4月ABD読書会の課題本「科学者たちが語る食欲 」を読みました。(ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)という読書形式について詳しく知りたい方はこちら)
読書会当日までに担当するパートを読み、当日参加者同士で各パートの内容をシェアすることで本1冊の内容を短時間で学び、それを元に話をすることで、学びを深めます。
「科学者たちが語る食欲」デイヴィッド・ローベンハイマー (著), スティーヴン・J・シンプソン (著), 櫻井 祐子 (翻訳) サンマーク出版
私は第5章「例外――人間は「動物」と違う生物か?」を担当したので、そこだけですが、内容を共有しますね。
原書のタイトルが分かりやすい
日本語訳のタイトルからは少し内容が分かりにくい気がします。原書の「Eat like the animals」(動物たちのように食べよう)だと、著者たちの主張そのものズバリです。
野生の動物や、昆虫は、自分たちに必要な栄養素を本能的に理解しており、最適なバランスを保って食事をしていることを科学者たちは観察と実験によって突き止めます。
人間も動物の一種類なのに、なぜ人間は「食欲」が暴走し、信じられないほどの肥満になってしまうのでしょうか。この本を読めば、私たちも動物たちのように、本当に自分の身体に必要な栄養素を正しく見極めて食べることができるようになります。
5章 例外――人間は「動物」と違う生物か?
第5章は、ある問いから始まります。著者たちは、実験室で飼育したバッタたちが、計算なしで「ベスト・バランス」の餌を選ぶこと(栄養のバランシングをする)を確かめました。でも、それって実験室のバッタだったからなんじゃないの?ほかの昆虫や動物は、違うかも?って考えたんですね。
とりあえず、「栄養のバランシングは全生物に必須の一般法則」じゃないかな、という仮説を立てて実験や観察を進めていきます。
仮説の根拠はダーウィン
なぜ、著者たちが、この仮説を正しいと考えたのかというと、栄養のバランシングをする動物は、健康になり、繁殖に有利だから、繁殖に有利な特性は遺伝的になるんじゃないか、つまりダーウィンの進化論に合致するだろうってことみたい。(結論として、著者たちが立てたこの仮説は正しかったようです)
ビーグル号航海の経験はダーウィンの脳裏から離れず、帰国後も種の起原や変化について考え続けた。その結果、生物は多産であり、過剰繁殖を行うために生存競争がおこる。環境に適した有利な変異は保存され、不利な変異をおこした生物は絶滅すると考えた。この過程が自然選択であって、その結果として適者生存になる。これがダーウィンの進化論である。
“ダーウィン(Charles Robert Darwin)”, 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-04-27)
ゴキブリ、クモはOK
バッタ以外のものとして、野生のゴキブリ、クモ3種類、ペットの犬と猫についても調査を行った結果が紹介されています。
ゴキブリは完璧に栄養バランシングをする
捕食動物であるクモ(3種類)も同じく栄養バランシングをする
ペットのネコ、イヌは微妙
昆虫たちは、基本的に完璧な栄養バランシングをして、太り過ぎるということはありませんでした。そしてペットのネコやイヌを調べたとき、少し異なる結果があらわれました。ネコは、一般的な捕食動物と同じくタンパク質の総エネルギー比率が52%の餌を好みました。しかしイヌは、25~35%と人間に近い雑食性を示したんですね。
ネコは人間に飼われるようになっても、家ネズミなどの害獣駆除の役割を期待されて、餌を与えられなかったけれど、イヌは狩猟よりも、番犬の役割を求められ、人間の残飯を食べるようになり、雑食化してしまい、そのために食べ過ぎてしまう傾向が見られたのです。
十分な餌がない場合
自然界においては、いつも十分な栄養がとれない可能性が高いですよね。そうした場合に、バッタたちはどのような戦略をとるのか?(これが、人間の食欲が暴走し肥満に繋がってしまうという秘密を解くカギに繋がる部分です)
バッタは、何よりもタンパク質の摂取を最優先するのです。タンパク質の摂取目標を達成するまで、発達遅延だろうが肥満だろうが、おかまいなしに食べ続けます。
さて、では人間は必要な栄養摂取バランスが崩れたら、何を優先するのでしょうか?そうです!タンパク質なんです。多すぎもせず、少なすぎもしない、最適な量のタンパク質を摂取することが、「動物たちのように食べる」ことにつながります。
年齢や性別によって必要量は変化するんですけど、そのあたりも詳しく書かれていました。この本を読めば、健康になるための食事で意識すべきことは摂取カロリーではなく、栄養バランスにあることが非常によく理解できるでしょう。