今月は、土地の所有者不明についての本を読んで勉強中です。死亡者に固定資産税を課税している、という実態部分についての調査が興味深い内容でした。
「人口減少時代の土地問題」 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書) 吉原祥子 (著)
なぜ発生する?
まだ死亡者課税に対して明確な定義はない、とのことですが、著者らは、自治体の課税台帳に載っている納税義務者が死亡しているケースを「死亡者課税」として調査を進めています。
人口約7万人のある市では、固定資産税の納税義務者3万9979人(2012年)に占める死亡者課税の比率は11%(4581人)、人口約1万4000人の別の町では、2012年度の農林地の納税義務者延べ9947人のうち6%(612人)が死亡者課税だった
(第2章 日本全土への拡大――全国888自治体への調査は何を語るか 1.死亡者課税による“回避”――災害とは無関係の現実) 「人口減少時代の土地問題」 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書) 吉原祥子 (著)
なぜ死亡者課税になるのでしょうか?市町村は、法務局からの登記情報を基に課税情報を更新します。ここがひとつの問題です。法務局と市町村の情報は個人情報で一本化されておらずデジタル共有もされていないから、法務局での登記情報が更新されない限り、市町村も情報の更新ができないんですよね。
市町村は死亡した人がいるという事実を知っていても、その人が所有していた土地家屋が誰に相続登記されたのか、という情報は法務局からの提供を待つのみ。
山林や農地は登記変更するコストと保有する利益を考えるとマイナスになるため、変更がされないことも多いらしいし、相続を放棄されてしまうことも。そんなわけで、著者らの調査によれば、全国で63%の自治体が問題を感じていることが明らかになっています。
ちなみに固定資産税は、市町村税収の約4割を占めています。この事実は厳しいですね。
地方再生の声はよく聞くのですが地方財政の土台がグラグラしている。。。
この本のもくじ
第1章 「誰の土地かわからない」――なぜいま土地問題なのか
1 空き家問題の根源――森林・農村から都市へ
2 なぜ管理を、権利を放置するのか
3 法の死角――あいまいな管轄、面倒な手続き
4 下落する土地の価値――少子・高齢化、相続の増加
第2章 日本全土への拡大――全国888自治体への調査は何を語るか
1 死亡者課税による“回避”――災害とは無関係の現実 ←今ここ
2 相続未登記、相続放棄の増加――土地に対する意識の変化
3 行政の解決断念――費用対効果が見込めない
第3章 なぜ「所有者不明化」が起きるのか
1 地籍調査、不動産登記制度の限界
2 強い所有権と「土地神話」の呪縛――人口増時代の“遺物”
3 先進諸外国から遅れた現実――仏、独、韓国、台湾との比較
第4章 解決の糸口はあるのか――人口減少時代の土地のあり方
1 相続時の拡大を防げるか――難しい法改正と義務化
2 土地希望者を探せるか――管理・権利の放置対策
3 「過少利用」の見直しを――新しい土地継承のあり方