読書会(勉強会)カウントダウンコラムZoom読書会

大岡昇平と中原中也

当記事には広告が含まれている場合があります
当記事には広告が含まれている場合があります
読書会(勉強会)
この記事は約6分で読めます。

褒められると疑心暗鬼になるもんざです。久々に会った英比二重国籍を持つ友人に、英語でうまく自分の気持ちが伝えられないこと、分かっているふりをしてしまって墓穴を掘ること、などの悩みを打ち明けたら、ちゃんと英語で話せているよ、と励まされました。そう言われても、ぜんぜん自分では納得できません。まぁ、母語の日本語すらちゃんと話せるかが怪しかったりしますからね。。。

英語は、ちょっとはマシになったかな?と思ったら、全然ダメだわって気づくことの繰り返しなんですよね。でも、調子に乗って勉強しなくなるよりはマシかな?

進捗報告

さて、今月みなさんと共有したいのは、こちらです。「俘虜記」(新潮文庫) 大岡 昇平  (著)

今回は、著者の交友関係がわかる面白い部分を共有しますね。

彼*の誇るバラードに対抗するために、私は中原中也の一つの詩を独訳し、現代日本の最大の詩人の作品であるといって、彼のところへ持って行った。(*注:ドイツ人俘虜のフリッツ氏を指す)それは「丘々は胸に手をあて退けり」に始まる「夕照」という「山羊の歌」の中の一篇であるが、中原の詩には珍しく口調がよかったので私の記憶に残り、ミンドロで駐屯中も夕方立哨中なぞ、夕焼した山々を眺めながら、勝手な節をつけて口ずさんだものである。(中略)これは敵の上陸を待ってぼんやり暮らしていた当時の私の気分にかなりぴったりした詩句であった。

「俘虜記」(新潮文庫) 大岡 昇平  (著) (7.季節)

なぜ中原中也なの?と思ったら、成城高校在学中に知り合いになったのだとか。
一緒に同人誌も作っていたそうです。
しかし大岡さん、ものすごく記憶力が良いですよね!

どんな内容の詩なのか気になって調べたら、ウェブサイトで詩の朗読も聴けました。
詩を鑑賞するって、抽象画を楽しむのとちょっと似てませんか。

夕照(せきしょう)

丘々は、胸に手を当て
退(しりぞ)けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。

原に草、
鄙唄(ひなうた)うたひ
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。

かゝる折しも我ありぬ
小児(しょうに)に踏まれし
貝の肉。

かゝるをりしも剛直(ごうちょく)の、
さあれゆかしきあきらめよ
腕拱(く)みながら歩み去る。

(「山羊の歌」中原中也)

「ホラホラ、これが僕の骨 中原中也ベスト詩集 夕照(せきしょう)」

青空文庫でも読めますよ。

今日も読んでくださってありがとうございます。
明日もどうぞよろしくお願いします。

参加者(2名)

  1. もんざ (主催者) 「俘虜記」(新潮文庫) 大岡 昇平  (著)
  2. にしやまさん「大学の常識は、世間の非常識」 (祥伝社新書) 塚崎公義  (著)

参考

俘虜記(ふりょき)大岡昇平の長編小説。1948年《文学界》に発表された短編《俘虜記》(合本《俘虜記》収録時に〈捉まるまで〉と改題)をはじめとして,51年まで各誌に分載。52年創元社より合本《俘虜記》として刊行。作者は,45年1月フィリピンのミンドロ島でアメリカ軍の攻撃を受け,病兵としてひとり山中に取り残され,意識を失って捕虜となり,約1年間収容所生活を送った。この合本《俘虜記》はその体験の記録である。兵士および俘虜としての自己の行動と意識について厳密な考察が加えられると同時に,俘虜たちの生態と人間性とが活写され,収容所の生活が占領下の日本の社会を暗示するように描き出されている。死に直面した作者がしだいに健康を回復していく過程も魅力的である。

“俘虜記”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-14)

