFOがクソ野郎だったわけだ。しかし、マックスむらいさんがユーチューブに懸けて、ユーチューブで仕事をして、動画を上げて、スタッフを増やして、商品を売って、上場して以降、いまでもきちんと経営は成り立っている。スタッフにクソ野郎がいても、上の人の判断が正しければ、どうにでもなる。しかし、物事の失敗は、判断する上の人たちの判断間違いのほうが原因としては大きい。トップがどんな考えを持って、どんなビジョンを描いているのか。それは一度、気にしておいたほうがいい。監視しておいたり、直接聞けるならそうするのも手だ。だって、自分ひとりが頑張っていても、上の判断ですべてがムダになることがあるのだから。(430文字)

(トップが下を殺しうる)「1%の努力」ひろゆき  (著)ダイヤモンド社

著者の言い分はもっともだ。戸部良一「失敗の本質」を読んだ時に、自分が所属する組織と上司が運命で決まってしまうのは悪夢だと思った。戦争だと逃げ場がない。現代社会で、自分が望む組織に所属できないとしても、自分に選択権が残されている自由は幸福だと気づく。ただ、ここでも、カラマーゾフの兄弟に登場した大審問官の物語が思い出される。表面上の自由が与えられれば、多くの人々は支配される側になることを容易に受け入れるだろう。(205文字)

ドット理論

アルバイトの話にも共通するが、人を相手にしている仕事は、最大のゲームである。人を動かすことほど、試行錯誤が試されるものはないかもしれない。スタンフォード大学の法学者・ローレンス・レッシグによると人間の行動を決める要因は次の4つだそうだ。
1.道徳
2.法律
3.市場
4.アーキテクチャー
たとえば、家族でお酒をやめさせたい人がいる場合に当てはめてみよう。一つ目は、お酒を飲むことへの罪悪感を植え付けること。これは、家庭環境などに影響する。こうしたモラルについては、本エピソードの後半で掘り下げる。二つ目は、お酒を飲んではいけないルールを作り、それを破ると厳しい罰を与えること。まわりの監視と協力が必要になる。三つ目は、お酒の価格を上昇させて、買えないようにすること。具体的には、お小遣いを減らせば、お酒を買うことをやめやすくなる。四つ目は、お酒の飲めないような仕組みを作ること。たとえば、移動手段を電車から自家用車に変えると、飲んで帰るようなことができなくなる。この4つのツールにあてはめてみれば、試行錯誤がしやすくなるだろう。(456文字)

(ヒマをヒマでなくす技術)「1%の努力」ひろゆき  (著)ダイヤモンド社

試行錯誤の4つのツールは日常生活に役立ちそうだ。ローレンス・レッシグの4つの行動要因の出典を知りたかったが、参考文献の一覧が載っていない。調べたところ1999年に出版されたLawrence Lessigの書籍「Code and Other Laws of Cyberspace」[3]にThe pathetic dot theory(Law, Norms, Market, Architecture)として紹介されていることが分かった。詳しくはnoteの書評[4]が参考になった。(法の制約は、法律や罰則による脅しとしての処罰として機能。規範は、社会やコミュニティの不文律、コミュニティが課すレッテルを通じて制約。市場は、モノの値段や経済原理を通じて制約。アーキテクチャは、我々を物理的に制約)出典が明らかになっていないとその情報を信じて良いのか不安になる。(279文字)

参考

[1]東京都立図書館 特設サイト>歌舞伎スペシャル>にぎわう芝居小屋
https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/portals/0/edo/tokyo_library/kabuki/page1-1.html

[2]「ホームレスの人って、なぜ実家に帰らないの?」-販売者に、大教大附属高校平野校舎の生徒からの素朴な疑問。ビッグイシューの出張講義レポート(ビッグイッシューオンライン 2019/10/03)https://bigissue-online.jp/archives/1075883659.html
「本当に自己責任?」ビッグイシュー販売者の体験談から早稲田大学の学生は何を受け止めたか(ビッグイッシューオンライン 2022/05/11 https://bigissue-online.jp/archives/1080248665.html

[3] Code and Other Laws of Cyberspace
https://en.wikipedia.org/wiki/Code_and_Other_Laws_of_Cyberspace

(邦訳)CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー 単行本 – 2001/3/27 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) https://amzn.to/3XVVULG[4]「CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー」書評_021 松川研究室M2 関口大樹 https://note.com/000lab/n/n0f143a7d8770

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figurine of human skeleton sitting infront of computer
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