2020年にZOOM読書会で私が紹介した本は12冊。4回に分けて整理します。今回は7月から9月分です。
7月 善の研究
NHK 100分 de 名著 西田幾多郎『善の研究』 2019年 10月 [雑誌] (NHKテキスト)講師:若松英輔 NHK出版 日本放送協会 (編集)
第108回の読書会では、哲学者である西田幾多郎の本を共有しました。なんとか読み終えましたが、NHK100分de名著の解説がなければ、無理だったでしょう。若松さんのおかげで読み通せました。
本当に優れた教師は、天才が難解な論理で説明したことを、普通の人が理解できるように言い換えることができる
「読書の技法」佐藤優(著)
1.なぜ、その本を選んだのですか
2019年、エーリッヒ・フロムのThe Art of Loving(愛するということ)を読んで、彼が仏教の研究と禅にも取り組み、鈴木大拙と共同でゼミナールを開いていたことを知りました。
鈴木大拙について調べていたら、西田幾多郎が鈴木の友人であり、思想が近いことを知り、kindle本をチェックしたら無料だったのでダウロードし、また100分で名著にも解説があったので。。。という流れです。
2.その本から何を得ましたか
「善の研究」そのものよりも、若松さんの解説のほうが心に響きました。「美しいものにふれることと、大いなるものを信じることは同質」「世界がどう存在しているのかという認識と、人はどう生きるのかという人生観が交わったところに哲学の始まりがある」「深く読むためにどんな文章でもよいから書いてみよう」
3.その本のキーワードを3つ教えてください
★自己実現→フロー
★論究→自分の問題を論じる(書く)
★永遠の真生命(?)→愛する人の死(耐えがたい悲痛)を乗り越えるための西田の思考
若松さんによる以下の用語解説がとても理解の助けになりました。
実在:純粋経験を通じてのみ経験される=日常の直感的な経験をありのままに感じる
純粋経験:知的直観、知的直覚。じかに観ること
認識:個々の人間が、それまでの経験を踏み台にして、心身の両面で理解を深めること
8月 大衆の反逆
「大衆の反逆」ホセ・オルテガ・イ・ガセット (著), 桑名一博 (翻訳)
第106回の読書会では、オルテガの「大衆の反逆」を共有しました。非常に面白く、現在の世界的な社会状況を考えるうえでも、有用な視点を与えてくれる一冊でした。
1.なぜ、その本を選んだのですか
作家の佐藤優さんが紹介されており、興味を持ちました。
2.その本から何を得ましたか
リベラルアーツ(一般教養)や専門知識を持ちつつも、謙虚に自己を顧みる姿勢の重要さ。歴史や科学的な事実をないがしろにしないこと他者の意見に謙虚に耳を傾け、批判的に考え行動すること常に自己批判ができること
3.その本のキーワードを3つ教えてください
★リベラル=自分とは異なる他者と共存しようとする冷静さ(寛容さ)
★大衆=傲慢な精神の象徴(そのときを生きている人間のことしか考えない)
★貴族=(ブルジョアのことではない)自分と異なる他者に対して、イデオロギーを振りかざして闘うのではなく、対話し、共存しようとする我慢強さや寛容さを身につけている人
オルテガの言葉の定義が現代人とは異なっている点に注意が必要です。
9月 反知性主義
「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」森本 あんり (著) 新潮選書
第107回の読書会では、アメリカという国を理解するための手助けとなるような本を共有しました。
1.なぜ、その本を選んだのですか
英文ニュースを読む会に参加し、ニューヨークタイムズのBLMに関する記事を精読したとき、講師の飯田先生がアメリカ文化とキリスト教の役割を理解するテキストとして推薦され、興味を持った。
2.その本から何を得ましたか
・現代の事象を読み解くために歴史的な事実を学ぶことが重要
・因果関係と相関関係をごっちゃにしちゃいけない
・キリスト教も仏教も、伝播して土着化し、変化していったという事実
3.その本のキーワードを3つ教えてください
★土着化(ヨーロッパのキリスト教から変化した)
★道徳主義(政治が極端な道徳主義になる)
★霊的な保険(信仰が現世での富と成功を約束)