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「現代経済学の直観的方法」資本主義が止まれない理由

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読書会(勉強会)
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8月ABD読書会の課題本は「現代経済学の直観的方法 」です。(ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)という読書形式について詳しく知りたい方はこちら)私は第1章「資本主義はなぜ止まれないのか」と第9章「資本主義経済の将来はどこへ向かうのか」を担当します。今回は、第1章について要約しますね。  

もくじ

「現代経済学の直観的方法」長沼伸一郎 (著) 講談社のもくじはこちら。全部で9章です。

第1章 資本主義はなぜ止まれないのか  ←いまここ
第2章 農業経済はなぜ敗退するのか 
第3章 インフレとデフレのメカニズム
第4章 貿易はなぜ拡大するのか 
第5章 ケインズ経済学とは何だったのか 
第6章 貨幣はなぜ増殖するのか 
第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか 
第8章 仮想通貨とブロックチェーン 
第9章 資本主義経済の将来はどこへ向かうのか

資本主義の中枢

発展途上国と呼ばれる国々ならまだしも、すでに経済的な発展をしている日本やアメリカのような国でも、毎年経済成長をし続けなければならないのは、資本主義の宿命なのですが、なぜそんなことになってしまうかというと、銀行に「金利」を払わなければならないからなのです。

昔は、あまったお金を設備投資に使うという健全な方法で企業は事業を拡大していたけれど、そんな悠長なことをしていたら、あっという間にライバルに追い抜かれてしまいます。

そこで銀行にお金を借り、設備投資を行い、事業を拡大し、銀行に利子を返済するというルーティンが行われ、自転車操業のようになる、というわけです。

伝統的に利子は悪という価値観だった

ところが金貸し業というのは伝統的に悪者の地位に置かれていて、そのために資本主義経済の暴走が発生しなかった部分もあったのに、そうした伝統はプロテスタンティズム(カルヴィニズム)の宗教的な力によって、徐々に風向きが変わってしまいました。

ルネッサンスの人文主義の中に見られ始めていた。それは金利がどうのというより、聖職者と軍事帰属の支配する農業社会で卑しまれていた商業の世界を、むしろ才覚次第で一攫千金の可能性のある世界であり、人間の可能性を拡げる絶好の舞台だと捉えた点で、新しい主張であった。(中略)カルヴィンの登場によってこれはより本格的なものとなる。やや誇張して言えば、その時はじめて金利というものを道徳的に正しいものとする本格的な文明が登場したのである

「現代経済学の直観的方法」長沼伸一郎 (著) 講談社  第1章 資本主義はなぜ止まれないのか

このあたりは、「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」(新潮選書)森本 あんり (著)にも詳しく書かれていたことを思い出しました。現代アメリカの現状を理解するためにも、カルヴィニズムの影響を理解しておくことは役に立ちます。

マクロ経済学のポイント

著者の長沼氏が強調していたのは、以下の公式が腹落ちできれば、多くの人が混乱してしまうというマクロ経済学のポイントを理解できたことになる、ということです。これが第1章のポイントでもありますね。

Y(国民所得)=C(消費)+I(投資)

「投資」と「貯蓄」が一致する、というのが感覚的に理解が難しいところ。でも、人々が銀行に「貯蓄」したお金が、銀行から企業の「投資資金」として貸し付けられている、と考えると分かりやすくなります。

書籍では、具体的で分かりやすい図で解説されていました。金貨100枚(国民所得)=金貨90枚(消費)+金貨10枚(投資(貯蓄))みたいなイメージで私も納得できました。

走り出したら止まれない

著者は、資本主義というシステムはとんでもない代物だけれども、「最も原始的な経済システムで壊れようがないからこそ生き残ってきた」のではないか、といいます。①今後も資本主義は発展する、②資本主義は自壊する、このふたつの意見は一般的で、特に②は最近よく聞かれるようになりました。

でも、そのどちらにもならないんじゃないの?という意見ですね。2008年のリーマン・ショックで金融システムが壊滅状態となったにも関わらず、また元通りになってしまっていることを例として書かれていましたね。

もともと資本主義というものが本質的にカンフル剤の連続的な投与によってのみ維持されるようなとんでもないメカニズムであるということ、そして貯蓄という行為が経済社会に貧血か超高血圧かの二者択一を強いる、これまたとんでもない代物である

「現代経済学の直観的方法」長沼伸一郎 (著) 講談社  第1章 資本主義はなぜ止まれないのか

結局のところ、資本主義の行きつくところはどこなのか?それは第9章で説明しますよ、というオチでした。

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