大岡昇平おおおかしょうへい1909-88(明治42-昭和63)
作家,評論家。東京生れ。京大フランス文学科卒。成城高校在学中に小林秀雄,中原中也,河上徹太郎らと知り合った。戦前は会社員生活をしながら《文学界》などに批評を書き,またスタンダール研究に力を注ぐ。1944年一兵士として応召出征,45年1月フィリピン戦線でアメリカ軍の捕虜となった。48年この経験を書いた短編《俘虜記(ふりよき)》(合本《俘虜記》では《捉(つか)まるまで》と改題)で文壇に登場,次いで禁欲的な恋愛小説《武蔵野夫人》(1950),敗軍下の戦場での神と人肉食の問題を取りあげた《野火》(1951)を発表,戦後文学を代表する作家の一人となった。

“大岡昇平”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-14)より前半部分のみ抽出

フィリピン,ルソン島の南西に横たわる大きな島。面積9818km2はフィリピン群島中第7位。行政的には二つの州に分かれ,人口56万(1975)。島の中央部を北北西から南南東方向に急峻な脊梁山脈が走り,ハルコン山(2586m),バコ山(2489m)などの高い火山がそびえる。西海岸では雨が多く乾季と雨季の交替がみられるが,東海岸では明瞭な乾季がない。北東部に開ける沿岸平野にはタガログ地方からの,南西部の平野部にはビサヤ地方からの移住者が住みつき,内陸部はマンギャン族などが占拠する。南西岸のサン・ホセ町に1911年フィリピンで最初の分蜜糖工場が建てられた。島名はスペイン語で金鉱を意味するミナ・デ・オロに由来するといわれるが,現在ではそれらしき鉱山は見当たらない。

“ミンドロ[島]”, 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-14)

旧日本軍の兵営、艦船内に設けられた売店で、「軍隊内務令」の物品販売所がこれにあたる。士官、兵に時間を限定して、酒類、甘味品などの飲食物、手拭 (てぬぐい) 、歯ブラシ、ちり紙などの日用品を安価で販売した。酒や汁粉、うどんなどは酒保内でのみ飲食が許可され、新聞・雑誌の閲覧、囲碁・将棋などの娯楽設備もあった。なお、酒保とは中国語で酒屋の店員の意。アメリカ軍ではPX(post exchangeの略)、自衛隊では売店という。

“酒保”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-14)

共有予定の本

https://amzn.to/3PbwC6r

一等兵として太平洋戦争に従軍した著者の体験に基づく連作小説。フィリピン・ミンドロ島への米軍上陸から復員までの約一年間を描く。なぜ自分は米兵を殺さなかったかという感情を異常なほどに平静かつ精密に分析した「捉まるまで」と、俘虜収容所を戦後日本の縮図と見た文明批評の続編からなる。孤独という真空状態での人間のエゴティスムを明晰な文体で凝視し、戦争小説とは一線を画する。

<内容:アマゾン商品説明より>   「俘虜記」(新潮文庫) 大岡 昇平  (著)
大学の常識は、世間の非常識 (祥伝社新書)
変わらない大学への問題提起…。元大学教授の著者は言う。 “一国一城の主”である教授は自由で、天国のような職場だった。 しかし、大学の実態にはさまざまな違和感を拭えず、「大学の常識は、世間の非常識」だと感じ続けていた、と。 どうしたら日本の大...

変わらない大学への問題提起…。元大学教授の著者は言う。
“一国一城の主”である教授は自由で、天国のような職場だった。
しかし、大学の実態にはさまざまな違和感を拭えず、「大学の常識は、世間の非常識」だと感じ続けていた、と。
どうしたら日本の大学は良くなるのだろうか。
銀行員から大学教授に転身した著者だからこそ提起できた改革案を披露する。
いわく――文系の大学教授を研究者と教育者に分け、大学は企業人養成に専念すべき。
また、企業は3・4年次ではなく1年次に内定を出せばいい――。
巻末には、騒がしい教室が静かになる魔法の言葉など講義の工夫や人気講義を収録。
変わらなかった日本の大学が変わるきっかけとなるか。

<内容:アマゾン商品説明より>  「大学の常識は、世間の非常識」 (祥伝社新書) 塚崎公義  (著)
タイトルとURLをコピーしました