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「貨幣発行自由化論」第11章 競争通貨の価値コントロール

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今回は、ハイエクの「貨幣発行自由化論」の第11章「競争通貨の価値はコントロールできるか」から、気になったところのメモと学習ノートを残しておきます。

「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

この章では、発券銀行に、発行通貨の供給量をコントロールする能力があるかどうか、という問題が取扱われています。結論は、ポイントを押さえて運営すればできるよ、ってことみたい。

二つの方法

発券銀行が発行通貨の供給量をコントロールする方法は以下のふたつ。

①発行通貨を通貨取引所で売る(または買う)
②発行通貨の貸出を拡大(または縮小)

ハイエクによれば、供給量をすぐに減らすには、短期契約に限定しておいた貸出を一時停止にするだけ。①の方法は、即効性があるけれど、持続的な効果があるのは②だけ。

銀行は、貸出方針を日々決定しなければなりません。その場合に、通貨価値を安定化させるため、コンピュータを使って、商品価格や交換比率に関する最新情報を入力することで、具体的な方針を考えます。もしも、自社発行通貨における商品バスケットの数値が基準値から離れたら、①または②を行うというわけです。

保有需要

銀行の貸出が短期中心だったら、発行通貨のだぶつきはすぐに調整できるけど、銀行は、通貨の発行にはよくよく慎重になる必要がある、とハイエクは何度も警告します。

大切なのは、その通貨を借りたいと思う人がたくさんいることじゃなくて、その通貨を持っていたい、という保有需要が高いこと。そのためには、発行通貨の価値を安定させることが最も重要です。

他の発券銀行が低金利で貸出し、利益と供給量を一時的に増やそうとして競争をふっかけてくるかもしれないけれど、間違っても、それに乗っかっちゃダメ。そういう発行通貨はあっという間に価値が下落するから。

政府の失敗をくりかえさない

またまた繰り返し政府による独占発行批判も出てきます。もしも、民間通貨において、自社発行通貨に寄生するような通貨が発生したら、どうするの?という仮説を立てた場合、寄生的通貨は容認せざるを得なくなるだろうけど、絶対にその流通を助けちゃダメだ、それをやっちゃうと、政府の二の舞になっちゃう、という理由で。

政府はこの罠にはまり、貨幣の独占発行権はきわめて望ましくないやり方で骨抜きにされた(政府は低利の資金を求める絶え間ない圧力に屈し、銀行の急増に応えるべく資金を供給し、流動性を確保して銀行を支援した。その結果、貨幣の総量を誰も制御できなくなった。そう考えれば、政府と銀行は本位貨幣の供給量のコントロールについてともに責任がある)。

第11章「競争通貨の価値はコントロールできるか」「貨幣発行自由化論  改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析 」
フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) (著), 村井 章子 (翻訳)

大切なことは、寄生的な通貨を抑制する能力を失わないこと。寄生的な通貨は容認するけど、それを用意している銀行を助けるためという理由で、絶対に追加で通貨発行をしないということ。

ここでハイエクが指摘している政府の失敗については第16章「フリーバンキング」で詳しく内容を知ることができます。

日本は?

日本銀行は、寄生的な通貨について、どんな対策を行っているのか気になるところですが、ここは、私の今後の情報収集の課題にします。(こちらのサイトは勉強になりそう)名称については日本銀行法で、法的に保護されていますね。

(名称の使用制限)第十三条 日本銀行でない者は、日本銀行という名称を用いてはならない。

日本銀行法

菅さんが「地銀って多すぎじゃない?」って言ったことがきっかけで、長年の懸案だった、地方銀行のオーバーバンキング問題も動き出しているみたい。一見すると、自由競争が働いているようで、実はその機能が十分ではなく、国(中央銀行)と地方(地方銀行)のもたれ合いでズルズルと状況を悪化させてきたって感じですよね。

地銀はコロナ禍で、地方の中小企業へのセーフティネットになったという評価もありますが、何もかも国がやる、っていう体制から移行しなきゃいけない時期にきてるのかも。

 地銀再生の動きは過去から続いていますが、自発的に改革に取り組む地銀が少なかった。高度経済成長期のビジネスモデルから脱却できなかったからです。

 かつては国が金利水準を保っていたおかげで、地銀は国債買いによる「イールド・ハンティング(利回り追求)」で容易に利ざやを得ることができました。そのため地銀は大胆な経営改革に踏み出さず、新規事業を興す人材も育ててこなかったのです。変化に鈍感な地銀の尻をたたくべく、国は10年も前から改革を促してきました。その過程で「優等生」と呼ばれたスルガ銀行の不正融資問題が発覚するなど、改革は迷走しました。

菅首相がメス、“限界地銀”はなぜ放置されてきたのか(日経ビジネスオンライン 2020/9/29)

苛烈な金利競争、有望な貸出先も“奪い合い” 多すぎる「地銀」に再編機運(SankeiBiz 2020/10/19)

「地銀、10年後に半減」中小の事業承継にも利点か/野崎浩成・東洋大教授に聞く(日経BizGate 2020/9/30)

ハイエクのおかげで、ちょっと視野が広がっています。やはり、読むべきとお勧めされる古典は奥が深いなぁ。

次章では、もしも複数の通貨が発行されることになったら、みんなはどんなものを選ぶだろう?という点について、ハイエクが予測しています。結論は、長期的な視点で考えたら、品物を買うのと変らないよ、ってことみたい。

貨幣発行自由化論 改訂版――競争通貨の理論と実行に関する分析
以下は、齊藤誠・名古屋大学教授の解説から――。 「こうして書いてくると、勘の...


貨幣発行自由化論  改訂版ーー競争通貨の理論と実行に関する分析 [ フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek) ]

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