マスク必須、と言われれば、素直に従い、フェイスシールドが必要と言われれば、そうですか、と用意する。そういう自分と対局にいるような人たちの、マスク着用反対デモの記事を読んで、考えさせられました。
各国でマスク反対デモ
2020年8月、いくつかの国で、国がマスク着用を義務づけることに反対するデモがありました。アメリカ、ドイツ、カナダ、スペイン、アイルランドなどです。
「マスクをしない自由」を求める米国人から考えさせられること 上野 泰也（みずほ証券チーフＭエコノミスト）日経ビジネスオンライン 2020年8月25日
8月1日 ドイツ（ベルリン）でデモ 1万7千人
8月9日 カナダ（モントリオール）でデモ
8月16日 スペイン（マドリード）Coronavirus: Hundreds gather in Madrid for anti-mask protest
8月23日 アイルランド（タブリン）
上野氏の記事にもありますが、日本でも小規模ながらデモがあったようです。
個人の自由と義務と権利
国家が全てを監視して個人の権利を侵害してくるのは、もちろんお断りです。
でも、単に自分が好きなようにしたいだけ、という利己的な欲望が「自由主義」の名のもとに許されてしまうのも何だか違和感があります。
他者や弱者への配慮に欠けた行動であっても、個人の自由だからと容認されてしまうのでしょうか。
すべての人が平等に安全で健康な生活を送る権利を持っているはずです。自分の自由と安全が保障されているように、他者も同様な権利を持っており、それを尊重する義務があるのでは。
例えば政治家の汚職や不正選挙などで、自分たちの生存権が脅かされていて、それに抗議し、絶対に許さないという意志表明のためにデモをするなら、まだ分かります。でも、マスク着用に反対するためにデモって、本当にそれしか抗議する方法はないのかな、と思ってしまう自分がいます。
国家と国民の信頼関係の問題なのか、単に文化と宗教の違いなのでしょうか。逆に、日本人（私）がすっかり牙を抜かれていて、国家という権威を盲信しているだけなのかもしれません。
バージョンアップするのだ
モヤモヤするなぁ、と思っていた時に見つけて、論理的で建設的な考え方に共感したのがこちらの記事でした。
私はこう考える『危機の中だからこそ 民主主義の強化を』 宇野重規（東京大学社会科学研究所教授）NHK特設サイト 新型コロナウイルス 専門家・著名人～私はこう考える～
この記事で、宇野さんは以下の3つを提言されています。こういう建設的な議論を、政治家や官僚が実行してくれるような働きかけが必要です。
- ・危機管理システムは見直して強化
- ・危機下では政治システムが肥大化する→どの範囲で、いつまで拡大した権利を容認するのか
- ・民主主義が時代遅れなのではない←バージョンUPしてクオリティをあげれば良い
象徴的なのは、中国や日本で以下のような事態が起こり、欧米諸国ではデモになるということですね。国民自身が「個人の自由を束縛する政治権力の拡大を望む」というのは、かなり怖いことでしょう。いったん、それを政治権力に許しちゃったら、時代を逆行する政策が現れる可能性が出てきそう。
この場合に難しいのは、安全と自由を巡るトレードオフ（相反）がみられる点だ。実際、個人のプライバシーを制約してでも、より有効な個人情報の管理とセキュリティー対策を求める声が、国民の側からもしばしば聞かれる。ある意味で個人の自由や権利を束縛する政治権力の拡大を、むしろ国民自身が望むという事態が生じているのである。
私はこう考える『危機の中だからこそ 民主主義の強化を』 宇野重規（東京大学社会科学研究所教授）NHK特設サイト 新型コロナウイルス 専門家・著名人～私はこう考える～
結局のところ、政府、民間企業、市民（専門家）の全てが相互に行き過ぎや暴走チェックできる体制とバランスを作る必要があって、それなしでは、理想的な民主主義国家にはならない、ってことです。
その際、テクノロジーを用いて個人の行動を管理しようとする政府や民間企業の動きに対し、市民社会の側からチェックしていくことが急務だ。多くの市民にとってテクノロジーの内容を正確に把握することは難しいだろう。その暴走により個人の権利が侵害され、民主主義がゆがめられることのないよう、専門家による独自の監視組織の充実も一層重要になってくる。
私はこう考える『危機の中だからこそ 民主主義の強化を』 宇野重規（東京大学社会科学研究所教授）NHK特設サイト 新型コロナウイルス 専門家・著名人～私はこう考える～